三日目の午前 クラスの人気者は俺の許嫁として親に決められていた。

「責任...取ってくださいね?」



「...は?」

 いきなりなんの責任を取れと言われても俺にはわからない。

 なに?俺、死ぬの?どうなるの?


「いやぁやっぱ責任っていったらあれですよ...ね?」


 ゴメンカナリナニイッテイルノカワカラナイ。

「あ、それと今の発言に対して責任がどうこうとか深く考えなくても大丈夫ですよ」


 さっきの言葉に対して楽観的考えを持つ人が居てたまるか。

 とりあえず俺の身は大丈夫なようだ。

 心はとうにノックアウトされていることには目を瞑るとして。


「そりゃあ、許嫁なのは確定ですから」


 そう高らかに宣言されたのと同時に、この小さげ部屋に2つの勢力が誕生した。

 一つは華やかで明るいポジティブな勢力。もう一方は様々な感情が入れ混じって形容し難いそれと化した勢力。


 勝敗は戦う前から決していたのは明らかだった。

 そして舞鶴を家にあげた理由を完全に思い出した俺は、珍しく大胆な行動(当社比)にでようと俺は口を開く。

「わ・・・忘れていた!子どものこ「唐突なボケって場を凍らせますのでやめたほうがいいですよ」


 返す言葉すらない。


 ところで目には目を歯には歯をという報復律を知っているか。

 ツッコんでるだけではもうこれ以上進まないと思った俺はこの報復律という先代の知恵からボケにはボケをつっこめばいいじゃないと思ったわけである。

 なんでこんな思考になったのかは分からない。一度でかい病院に行かないといけなくなっているくらいにはズタボロかもしれない。

 この考えにたどり着いた自分を恥じたい。というか軽く死にたい。


「まぁそんな事はいいわけで、さっさと本題である許嫁のことについて話しましょうか。ささ、どうぞこちらへ。」

「お、おう」


 やはり俺には主導権もないようだ。俺は青春ラブコメどころか部屋番号すら間違っている可能性すらある。というかこれがラブコメだとしたらこの状況にはラの字も見えてこない。いや、許嫁(仮)という要素はラブコメ的要素として補完できるのか?まず許嫁云々も怪しいし。閑話休題。



「で、何故接点もなかったはずのお前がなぜ俺の許嫁に?」

「話は簡単です。詳しくはWeb...もといこちらで。」


 そう言って差し出してきたのはスマートフォンだった。しかも電話帳の画面には『お義父様』と律儀に書かれている。普通は一度も会話したことのない人の携帯に親の連絡先が入っていることに驚いたほうがいいのだろうが、見事に不法侵入されていた身としてはこれは気にしたら負けのレベルである。


 トゥルルルルルと表現するのが正しいだろうか。

電話特有の発信音を聞いていると、しばらくしてから声が聞こえた。


「おそらく電話してきたのは朱兎だろ?言いたいことは父である私がわかっている。許嫁の件だろ?簡単さ。元々私の母と舞鶴さんの母...お前らでいう祖母同士が仲良くてな、それで同じ年だし学校も同じでちょうど男女なんだから孫同士を結婚させようってなった。ちなみに白華ちゃんはこのことを知っている。ただお前には言うの忘れていただけだ。すまん!まぁあとはよろしくというのとお幸せに。正月は帰ってこなくていいから来年の夏には帰ってこい。以上。切るぞー」



 俺に話す隙も作らせてくれず電話は切られてしまった。

 あいも変わらず俺の父は放任主義だった。まぁそんな事だってとっくの昔から知っていることだし、善悪くらいはちゃんと教えてくれた。良いのか悪いのかわからない。

 

 てか許嫁って...まじかよ。本当に、こいつが...許嫁!?


「つまり、そういうことだよな...?」

「はい、そういうことです!」

 俺と許嫁となった目の前の彼女におそるおそる質問すると、無駄に元気に返答される。

 つまり、俺はこいつ、目の前のこいつと――――。

「朱兎くん」

 ちょっと考えごとしていると、舞鶴が俺を呼んできた。

 そして満点の笑顔で、その少女は口を開く。

「これからもよろしくおねがいしますね??」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る