第30話 何ものでもない者の戯言

 今の僕はどのあたりを歩いているのだろうか?


 昔描いた地図なんて……覚えてなどいないけどね。


 宝の在り処も……それがなんなのかも……


 結局、わからなかった……



 誰かに教わりたくて……


 誰かに手を引かれたくて……


 ただ、無言で手を伸ばした……



 そんな言葉むごんは伝わることはなくて……


 苦しそうに、悲しそうに……どんなに哀れに演じたところで……


 それは、誰かの同情をかうには……


 年月を得たその身体ぼくは……


 ただ、惨めな姿を晒す……



 誰かのこぼした言葉せかいに依存するように……


 誰かの仕組んだ罠にただ……勝手に囚われて……


 そして……僕はただ……悲劇のピエロを演じ……


 狂ったように泣言ざれごとを繰り返す……



 意味など無い……


 救いなど無い……



 小さいころ埋めた希望タイムカプセルを掘り起こしても……


 それが何処に埋めたのか……


 何が書いてあるのか……


 そもそも……本当に埋めていたのかさえも……



 誰かの描いた世界で生きることが正解だと思っていた……


 それが嘘だとわかって……


 必死に……幼い頃の場所きおくを掘り起こして……



 救われるのか……?


 その掘り起こされた戯言は……本当に……救ってくれるのか?



 今の自分を落として……


 過去にすがって……


 てめぇを正当化しているだけじゃないのか……



 その御伽噺おとぎばなしは……どんな結末を迎えるのだろう。


 せめて、その役割を果たせるだけの楽しい戯言になるのだろうか……


 だれかの言葉を捜して……


 見つけたくて……見つけられたくて……


 なのに光が怖くて……暗闇に照らされて……


 そんな暗闇に咲いている花にさえ僕は気づけない……



 結局……てめぇは何も見えていない……


 そう、てめぇの戯言などその程度……



 期待するな……


 所詮、暗闇を進む勇気も引き返す決断もてめぇにはできやしない……


 後は、てめぇの大好きな戯言で誤魔化して生きてみろ。

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