登場人物紹介②

〈五月雨〉

 それではキャラクター紹介の続きと行きましょう。


〈莉緒〉

 ここで紹介するキャラは、新倉、ナディア、銀子、優利となっているわね。早速行ってみようっ。



 ***


新倉永八にいくらえいはち(27)


 主人公のかつての同僚、現役のゼロナンバー〈ブラボーゼロ/ブレイド〉。

 『剣鬼』と称される程の剣の達人。刀剣を用いた白兵戦では無類の強さを誇る。


 名前の由来は新選組二番隊組長(最近は隊長表記が多い)永倉新八から。というか、文字を組み替えただけw

 新選組の中でも最強クラスの剣の達人であり、作者の五月雨が一番好きな新選組隊士でもある。


 ビジュアル的なイメージ元は無いが、外見的な特徴として「クロガネ以上に鋭い目付きをした長身の男性」とある。体格も剣を振ることに適した細マッチョ。


 剣の達人にして求道者でもある新倉のイメージソースは、ヤングガンガンコミックスの『死がふたりを分かつまで』の主人公・土方護より(※18)。


 ※18『死がふたりを分かつまで』

 原作・たかしげ宙、作画・DOUBLE-S。

 犯罪組織に狙われた予知能力の少女を守るため、盲目の剣の達人である土方護があらゆる物質を断ち切る刀を手に戦うというもの。

 彼もまた周囲から『剣鬼』と呼ばれるほど、銃が主力である現代においてなお剣にこだわり、その技術を磨き、極めるために戦う。

 『3』で新倉が「手段のために目的を選ばない」と語るこの台詞、実は『死がふたりを分かつまで』本編で主人公の土方が自身の在り方を表した名台詞をそのまま引用。その台詞が示す通り、漫画では土方は苛烈で修羅な道を歩む……一方で、ヒロインである予知能力の少女に対しては、厳しくも優しい一面を覗かせるとても魅力的な人物。


 元ネタ同様、新倉も剣の達人ゆえに複数の古流剣術を習得している。


・無外流

・新陰流

・示現流

・一刀流

・神道無念流

・天然理心流


 などなど、実戦的な流派は何でもありという設定。


 武器は高周波ブレード。小型強力なバッテリーとモーターを仕込んだ特殊な柄によって刀身が微細振動、別次元の切れ味を生み出す。刀身は作中の名のある刀鍛冶が鍛えたもの。

 本編未使用だが、日本刀の鋭い切れ味と抜群の強度を兼ね揃えた実用性一辺倒の『同田貫』を愛用しているという設定がある。


 実は『機巧探偵』の世界観において「対オートマタ・サイボーグ戦に有効な戦術の一つに刀剣術を用いた白兵戦」という設定がある。

 だが現実的に考えても特殊な弾丸を装填した銃火器を使った方が手っ取り早く、相手も銃を使ってくるため「対象を切断可能な間合いにまで接近する」リスクを伴う剣は実戦から遠のいている。それこそ剣に魅了された『剣鬼』でも居ない限り。


 ちなみに『3』で触れられた通り、新倉は刀や剣術・時代の考証がしっかりと為されてさえいれば、時代劇だろうがアニメだろうが特撮だろうが真顔で視聴する。

 きっと『るろうに剣心』や『鬼滅の刃』など、週刊少年ジャンプで人気な「刀を用いる歴史漫画作品」も好きに違いない。



・ナディア(13)


 主人公に好意を抱く第三のヒロイン。中東の小国出身で褐色肌の小柄な少女。

 狙撃の達人であり、ヤンデレ。


 三人目にして最後のヒロインであるナディアは、完全に手探りで生まれたキャラクター。実は機巧探偵シリーズに登場するヒロインは当初、美優と真奈の二人だけだった。

 そこに、主人公の過去を象徴するゼロナンバーという設定が出来たため、メンバーが野郎だけだと華がないから女性メンバーを作ろう→新倉が剣士だからその対極、女性スナイパーを出そうという流れになり、ストーリーの幅を広げるために主人公と接点を持たせ、美優(見た目JK)、真奈(年上)と並んだ時にバランスが取れるよう、思い切って十代前半のロリキャラとなった経緯がある。


 ちなみに、「ヒロインの上限は三人まで」と定めたのは作者の限界のため。

 これ以上ヒロインを増やすと物語進行に支障をきたすと考えた。

 のちにヤンデレ気質を設定して修羅場ネタが出るのは確実であったため、ある意味では英断である。


 幼女(ゼロナンバーになる前のナディア)がスナイパーとなった説得力を持たせるため「中東の紛争国出身」設定に付随する形で、肌が褐色で日本語が片言となった。


 ナディアは三人のヒロインズで唯一、暗殺者時代の主人公をよく知る存在であり、その影響か平和な日常回では思考や言動が他のヒロインとズレがある。それが「ヤンデレ」という形でキャラクターの方向性が決まった。


