第22話 矛盾した者の戯言

 生きたくないとは言うくせに……


 死にたいなんて言わない……



 同義語なのに……まるでそれは対義語のようで……



 一つは簡単に口にするのに……一つは安易に口にしない……



 なぜ?


 なんでだろうね……。



 僕みたいな奴が言う……【生きたい】と【死にたくない】はどうにも重みが違う。


 生にも死にも臆病な人間には……その言葉一つ一つに……違った意味を持っているんだ。



 良いことなんて滅多にない……何百年に一度……何千年に一度……

 

 僕は丁度、その時を生きているのだろうか……無論、得られない人間の一人だ。



 何が幸せで何が不幸なのか……



 人が使う言葉なんてものは曖昧だ……



 言葉の選び方一つで人は幸福にも不幸にもなれる……



 なぜ……僕は不幸で在り続けたいのか?


 結局……たぶん、他からはそう写っているんだよ。



 例えば、光は正義で闇は悪……僕はその言葉を聞いてそう連想する。


 だが、それは互いの存在があって初めてその価値を表明する。



 光が在るところに初めてやみは存在する。


 暗闇があって始めてひかりは存在する。



 正しいという概念も誤りがあって成立する。


 だから……生もあって死も存在する。



 僕には描ききれない……


 僕には語りきれない……



 僕には僕を表現できなくて……


 僕は僕自身の声を消せなくて……



 だから……僕は間違っている。


 だったら、正しい僕はどれだ?何処にある?



 


 子供時見た夢の続きが見たくて……


 一度は諦めたはずなのに……



 僕とか君とか、生とか死とか……夢とか願いとか……不幸とか悪夢とか……

 僕はそれらを全部ごっちゃまぜで……まるで神経衰弱のようにそれらの言葉を僕は選んでいく。



 僕は生きる事に後悔して……その死なないことに安堵する。

 僕は死ねない事に後悔して……生きていることに感謝する。


 その対義むじゅんが僕を成立させる。

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