11.どうやってタイトルを考える?

 考えるも何も、僕自身ただの一度も良いタイトルを付けられたことがありません。特に長編ではまともなタイトルを用意できたことがないのです。


 カクヨムで最初に掲載したのが『竜斬のことわり』。

 当初のプロットでは「序盤はまるで竜退治をするような文章運び、でも所々に違和感を与えるような書き方をして、中盤以降でチームの目的が竜退治ではなく竜の手術だということをいうことをバラす」という筋立てでした。なので「竜を斬る理由とは?」と端的に問うこのタイトルで問題なかったのですが、紆余曲折を経て「竜の手術を行うことを前面に押し出す」内容へと変更しました。

 さて困ったのがタイトルです。序盤から竜を斬る理由が明確なので理も何もとなってしまいました。いくつか考えてはみたものの、『竜斬の理』以上のタイトルを思いつくことができず、結局そのまま採用となりました。なのでタイトルと内容に明らかに開きがあって、これは良いタイトルではありません。第一、「ことわり」が読みにくいし。


 次が『銃拳使じゅうけんつかいと自動人形オートマター

 これは「剣と魔法のありふれたファンタジー世界だが、神によって一切の刃物が切れなくなった世界」で「斬り殺された死体が見つかる」というもの。ハイファンタジーにミステリを掛け合わせた意欲作でした。

 ですが、これではタイトルだけ見たときにミステリと気付いてもらえません。かといってファンタジーかどうかも微妙。そして拳銃ではなくなのですが、たいていの人は目がすべって拳銃と読んでしまうので入れ替えていることにあまり意味がない。さらには自動人形も読者には何を指しているのか分かりにくく、結局これは何の話? となってしまうという……。これでは読者を惹き付けることはできませんよね。


 三作目は『妖魅夜暁ようみやぎょう -よい貫穿かんせんあけ爀産かくさん-』。

 二〇二一年の神戸を舞台に、妖魅と呼ばれる化け物達が活躍する怪奇アクションもの。これは、かつてKADOKAWAから出版されていた妖魔夜行シリーズの僕なりのオマージュで、タイトルは韻を踏んだつもりでした。そしてサブタイトルの漢字は感染と拡散のダブルミーニングです。

 でも残念ながら上滑りでした。ただただ読みにくいだけで、しかもこれでは妖怪ものであることさえ分からないし、情報として読者に何も伝わらない。意気込んで付けたわりには全くの落第点でした。


 そもそもが短い文章でズバッと表現できるだけの才覚があるのなら、一〇万文字を越える長編なんて書くわけないじゃないですか。まったくもう。

 長編を書き始めるときは、誰か僕のかわりにドンピシャのタイトルをつけてくれる人が横にいればいいのになあといつも思います。




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