第16話 伝わらない戯言

 偽ることなく、否定することなく、恥ずることなく、自分という存在を言い表すとするならずれているのだろう。


 言葉通りに何もかも。


 昔の僕は、それらを認めたくなくて、それら全てを否定して、周りの景色と同化しているつもりでいたんだ。


 誰かの勇ましい歌をただ真似て、僕は嘆きの歌を歌う。


 必死で隠した僕の足音……いまさら後悔したってその音は聴こえはしない。


 目を反らした僕の本当の姿。


 今更晒して何になる?


 誰に見せたいんだ?


 誰に認めて欲しいんだ?



 そんな自分を恥じて色んなものを捨ててきた。


 今更何を取り戻したい?



 偽り続けた自分が居る……


 否定した本当の僕はもう居ない……



 それが、今のこの世界に居る僕……



 張り詰められた……嘘


 だから、この世界の僕は偽者だ。



 希望の言葉も……


 慰めの言葉も……


 それは、僕への呪縛に変わる。



 そして、それは……


 僕を今日より嫌いな明日へ導いてくれる。



 子供の落書きのような、僕の戯言に……


 その程度のレベルだから……


 僕は書き続けられるのだ。



 誰も救わない。


 それは当然僕も救わない。



 色の無い言葉。


 音の無い言葉。



 見えない。響かない。



 そんな言葉は……君に何を伝えたい?


 振り向かないってわかっていて……何を伝える?


 

 君の言葉に惹かれて……


 それと比べることで……僕は僕の言葉を軽蔑する。



 惨めな自分……そんな歴史を刻むことで僕は逃げたつもりでいる。


 反する正義に……僕は満足する。



 交わしたのは戯言。


 それで、何が手に入る?



 さて……僕の戯言は何を伝えた。


 意味も無く響き渡る。


 淡く……ただ誰の耳に響くことなく木霊し消えていく。


 

 聴こえないんだ……他人の声が……


 届かないんだ……僕の声が……



 ずれているんだ……僕は。


 だから、僕の本音は……この世界の戯言。


 


 



 


 


  

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