第13話 矛盾者の戯言

 言葉は好きだ。

 この世界で唯一、僕の興味を引くものだ。


 だけど、この世界で誰かの話す言葉は嫌いだ。

 僕に向けられる言葉もそうでない言葉でさえも耳を塞ぎたくなるくらいに……

 

 だから、僕は否定する。

 理に適わぬ僕の言葉で否定する。


 全てをこうして否定する。


 意味など無い。

 僕の小さな声はいつだって誰にも届かない。


 いつも奴らは僕が愛するそれで僕を傷つける。


 図々しく、世界で唯一素敵なものを、

 デタラメに自分勝手に、乱暴に……考え無しに、

 その醜い言葉を平気で放つ奴らが優遇される。

 そんな……世界。


 言葉を口にするな。

 言葉を汚すな。

 頼むから話しかけないでくれ。


 僕は僕の興味のある言葉しか聞かない。

 僕は僕の好きな言葉しか口にしない。


 そんな僕の言葉に誰も興味を抱かない。


 だから……僕のこの世界で話すことは戯言だ。

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