第31話 花火を打ち上げられない奴の戯言

 誰もがおまえみたいに生きられると思うなよ……


 そんな得意な戯言いいわけだけで……今日も僕は食い扶持を繋いでいる。


 僕はお前に慣れない……

 そんなお前は僕を理解できない……


 努力が足りない……学習が足りない……行動力が足りていない……

 知っているよ……それでも、僕はお前のような生き方ができない……


 そんな僕を君が理解できないように……

 僕は君の行き方を真似りかいできない……


 僕は君になりたくて……真似できなくて……

 僕は君を真似たくなくて……理解できずにいて……


 僕は君の呼吸の仕方を真似して……いつも息苦しるしさを覚えていた。


 そんな……誰にもわからない……誰にも見えない……

 僕にだけ見える世界で……


 武器を無くした兵隊が懸命に鉄の塊を繋ぎ合わせる……


 はねを無くした天使が青空に梯子をかけている……


 懸命なぼくの顔を横目に……呟く。



 鉄はただ繋ぎ合わせてもただの鉄屑がらくた……

 いくら、梯子を天に掛けようと……それは適わぬ行動ねがい……


 知っている……知っているんだ……


 それでも……そうしないと……僕は呼吸ができないから……


 それでも、僕は呼吸するように努力むだを繰り返す……


 きみにも成れないのに……それが僕の生き方なのだと……


 涙の流し方も忘れた顔で覚えた作顔えがおで呼吸する……


 

 お前に成りたくない……お前のように生きたいと……


 矛盾だけをただ受け入れる……



 この世界で輝くだれかは、夜空に花火を打ち上げて……


 僕は離れた場所でそれを見上げている……



 そんな君の呼吸の音がきれいに木霊して……


 そんな僕の足音はそれをただ邪魔をして……



 壊れたいのに……活きたくて……

 死が怖いのに……人生を終えたくて……


 戦い方の知らない兵隊も……

 空の行き方を知らない天使も……


 ただ、努力むだを繰り返す……

 ただ、時間いのちを無駄にする……

 その貴重さも理解できずに……



 自惚れるなよ……

 そんな兵隊天使ぼくより……ずっとずっと不幸な者はたくさんいるんだ……


 安堵するなよ……

 そんな幸福てめぇより……ずっとずっと幸せな奴は糞ほどいる……


 お前は底辺でもなければ頂点でも無い……もっとも哀れな奴なんだよ。


 僕は今日も呼吸する……ただ街の空気を汚すように……


 貴重な酸素を吸い込み……汚れきった二酸化炭素を吐き出す……

 ただ、僕は繰り返す……


 そして、今日も夜空に打ちあがる誰かの花火を遠くから眺め……



 成れない自分きみの姿を祝福する……


 そんな呼吸ざれごとは……誰にも届かなくて……



 ただ……笑う君が羨ましくて……笑う僕が許せなくて……



 そして、僕は今日も何処かで打ちあがる花火を探している……


 僕には打ち上げることが適わない花火を……


 ただ……遠くで……


 天を仰ぐように……涙を隠しながら……


 ただ……探している……



 その理由はきみも理解できない……


 だから僕は一生……救われない……


 だから、せめて戯言これで満足していろ……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る