16話 活動開始


 昨日のお助け部宣伝大作戦から一日経ったわけだが、まるで人が来る気配がない。


 なぜだ、あんなの見たら気になって部室まで足を運ばずにはいられないだろ普通!


 だがしかし過去のことを考えても仕方がない


 今、俺ができることをすべきだっ!


「どうもすみませんでした」


 来客がこなかった時の保険である。


「あんなことまでやらせといて、こなかったらもう…」


「ひっ」


 友莉のオーラの底が見えねぇ…


「とりあえず、今は人が来るまでゆっくりしよっか」


 彩芽が友莉の殺気をそれとなくなだめる。


「そうだね。もう宣伝する時間も機会もないし」


「いやぁ悪くないと思ったんだけどな…」


 インパクトはまちがいなく抜群だった。が、あれ見てお助け部連中を頼ろうとはまぁ思わないか…


 本当にこのまま誰も来なくて廃部になったら、二人には申し訳が立たないどころじゃない。


「まぁ、まともな方法じゃ認知すらしてもらえないような部活だし。あんたが言ってた広報って意味では上手くやったんじゃない」


 俺の沈んだ表情をみかねたのか、友莉が声をかける。


 ほっんと俺って


「あぁもう情けねぇ!ちょっと俺、ビラでも配ってくる」


「ってちょい!」


 俺がドアに手をかけると、どうしてか力を入れずとも開いた。


「おぉ沙星さとし!」


「へっ?どうしたよ菊原」


 思わぬ来客にまぬけな声がもれる。


 二年二組、菊原潤きくはらじゅん。クラスメイトで俺の唯一の友達と呼べる友達がそこに立っていた。



◇◇◇



「いやぁ、ほんとにやってるとはな。俺も見たかったわ沙星の勇士を!」


「冷やかしにきたなら帰ってくれよ…」


 俺がいる左の席の正面に菊原は座る。


 噂にでもなっているのか、菊原は昨日のお助け部宣伝大作戦を知っているようだった。


「悪い悪い、そんなんじゃなくてさ。その…ほんとに助けてもらいたいことがあって、来たんだよ…」


 いきなり重い空気出すんじゃねぇ!


「お、おぉ…なんかすみませんでした。聞かせてくれないかその依頼」


「いや、でも、こんなことここで相談していいのか…」


 菊原のやつ相当思い詰めてんな。


「いいんだよ、お助け部ってそんな場所でしかないんだから」


 とは言ったが、お助け部以前に良き友達として助けてあげたいという気持ちが強かった。


 何をやっても不器用な俺には手に余ることかもしれないが


「沙星…ありがとう。実はその、俺…」


「あぁ」


「彼女と別れそうなんだよ」


「うん帰ってくれ」


 出禁な出禁


「おぉぉい!!ほんとに悩んでんだって俺!でもプライベートで友達に相談するのもなんかきもいと思われそうでさ!」


「十分きもいわ女々しいわ!!てめぇ返しやがれ俺らの華々しく飾るはずだったお助け部初の活動!!」


 昨日、お助け部メンバーがどんだけ爽やかに思いを新たにしたと思ってんだ?!


 二人でガミガミ言い合っていると、隣で痺れを切らした友莉が口をはさむ。


「あぁもうわかったから。依頼は依頼なんだし早いとこ片づけて帰ってもらお」


「だな、すまん」


「俺の扱いひでぇ…」


 彩芽はというと、初対面で緊張しているのかじっと固まっている。


 ここは早いとこ彩芽に慣れてもらうためにも話を続けるしかないらしい。


「んじゃ改めてだが。具体的にきかせてくれないか、その彼女さんとの現状」

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