28話 決闘者
「手札も配り終わりましたしゲームスタートですね。では同じ数字のペアを卓上にすてちゃってくださーい」
「そんなルールだったわ、懐かしすぎて忘れてた」
次々と机の中心にペアになったトランプが積み重なる。
幸い俺の手札にジョーカーはないが油断大敵だな、後からジョーカー引く方がメンタルに響くし…
にしてもこうもあっさり俺の決めた罰ゲームが採用されるとは。
友莉、お前のその慢心とぶっきらぼうな性格を呪うがいい。
俺の願いはただ一つ、友莉、お前に…
食堂までダッシュで焼きそばパンを買いに行かせることだ――――
いや、それだけじゃ甘いな牛乳プリンとセットでパシらせることにしよう。
あぁ楽しみだよお前が片膝をついて、俺に食料を献上するあまりにも似つかわしくない姿がなァッッ!!!
「あ、手札全部ペアでした。私、勝ち抜けです」
「凄いね、エリカちゃん。こんなの初めて見たかも」
「エリカあんた仕組んだんじゃないのー?」
「いえいえ私もびっくりですよ!でも確かにこれは疑いたくなるレベルの事案ですね、仕切り直します?」
「冗談だって、あんたそういうのにはほんと律儀だし。んじゃ三人で決着付けるとしますか。とりあえず順番決めのじゃんけ、ん…あーえっと…浅岡?なんか顔色悪そうだけど?」
「ん…?あぁ、そう、だった、焼きそばパン…」
「え?焼きそば、パン…?」
「んん…?あぁ、そう、だな…うん、焼きそば、パン…」
「よく、分かんないけど…なんか可哀想だしあんたからスタートでいいよ。彩芽もそれでいい?」
「うん…そうしよっか」
「浅岡せんぱーい、もし友莉先輩が最下位になったら先輩のしたかった命令。私から友莉先輩にしてさしあげますよー?」
「
「いい声ッ!あたしに恨みでもあんの?!」
鈴木が紡いでくれた千載一遇のチャンス!
何としてもものにしなければならない!
「さぁ友莉、早く手札を差し出せッ!」
「はいはい、こんなことなら一番手譲るんじゃなかったわ…」
俺のターンッ!デステニードローッ!!!
俺はこのジョーカーを手札に加えてターンエンドッッ!!!
◇◇◇
ババ抜き開始から10分が経過。
彩芽が二位で抜けて、残るは俺と友莉の二人となった。
「自信満々だったくせに最下位争いとは、落ちたもんだなぁ友莉姉さんよぉ?」
「目つき悪い誰かさんの悪運に引っ張られただけだっつの、ほらさっさと引きなよ」
残る俺の手札は一枚、友莉の手札は二枚の最終局面で俺にターンが回ってくる。
落ち着くのよ浅岡沙星16歳、最近の悩み事はただ後ろを歩いているだけなのにチラチラと振り向かれること。
「よーし、えぇーと…こっちだぁい!!」
「はい残念」
はい知ってた
いや落ち着けまだだ、二枚のカードを入念にシャッフルするのだ…
「最後の時にグズグズするから。こっちにしーよぉーっと」
友莉は一切の迷いなく俺のもつスペードのエースを引き抜いた。
「ゲーム終了~!勝者 友莉選手~!!」
俺たちの後ろで結果を見届けていた鈴木が、友莉の片腕を掴んで上に掲げる。
負けた…これが“敗北”
ひどいな、形容しがたい胸の痛みだ
だが…
だからこそ思う
ババ抜きをしてよかった
そして
お前に出会えて良かった
「お前の…いや、お前たちの勝ちだ。おめでとう。…そして覚悟しておけ、次こそ勝つのは俺だ」
俺は友莉の勝利を称えて、右手を目の前に差し出す。
「うん、またやろう浅岡。何度でも」
俺たちは再戦を誓った固い握手を交わす。
歓声が辺りを包み込む中、激戦のババ抜きは幕を閉じた。
「ってちょっとーなにスポーツ漫画みたいに爽やかに終わろうとしてんですかー?罰ゲームですよ罰ゲームぅー。友莉先輩も雰囲気に飲まれないでくださいよ」
「ごめん、なんかこーいう熱い展開に弱くて」
チッ、大団円のトゥルーエンドを演出したのもつかの間、鈴木にあっさりと見破られてしまった。
「んで何しろってんだよ、このいたいけな男子高校生に」
信用できるはずもない、張り付けたような笑顔を浮かべる鈴木。
「いえいえー、そんな難しいことではありませんよぉ?」
あ、これ死ぬやつ
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