第四話 第一巻 了

 4:

「ほら、こっちを持ってよ」

「俺、今両手怪我してんやけど……」

「腕に通せば大丈夫よ」

「腕に食い込むし、それ以前に怪我人やぞ」

「黙って持つ! ほら!」

 

 人は一人では生きていけない

 大人も子供も、皆等しく一人の『人』である

 納得できない事がある

 信じられなくなる時がある

 抗うことの出来ない現実がある

 精神論だけでは現実を修正できない

 現実は決して甘くはなく、とても辛い

 体が大きくなっても『大人』という存在になれるとは限らない

 しっかりとした『大人』になるには……

 理不尽な事が多い

 悔しい事が多い

 辛い事が多い

 それでも――


「早く帰ろ、寄り道しないからね」

「おう……ってか、もう腕が痛いんだが……」

「知らない」

「…………」


 たとえそれでも……まだまだこれからも、現実(じんせい)は続いていく。


「まったく、馬鹿な『おにい』を持つと、苦労するわー」


 おにい。

 これが良いかも。


 ――そして私は明後日、高校生になります。

                         ――終わり――

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