第14話 日本語文法(14):敬語とムード

 敬語は2007年に大きな解釈変更がなされました。文化審議会国語分科会の答申により、新しい「敬語の指針」が発表されたのです。


 それまでは「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三区分でした。

 これを「尊敬語」「謙譲語I」「謙譲語II(丁重語とも)」「丁寧語」「美化語」の五区分へと改められたのです。





尊敬語

 目上の人などの行為を高める表現が「尊敬語」です。

 次のふたつが基本形です。

 「お〜になる」:「お読みになる」「お書きになる」「お話しになる」

 「〜られる」:「読まれる」「書かれる」「話される」

 二重敬語として有名なのは「お〜になられる」ですね。

 「お走りになられる」は二重敬語です。

 正しいのは「お走りになる」「走られる」のいずれかです。




謙譲語I

 尊敬する相手を高めるのでなく、相手に対する自分の行為を低めることで、相手への敬意を表します。

 「お〜する」:「お読みする」「お書きする」「お話しする」

 「お〜いただく」:「お読みいただく」「お書きいただく」「お話しいただく」

 「〜させていただく」は若い人を中心に使われています。使役形に「もらう」の謙譲語である「いただく」を付けた形式です。相手の行為を自分が丁重にいただくという形で相手を高めます。尊敬語のようですが謙譲語です。ただし謙譲語IIに転用される可能性もあります。以前は敬語間違いとして認知されていました。

 「〜させていただく」:「読ませていただく」「書かせていただく」「お話しいただく」




謙譲語II

 丁重語とも呼ばれ、尊敬するべき目上の人に対する敬意というより、その場にいる不特定多数の人などに対して自分がへりくだる表現です。特定の人に対する敬意ではないのが大きな違いです。

 「お〜いたす」:「お読みいたす」「お書きいたす」「お話しいたす」

 「愚・小・拙・弊〜」:「愚妻」「小生」「拙著」「弊社」




丁寧語

 丁寧語は「です・ます体」でいう形式です。

 「動詞」は「ます」、形容詞と名詞には「です」を付与します。

 「です」:「学生です」「綺麗です」「美しいです」

 「ます」:「読みます」「書きます」「話します」




美化語

 名詞の頭に付く「御」で表す言葉です。

 「お」:「お菓子」「お酒」「お茶」

 「ご」:「ご飯」「ごちそう」

 「み」:「おみおつけ(御御御付け)」「御心」




特定の敬語形式

 普通形 尊敬語    謙譲語I  謙譲語iI

 行く  いらっしゃる 伺う    参る

 来る  いらっしゃる       参る

 いる  いらっしゃる       おる

 食べる 召し上がる        いただく

 飲む  召し上がる        いただく

 見る  ご覧になる  拝見する

 言う  おっしゃる  申し上げる 申す

 する  なさる          致す


 ※おおせられる/おおせつかるのように、さらなる尊敬語もありますが、たいていは為政者と話をするときくらいしか用いません。

 また、敬語の参考書は一冊買っておくことをオススメします。

 とくに「特定の敬語表現」に挙げたように、語形ががらりと変わってしまうものがたくさん載っているものを探してみましょう。





日本語学習で憶えたいポイント

(1)敬語には尊敬語・謙譲語I・謙譲語II・丁寧語・美化語の五つある

(2)それぞれ一般動詞を特定の型にはめることで作れる

(3)特定の動詞は単語そのものを置き換えて表現する

(4)敬語は参考書を一冊持っていると安心できる




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「小説の書き方」コラム外伝 カイ.智水 @sstmix

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