第34話34
次の日の土曜日。
やはり明人は、学校を休んだ。
クラスメイト達も明人を心配していたが、みな恒輝には聞ける雰囲気で無く、田北や岡本に聞いてくる。
そんな中、御崎と長野だけは、直接恒輝に明人の事を聞いてきた。
明人は一応、風邪と言う事で休む事になっていたので、恒輝はそう2人に伝えた。
恒輝は、最初あれ程明人がウザかったのに…
今日は、明人のいない教室にも、それに違和感を感じてる自分にも戸惑った。
学校は、午前で終わった。
午後からは、御崎の家で勉強の予定だった。
しかも、初めて行く御崎の家なのに、下校そのまま御崎と直行し…
遠慮したのに、強引に昼食までご馳走になる事を御崎に約束させられていた。
前は本当にごくたまに喋る程度だった恒輝と御崎の関係。
しかし、恒輝はここ数日で、御崎を前より深く認識するようになっていた。
御崎の家は、普通のマンション。
御崎は何故か?
自宅に着くと、又眼鏡からコンタクトにし、ボサボサの髪もキレイにして後ろに束ねた。
御崎の母は御崎によく似た超美人で優しくて、勉強前にカレーを出してくれ…
御崎の部屋で、小さく低いテーブルで足を崩し向かい合い食べる。
実は恒輝は、実母や実父の作った食事は食べた記憶が無い。
西島家はいつも食事を含め家の事は一切全て、沢山いるハウスキーパーがやるのが当たり前だったからだ。
花菜の家庭へ来て、初めて父や母が自分達で食事や家事をする事を知ったのだ。
「西島君さぁ…」
カレーの人参をつつきながら、御崎が不思議そうに聞いてきた。
「あっ!なんだ?」
「西島君って…ここ何日かで、急に背、少し伸びたりした?」
その問いに、恒輝は一瞬固まる。
だってそれは、朝、田北にも聞かれたから。
「んな訳あるかよ…俺、バケモンかよ…」
「西島君…フェロモン不完全症だって言ってたけど、俺、聞いた事あるんだよね…アルファやオメガのフェロモン不完全症って、自分にとって番にしたい相手を認識したら完治する事も本当に稀だけどあるって…それで急に背が伸びたり、能力が向上したり、匂いが分かるようになったりするって…」
「…」
恒輝も、それは知っていた。
しかし、本当かどうかは未だ学者が研究中だとも聞いていたので疑わしくて一瞬押し黙った。
しかし…次の瞬間…
話しの導線からそれは恒輝が、番にしたい相手を認識したと言われている事に気付き、即反論した。
「第一、番にしてぇ様な奴、俺にはいねーよ…」
「ふぅん…そうなんだ…」
御崎はそう言うとクスっと笑い、カレーを口に入れた。
そんな御崎を見て、恒輝は、又思ったままを言った。
「でも、やっぱ…御崎、お前、眼鏡外して、髪そうやってる方がいいぜ…なんつうか…その…オメガみたいに見える…」
そして…
御崎の顔に明人の顔がダブり…
まるで…明人みたいにキレイだと思いかけて慌てて止めた。
「俺がオメガか…西島君…もし、俺も実は本当はオメガだって言ったらどうする?」
突然、御崎がスプーンを皿に置き、真剣に恒輝を見詰めてきた。
しかも、なんだか、妙に色気がある。
「はぁ?お前が、お前が…本当はオメガ?…」
恒輝も、御崎を凝視して戸惑った。
だがそこに…
恒輝のスマホが鳴り、メールが入った。
「あっ!ちょっとわりー…」
丁度いい所に助けが入り、恒輝は
スマホを手にしメールを開けて見る。
ー会えなくてさみしいー
それは、明人からだった。
実は今日は朝から、明人からこのさみしいだの会いたいだののメールが頻繁に送られて来ていた。
ー大人しく寝とけー
恒輝は、又これも朝から同様、愛想の無い返信をする。
「彩峰君?」
すると、御崎が鋭い指摘をした。
「あっ…いや…違う…田北から…」
何故か、恒輝は誤魔化してしまった。
そして、これではまるで浮気している旦那のようだと思ってしまった。
「そう…」
御崎は、又、クスっと笑ったが、これも又、妙な色気が漂っているのを恒輝は感じ取ってしまった。
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