20話 貸し借り
土曜日。
俺たちは昨日、
まぁ話し合うも何も、俺がわかりきった改善案をのべつ幕なしにしゃべりつづけたという感じだったが。
あれから、ぶったまげたことに菊原は彼女さんとのデートにこぎつけることに成功したらしい。
そして今日がそのデートの日。
時間が欲しいって言われてから、今日までたったの二日だぞ。
なぜ数々の菊原の鈍感プレイを受けて尚、彼女さんはデートを承諾したのか…。
彼女さんがガンジーの生まれ変わりであることはまず間違いない。
そして、今日行われるデートは彼女さんにとってのラストチャンス、菊原への慈悲による泣きの一回のデートではないかと俺は踏んでいる。
つまり今回のデートで菊原がまた珍プレー発作を起こせば、そこで二人の関係は終わりを迎えることだろう。
実に気になる。
もう初代のリザードンがなぜか、そらをとぶを覚えないぐらい気になる。
ということで私、
ちなみに許可は取っていないので絶賛、不審の極みである。
菊原から彼女とよりを戻したいという依頼を受けたときは、控えめに言って「ぶっつぶれねぇかな」とか思っていたが、今は彼女さんのためにも菊原の望むゴールへと導いてやりたいという一種の育成ゲー気分だ。
とか妄想癖してる間に、菊原の言っていた彼女との待ち合わせ場所である駅前まできたわけだが。
「まだきてない…だと…?!」
今の時刻は11時45分。12時半集合であればもう来ていてもおかしくないはず。
まぁ飯も食ってきたし、近くのモールで時間でもつぶすとするか。モーリーフ○ンタジーの生存確認でもしに行こう。
中に入り、横並びに展開されている様々な店を通り過ぎて、ひたすらに二階の奥に展開されているエデンを目指す。
あそこには幼き頃のドリームがつまりにつまっているからな。
ひとまず、エリア・オブ・スルーウィング(※ボールプール)へと歩を進めるとするかッ!
ってうえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
店の前に佇む某双子の姉が見え…てないなうん普通に通り過ぎよう。
というかなんであいつ、あんなとこで…?
いやいやここであいつに話しかけたら、休日の昼間っからカップルを尾行する計画が漏れて確実に白い目を向けられる。
そして、耐えきれず俺も白目をむくというオチまでが完全に読める。
てかやっぱ異色なオーラがあるんだよな友莉は。おかげで唐変木の俺でもこの距離から気づくことができた。
ここは往来する人々の横隣りに身を置くことにより、死角を作ったまま横を通り抜けることにより
「浅岡?!なにしてんのモールなんかに一人で…」
は い お し ま い
「おぉいたのか友莉。今日はえっとあれだ、ここのモーリーファンタジ〇がだなぁ…ってやめろその目っ!!」
ドン引きを体現したような顔で、こちらを見つめる友莉。
「いやっ違うっ、違うぞっ!実を言うと菊原たちの尾行をだな…だからやめろってその目っ!!」
再度、ドン引きがこんにちはしてきたような顔をする友莉。
「だって気になるだろ。俺が助言した手前、責任だってある。あと暇だし」
「ぶっちゃけすぎでしょ…そんなことだろうと思ったけど」
「そんなこと思った目には見えなかったけどな…。というか友莉お前、私服、なのか」
ボーイッシュではあるが、どこか箔がつくような…なんというか上等な服装に見える。
「当たり前でしょ。んで…あんたはどうすんのこれから」
「さっき言ったろ。尾行すんだよ菊原カップルを」
言うと友莉は珍しく言葉を詰まらせる。
「そう、だね。うん、あたしも付き合おっかな。その探偵ごっこ」
「は?いや、来てくれるなら色々と助かるけど…でもこれは俺の責任でもあってだな」
「お助け部の活動として菊原の相談を受けたんだから、あたしの責任でもあるでしょ。それにあたしがいて助かるってんなら喫茶店でおごってもらった貸しもあるし」
くっ、意外と弁が立つなこいつ。
「そこまで言うなら頼むけど…。ほんと義理堅いよな、半ば強引に人の手助けとか」
「あんたに言われたくないっての。早く菊原の待ち合わせ場所まで案内してよ」
とばっちりだ、カップルをストーキングすることが人助けだとでも言いたいのか。
「駅前だからすぐそこだぞ。てか、友莉もなんか用事があって来たんじゃねぇのかよ」
「ううん、なんもない。早いとこ行こっか」
「おい待て」
「いや、ほんとなんにも…」
「モーリーファ〇タジーの有無だけ確認させてくれ」
「あれ尾行の言い訳じゃなかったんだ…」
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