 ただ、作者の五月雨にとっては初のヤンデレキャラであり、作品作りに一抹の不安を常に覚えている。


 名前の由来はネットで『中東の女性名』を検索したところ、「ナディア」が何となく語呂が良くて気に入り採用したが、まさか同名褐色肌のヒロインが活躍する昔のアニメ(※19)があるとは思いもよらず、知ったのはカクヨムでオリジナル版『1』を投稿する直前だった。


 ※19『同名褐色肌のヒロインが活躍する昔のアニメ』

 1990年に放送された名作アニメ『ふしぎの海のナディア』のこと。

 総監督は『新世紀エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』などでお馴染み庵野秀明氏。


 名作アニメヒロインと名前が被るという恐れ多い事態に、流石に名前を変更しようかと悩むも、すでに愛着が湧いていた事と彼女を軸にしたストーリー(『3.5』など)も考えていた事もあって、覚悟を決めてこのまま行くことに。


 ちなみにナディアのモデルは『マージナル・オペレーション』(※20)に登場するメインヒロインから。


 ※20『マージナル・オペレーション』

 芝村裕吏原作のミリタリーアクション小説。漫画版もある。

 主人公である三十路のニートが就職したのは、民間軍事会社のオペレーター。

 やがて自身が指揮を執っていた部隊が年端の行かない少年少女兵である事を知り、彼ら彼女らが銃を置ける安寧の地を求めて行動を起こすというもの。

 その少女兵の一人でメインヒロインでもある「ジブリール」が、ナディアのモデル。褐色肌、主人公にデレデレ時々ヤンデレと、共通点が多く見られる。


 ナディアが使用するライフルは、現役のゼロナンバーであり優秀な狙撃手という事で種類が豊富。場面や状況、用途に合わせて使い分ける。

 『3』や『4』のように大勢の敵を相手に前線で戦わなければならない状況ではアサルトライフルを、オートマタなどの硬い装甲持ちには対物ライフルを、それ以外の長距離狙撃が必要な場面ではボルトアクションのスナイパーライフルを使用するのが(作者の)基本方針である。



白野銀子しろのぎんこ(21)


 主人公のライバルを自称する白野探偵社の女社長。

「探偵ものならばライバル探偵も欲しい」という理由から生まれた、年齢以外は全て主人公と対を成すキャラクター。元暗殺者で特殊能力持ちのクロガネとは違い、元お嬢様で普通の一般人である事を意識している。


 本名は獅子堂銀子。物語全体の鍵を握る獅子堂莉緒の従姉であり、メインヒロインである安藤美優にとっては従姉妹違いにあたる。


 当初、ライバル探偵は『1』で登場した「クズ兄貴」こと獅子堂玲雄以来となる獅子堂家関連の男性で進めていた。

 彼が美優に(外見も能力も)一目惚れし、クロガネから引き抜こうとして修羅場になるという話を考えるも、すぐにボツ。

 その理由はクロガネが美優を手放す事は絶対にないし、美優がクロガネ以外の男になびく事も考えられないからである。また、玲雄の二番煎じとなるのもボツの原因となった。

 そうした経緯からライバル探偵は女性となり、一方的にクロガネを敵視する設定を追加。当然、クロガネと恋仲には絶対にならない(断言)。


 ビジュアル的な元ネタは特に無いが、クロガネと対になる「女主人公」をイメージしている。

 これは『機巧探偵』の外伝主人公に、ライバル探偵である銀子・優利ペアを使おうと考えていたからである。白野探偵社の存在と設定そのものをクトゥルフ神話TRPGに組み込んだため、外伝の内容は主にオカルト事件の調査となっている。

 ……普通の人間である銀子、涙目でSAN値チェック不可避。


 性格は強気だが他者を思い遣れる普通の善人。また、上流階級の令嬢として相応しくあろうとした過去から努力家でもあり、大抵のことは人並み以上にこなせるオールラウンダー。

 お嬢様時代から付き従っている藤原優利の事を誰よりも信頼しているが、長い付き合いの関係ゆえか彼に対して素直になれないツンデレ属性はポイントが高い。

 ……何のポイント?



藤原優利ふじわらまさとし(20)


 銀子を慕う探偵助手の少年であり、あらゆる顔に変身できる能力を持つ潜入特化型ゼロナンバー〈インディアゼロ/イリュージョン〉。


 元は獅子堂重工分家筋のお嬢様だった銀子の護衛にして専属使用人。

 「藤原優利」としての顔も名前もこの時からの付き合いであり、「藤原優利」の顔を素顔として基本設定にしてある。

 クロガネに「人間らしい感情を教えた大切な存在」が莉緒ならば、優利に「確固たる素顔と名前を与えた大切な存在」が銀子であるのは間違いない。ヒロイン力がやたら高いお嬢様従姉妹である。


