黒霧の少女17


激しい光が収まった。


くうは、空が言っていた自分的最強の相手がいるかもと思い、咄嗟に戦闘態勢に入るが、目の前どころか辺りに誰もおらず拍子抜けを喰らう。


更には、さっきまで浮かんでいた四角形すら無くなっている始末。


もう、わけかんない。


どうしようも無いし、雑に歩き回ってみる。


自分以外の呼吸音、足音、服の擦れる音、それ以外全くと言っていいほどの無音。まるで音が吸い込まれているよう。


動き回っても拉致があかないと結論付ける。


「よし、壊そう」


くうは、短期だった。全てのものは壊せばなんとかなると言う単純思考で、基本的な呪いを使う。


自分の血を適当に対象に付ける。その後魔力を付けた血に流す。


この時に悪意をぶつける。死ね、など。


すると対象が無機物の場合、少しづつ朽ちていく。少しづつは、数十年単位から、数秒に渡る。


呪いの進行速度は術者の技量と魔力量による。


対象が、生物の場合も基本的には無機物の時と変わらない。


右の人差し指を齧る。


血が滴り、床に垂れる。ポタポタと、10cm位の範囲が血で染る。


不思議と、何時ものイライラとした気分がこの場所に居ると霧散してしまっている事に気付き、呪いの効果が出るのが遅れる。


普段ならちんたらと待つことにイライラするのに今は、何も感じない。


暫くすると、床に赤色の蜘蛛の巣の様な模様がでる。


これは呪いの効果じゃない!


緊張が走る。視線を左右に振り、重心を低くする、いつでも動けるように。


ガタン!!!


かなり大きい音が真下から響く。その音は地震のような縦揺れを感じさせる。


気付くと蜘蛛の巣はかなりの範囲に広がっている。


揺れが収まると蜘蛛の巣もスっと消える。何事も無かったかのような静寂が、辺りを包む。


未だ緊張状態は続く。


試練だと言っていたからには何かあるはずだ。


これでお終いなんてあるはずない。


この予想は当たり、自分中心に床が立体化する。幾つもの壁が辺りに出来上がる。


暫くすると白銀の迷路が出来上がる。


「何なんだ、ゴールしろってことか?」


『お前の価値は?』


その声は周りの壁からの問だった。


「精神的に追い詰める気かよ」


くうには、この試練はかなり堪えそうな気がして気が滅入る。

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