14話 作戦会議


「なぁ…」


「なに」


「これくんのか」


「知んないって」


「くるよ、きっと…」


 前日と同じく向かって右から俺、友莉、彩芽の配置。


 彩芽も揃って、お助け部も本格的に始動したわけだが…


「まだこれといったお助け部利用者がいねぇんだよなぁ」


友莉姉ゆりねぇが一人の時は、いなかったの?」


「一人もいなかった。あたしも浅岡がくるまでの三日ぐらいしか活動してなかったし」


「そっか…」


 宣伝の貼り紙はそこらに貼った、今は待つしかないらしい。


 にしてもいいよなぁ、春って


 ぽかぽかしてて…んでもって…


「ってなに眠そうにしてんの浅岡」


「いやぁもう誰かが来るまで寝ちゃだめなのか?」


「気持ちはわかるけどさ。このまま誰もこないと食券没収になるよ」


「え?!適当やってるだけじゃだめなのかよ?!」


「坂本先生が報告書にまとめるようにって言ってたじゃん。あれ提出できないと援助金も食券も出ないから実質的な廃部だってさ」


 嘘…だろ…


 俺たちの戦いはこれからだ!って時に、いやだからこそだったのか?


「…やるしかないな」


「「なにを?」」


 俺は、仲良く小首をかしげている双子に説明する。


「貼り紙だけじゃどうも効果は薄いらしい。だから生徒たちが来てくれるような広報をする必要がある」


「広報ねー。けど具体的にどうすんのよ」


「それを今から三人で考えんだよ。友莉、席変わってくれ」


「いいけど…」


 友莉と席を交代して俺が真ん中に座る。


 そして、鞄から筆箱と一枚の白紙を取り出した。


「ではこれより、お助け部に人を呼ぶための作戦会議を始めます。彩芽、作戦名を…!」


「じゃあ…お助け部宣伝大作戦」


「かいけつゾロリばりの安直さだな、これでいくとしよう。お助け部宣伝大作戦のステップは大きく分けて三つ。一、なぜ利用者が来ないのか問題点をあげていく。二、それらの改善案。三、実行に移す際の内訳の決定」


 俺は今話したことを端的に紙にまとめる。


「へー、なんかそれっぽいじゃん」


「めんどうだけど、飯が食えなくなるとかマジの死活問題だからな。んじゃさっそくステップ1の『なぜ利用者が来ないのか』からなにかある人」


 すると彩芽が「はい」と手をあげる。


「どこからどこまで手助けをしてくれるのかがわからない、とか?」


「おぉ、言われてみれば確かにそうだな」


 要は、お助け部の対応可能な依頼は何かってことだな。


 彩芽はどこか抜けてそうな偏見があったが、中々に的確な意見を出すもんだ。


「友莉はどうだ?」


「やっぱ、どんな人たちが活動してるかわかんないのは大きいんじゃない。得体が知れない的な」


「いやに物騒な言い回しだが言えてるな。話したこともない相手に、自分の悩みを赤裸々に打ち明けようとは思わねぇし」


「あんたはどう思うの?」


「そうだな…部員が三人とも黒髪なのはキャラ付けとしてどうかとは思う」


「違う意味で核心を突きすぎでしょ…」


「そうだな。いざとなったら友莉は金髪にしてセンターに置こう。似合いそうだし」


「え?そう…まぁ考えたことは、なくもない…けど…」


 なんでまんざらでもなさそうなんだよ…


 俺は一つせき込んで話を続ける。


「んじゃステップ2な。彩芽と友莉が挙げたこの二つの問題点を中心に、改善案を考えていく。まずは彩芽の『対応可能な依頼』から。友莉、お助け部の活動内容とか先生から聞かされてるか?」


「あーえっと…悩み事に行事ごとの人手不足、後は落とし物とか幅広い相談内容にも対応するとかぁなんとか」


「何でも屋かよ。ともかく『お助け部は俺たちにとって都合のいい活動をしている』と思わせるような広報が要るな。その事実さえ浸透すれば、少なからず生徒の方から面倒ごとをもちかけてくるはずだ」


「貼り紙に『どんな相談でも受けます』とか追記するのは、どう…?」


「あーあり、かも。ただそれだけで今週中に人がきてくれるかは望み薄な気がすんだよなー。一度生徒が目を通したものを、もう一度読もうとも思わんだろうし。ごめんとりあえず、友莉の『お助け部にはどんなやつらがいるのか知ってもらう』からいってもいいか?」


「これも、難しい…」


「そうなんだよなぁ…実際にこのメンツを見て、『よし!相談しよう!』って思うマゾもいねぇだろうし」


「嘘でもお助け部には愉快な仲間がいっぱい!って感じのおもちゃ王国なイメージを持たせる必要があるわこれ」


 三人仲良く、この二つの難題に頭を悩ませる。


 すると、友莉がため息交じりに言った。


「それこそお助け部に頼りたくなるよほんと…」



 俺らに…友莉が…



「いや、あるかも…どっちも解決できる作戦」


「まじ?」 「ほんとに?」


「明後日の放課後、体育館で新一年に向けて、クラブ紹介が行われるのは知ってるか?」


「知ってるけど。あれってあくまで部員勧誘を目的にしてるから、あたしらは出られないっしょ」


「そっちじゃなくてさ。あのクラブ紹介って名目上は新一年に向けたものなんだけど、閲覧するのは二、三年も可能なんだよ。んでもってこの高校のクラブ紹介は毎年クオリティが高いとかで結構な人数が集まる」


「私たちも見にいくってこと?」


「違うけどそう。ステップ3、実行の内訳について説明するぞ」



 ◇◇◇



「いやいやいや無理無理無理無理なんであたしがそんな!!」


「いけるか、彩芽」


「うん、楽な仕事だし大丈夫」


「よし、さっそく借りにいくぞ」


「ちょっと?!無理だって言ってんだけど!!」

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