 その能力の特性上、クロガネ以上に優れた暗殺者適性とスパイとしての才能が認められ潜入工作専門のゼロナンバー〈インディアゼロ/イリュージョン〉となった。

 任務の都合上、インディアゼロの存在やその容姿を知る者は同じゼロナンバー内でもごく僅かである。


 武器は基本的に警棒のみ。「藤原優利」は高校二年生で未成年という設定であるため、帯銃できない。ただし、緊急時においてのみ、上司である銀子の判断で銃を使用できる。

 ゼロナンバーの任務や怪盗としての活動では、護身用として拳銃を装備している。

 主に口径9ミリのベストセラー自動拳銃、グロック17を使用。


 変身能力持ちのため、ビジュアル的なイメージは無い。

 性格は基本的に真面目で、変身した人間のキャラクターに見合った性格を演じ分ける役者のようなイメージ。



 ~『4』に至る優利の主な来歴~


 元々は捨て子。父親は母親の妊娠を知るや蒸発し、母親はのちに優利となる『彼』を出産して三年後には別の男を作って失踪。

 以降は母方の祖母に引き取られて育つも、その祖母も間もなく病気で死亡し、獅子堂重工傘下の児童養護施設に入所する。


 ナディアと同様、次世代ゼロナンバー育成計画――通称〈ネクストゼロプラン〉の数少ない成功者であり、変身能力に覚醒し、ナディアとは別の研究施設に送られる。

 そこで変身能力の研鑽と一般教養、戦闘訓練を受ける。


 14歳の頃、年齢が近い獅子堂銀子(当時15歳)の専属使用人となる。主に彼女の話し相手や遊び相手、護衛が任務である。

 一方で特殊な訓練を積み重ね、17歳で〈インディアゼロ/イリュージョン〉に任命される。

 潜入工作に特化した穏健派という特殊なゼロナンバーであるため、戦闘に特化した他のゼロナンバーとは一切チームを組まず、獅子堂家に仇なす敵地に単身潜入して諜報活動を行った。

 その際、銀子の護衛任務は一時的に抜けるため、「定期的な使用人の研修がある」「銀子の父親の仕事の手伝いをしている」と彼女を言いくるめている。


 表は銀子の使用人、裏ではスパイ活動を行う二重生活を約五年間続ける。その間に怪盗〈幻影紳士〉としても活動を開始。

 怪盗活動の本来の目的は、【パラベラム】の支援者探しとネットワーク作りである。


 そして19歳の頃(時系列的には『1』終了直後)、家の政略結婚の道具にされるのが嫌で子供の頃に憧れた探偵となるため独立した銀子に無理矢理連れられ、探偵助手にされた。

 実際にその通りであるが実はその裏で、銀子の実父である獅子堂晃司から娘の勝手を見逃す代わりに護衛兼監視役を任命された経緯がある。つまり、父親は娘が家を飛び出すのを解っていながら黙って見送り、応援していたのだが、それを知るのは優利だけである。

 親子間の複雑かつ面倒くさい家庭事情に振り回される側は堪ったものではないが、優利にとっては銀子が何よりも大事なので無問題。


 お嬢様時代において周囲から過度な期待とプレッシャーに苛まれていた銀子は、合意の上でよく優利に当たってストレス発散の捌け口にしていた。敬愛する美少女が繰り出す素の感情と責めを受け止める内に、いつしかそれが病み付きとなっていつしか(銀子限定の)ドMに目覚める。

 割とヤバイ性癖はさておき、銀子の苦労を間近で見てきた優利は、彼女のためならばあらゆる手段に講じる。


 銀子と独立後、彼女に有害な存在であれば、時にそれとなく遠ざけ、時に実力で秘密裏に排除する。


 銀子が家から独立した際には、共に良い物件と職種を探し、独断で悪質な不動産や反社会的勢力の有無の調査を行い、有害であればそれとなく排除して手柄のみを銀子に譲って彼女の売名活動に一役買い、ゼロナンバーの伝手(デルタゼロ)を使って優秀な人材を掻き集め、会社施設の充実と雇用者を確保するなどして瞬く間に白野探偵社を有名なものに仕立て上げた(この間、銀子はクロガネをスカウトしようとして断られていた)。

 ちなみに銀子には内緒で、彼女の父親からの支援金も上手く活用している。


 それとは別に暇があればゼロナンバーとしての仕事――怪盗〈幻影紳士〉として悪人から財宝を盗んで金に換え(換金手続きは密かに獅子堂重工で行っていた)、白野探偵社の運営費や生活費に充てていた。


 20歳の頃、やがて怪盗〈幻影紳士〉の存在が有名になり、「怪盗行為を阻止する銀子」という構図で彼女の更なる評判と飛躍に繋がると優利は考えた。

 この時点で【パラベラム】のネットワークはほぼ完成しており、ボロが出る前に怪盗を退場させる必要があったため、時期的な意味でも丁度良かったと言える。


 そして地元鋼和市の美術館に予告状を送り付け、本編『4』へ。

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