27話 酔狂


「げぇむ…?」


 思わぬ鈴木の返答に、今までゲームというものに一度も触れてこなかった箱入り娘の社長令嬢に大変身。


「変わらないね、エリカちゃん」


「ほんと物好きだよねあんた」


「え待ってこれデフォルト?!」


 彩芽は苦笑い、友利は呆れた様子で頬杖をついている。


「そう。エリカって日本の娯楽に人一倍敏感でさ。よくそれに付き合わされてたんだけど、これがもうほんと疲れる」


「疲れるとは心外ですね、そのくらいこの国には魅力が溢れてるんです。それに友莉先輩とぉっても優しいから、なんだかんだ付き合ってくれますもんね」


 なんだその見え見えのよいしょは…


「いや、いっつもあんたが無理やり…だから、優しくとか…」


 チョッッッッロこいつ!!!


 そういや金髪が似合いそうだとか言った時もこんなんだったような。


 鈴木のやつわかっておだててんのか…?


 ともかく、こいつのことを最低限知っておくためにも今思っていることを確かめるか。


「じゃあ鈴木は日本文化に興味津々な時代劇をかじってるありがちな設定の帰国子女ってことでいいのか?」


 あまりにストレートな物言いに鈴木は肩をすくめる。


「ド偏見をそのまま持ってきましたねぇ…。日本生まれ日本育ち、一度も海外に行ったことないです」


「言い切ったなー。んじゃロシア語が喋れたりするわけでもないのか」


「ふふん、スパシーバッ!!」


「なん…だと…」


 こいつ、できるッ!


「これしか知らないです」


「いやもうなんなんだよお前っ?!互いにアホが露呈しただけじゃねぇか!」


「いやぁ、単語の一つでも覚える暇があったらアニメとか漫画に勤しんでたので」


「日本文化は日本文化でもオタク文化かよ…」


 恥じらうように頬を指で掻いてはいるが、鈴木はどこか誇らしげな様子だ。


 容姿といい趣味といい、怒涛に押し寄せる情報量の多さに目も当てられない、というか自分でも気づかない内に顔を伏せていた。


 ほんとゴリゴリに濃いのが来たな…。


「浅岡、気持ちは心底わかるけどそろそろ本題に戻すよ」


 とどめに友莉に同情され、俺は顔を伏せたまま小さく頷く。


「つーわけでエリカ、ゲームって言ってたけど具体的には?」


「色々考えてはきてるんですけど、そうですね…。トランプ持ってきてるんで、ここは定番のババ抜きなんてどうです?」


「いいよ何でも、どうせ負けないし」


「相変わらずの自信ですねぇー。友莉先輩、強運だからこういうのにはめっぽう強いですし」


 確かに色々と持ってそうだなこいつ。みちづれを打つも乱数で1耐えた後にドク状態で倒された挙句、一撃必殺を二連続で当てられてDSを逆パカした俺と勝負しようぜ。


「では浅岡先輩と彩芽先輩はやりやすいよう、机を左右に移動していただけますか?」


「ほいほい」 「わかった」


 そういやこいつら双子とお遊戯とか、今までなかったっけか。

 

 俺含めて消極的なメンバーだから、こういうのはなんか新鮮だな。


 鈴木は鞄からトランプを取り出すと、慣れた手つきでカードを切り始める。


「せっかくですしぃ負けたら罰ゲームなんてどうです?」


「別に、浅岡がソーラン節踊ってるとこなんて見たくないんだけど…」


「なにがどうなったら罰ゲームが漁業の仕事唄に直結すんだよ?!」


「んじゃ浅岡は何がいいん?」


「こちとらまだソーラン節の衝撃が抜けてねぇんだ、考えるからちょっと待て…」


 なんとなく友莉のやつ俺の扱いに慣れてきてるような…


 というか罰ゲームで醜態さらすのもさらされるのも、全盛期の俺を見ているようで心が痛むんだよ。こんな誰も得をしないことはもうやめにすべきだ。


 いや、待てよ…そうか得をすればいいのか…


「一位のやつが最下位のやつに、何でも命令できるってのはどうだ?」


「まぁいいんじゃない適当にスリルがあって」


「うん、私もそれでいいよ」


「何でもって先輩まさかエッ…」


「はいはいお約束はいいから。罰ゲームも決まったし、さっさと始めようぜ」


 計

 画

 通

 り

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