第3話 ディープスカイ

 彼らは空中に浮かぶ浮島の天空都市アストリアの街を散策を始める。

 賑やかこの上ない歓楽の都は、毎年恒例の宴『グランドマスターズ』が開催されるにあたって様々な場所から人々の往来がされている。

 そして、商人としてもこれは売上を上げるチャンスなのか、様々な国の商人が名物の特産品を売り出そうとスポンサーを探している様子だった。

 だが、商人としてもコロシアムでまだ無名の彼らにをスポンサーにしようなどとは考えていないので、こちらが声をかけても特産品の話はしてくれない。

 やがて、彼らがやってきたのは、アストリアのレストランが軒を連ねる美食街だ。ここは有名な酒場も数々軒を連ねている。

 アストリアにたどり着いたのは丁度お昼頃だった彼らは、そこでランチを食べようとある酒場へと入った。

 名前は『ディープスカイ』。深い青空という意味だ。


「いらっしゃいませー!何名様ですか?」

「四人です」

「こちらのカウンター席でもよろしいでしょうか?」

「いいよな?別に?」

「構いませんよ。僕は」


 他の女性陣も頷いて、ディープスカイのカウンター席に座った。

 彼らの目の前には、濃い目の水色の短髪が特徴的なコックが自慢の料理の腕を振るっている。

 やがて、そのコックは彼らに話しかけてきた。愛嬌ある感じで話しかける。


「お客さんも、もしかしてあの闘技場「コロシアム」に出場する気でいるのかい?」

「ああ、そのつもりでこの国へ来たよ」

「お客さんもそれじゃあ、コロシアムチャンプを目指しているんだね」

「コロシアムチャンプ?」

「『グランドマスターズ』に出られる選手たちは皆から『コロシアムチャンプ』と呼ばれるんだよ。激戦をくぐり抜けてきた猛者に敬意を表してね」

「でも、まだお客さんたちはそれには参加していないように見えるね」

「ああ。これから選手登録に行くんだよ」

「選手登録か。それじゃあ本当に初歩からスタートだね」


 コックは気軽な感じでしゃべりながら、中華鍋を華麗に動かしチャーハンを作っていた。かぐわしい香りが小腹が減った彼らには堪らない。

 焦がし醤油とニンニクの香りが食欲をそそる。料理が出来上がる合間に出されたお茶はジャスミンティーだ。リラックスして料理に舌鼓を打てる。

 そうして出された焦がし醤油とニンニクで味付けされたチャーハンを口に入れると中の卵がフワフワした触感が堪らない。また鶏ガラで出汁を取っているのだろうか?深みのある味が口の中いっぱいに広がった。

 スープも鶏がらスープで、具材には玉ねぎ、にんじん、チンゲン菜が使われていた。


「おいしーい!」

「本当ね!癖になりそう!」

「そりゃあ嬉しいね。ありがとう」


 水色の短髪のコックは片目をつぶりちょっと気取った感じで応対する。だけどこれ程のチャーハンを提供できるなら確かに腕は良い。

 夢中になってチャーハンを食べる目の前の選手候補に、そのコックは聞いた。


「もしかしてお客さん、まだ闘技場コロシアムに参加している間に食べられる食事の手配は済ませていないのかな?」

「まだしてないよ」

「そうか、ならお互いにとっても良い話しないか?」

「良い話?」

「この酒場、ディープスカイもまだ出来たてホヤホヤで開店してまだ間もないんだ。そこで、あんた達の食事を作らせてもらえないかな?」

「確かにいい話ですね」

「俺に例の”食材”を渡してくれたら、俺はあんた達の為にメニューを考えて食事として提供する。あんた達はここでそれを食べて闘技場コロシアムの戦いをこなす」

「良い話だと思うけど、あんた達はどうだい?」

「その話、面白そうだな。乗ったよ」

「今のチャーハンがこれだけ美味しいなら文句はないわ。あたし」

「私も文句なしね」

「決まりだな。じゃあ…自己紹介するよ。リヴァス・アーリスだ。あんた達の名前は?」

「俺はレンドール・ボーフォード。気軽にレムって呼んでくれ」

「僕は騎士ナイトのテオ・ラドグリフ」

「あたしは、ミオン。ミオン・アーヴィングよ」

「私はガンナーのアネット・サザーランドよ」

「これからよろしく!」

「選手登録に行くならパーティーバトルでのチームの呼称を作っておくと便利だよ」

「パーティーバトル?」

「コロシアムではシングル、ダブルス、パーティーバトルの三つのクラスがあるんだ。シングルが一人、ダブルスが二人、パーティーバトルは四人と参加できる人数に制限があるから気を付けるといいよ」

「とりあえず、まずは選手登録に行くか?」


 食事を食べ終わった彼らは、これからの闘技場コロシアムの選手生活で今後世話になる食事の手配も無事済ませ、その足で闘技場入り口へと向かうことになった。

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