第10話 これが僕の今日の戯言

 小さい頃……答えの無いものなど無いと思っていた。


 生きていればそれに辿り着くものだと思った。

 黙っていれば勝手にそっちから寄ってくるものだとでも勘違いしていたのだろう。


 ただ過ぎ去る列車じかん……僕は今日も飛び乗り……

 ただ過ぎ去る景色を眺めているだけ……

 変わらぬ景色を眺める……


 嫌いな景色なのに……僕は今日もその景色を眺める。

 知らない景色に目を背け生きていく。



 自分に向けた言葉じゃないだろう……誰かの言葉……

 その言葉の意味が気になって……


 窓から見える街を歩く子供に目を向ける。 


 未来に向かい、夢や希望を鞄に詰め込んで歩く子供たち。


 僕にもそんな時期があったのだろうか?

 今……僕が大事に抱えている鞄に詰め込まれているのはせいぜい平凡だ。


 それを持って、いつもと変わらない場所に向かうだけ。


 変わらない自分。

 誕生日が何故めでたいのか疑問だった。


 僕は年を取るということに……後悔という言葉しか貰ったことがない。


 自分の無能さを知った時。

 誕生日が訪れるたび……僕の無能というスキルレベルが1つ上がる恐怖を感じた。



 無駄に流れる時間……ただ流れる時間……


 変わらない景色をずっとずっと眺める。


 終着駅は何処にあるのだろう……


 あぁ、僕は終わりたいのか?


 このままこの列車に乗っていれば……終わる事ができるのだろうか?



 そう思ってるなら……それは無理だぜ?


 誰かが僕にそう告げた。



 だって、その列車は数年前に停車してからそっからずっと動いてないから。


 そうして……乗客が誰もいないことに初めて気がついた。



 僕は動かなくても周囲じかんは流れている。


 通り過ぎたものを追いかけるのは遅すぎて……

 


 どうにもならない……昨日かこを……


 どうにもできない……今日を……




 そして……僕はその理由いいわけを考える……

 そして……これが僕の今日の戯言。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る