第13話 日本語文法(13):ムード

 助詞「は」の説明で「ムード」という言葉を使ったのを憶えている方もいらゃっしゃると思いまする

 客観的事実を述べる「コト」とその言葉に主観的な情報を付与する「ムード」でしたね。





ムードには二種類ある

 コトに対して自分の気持ちを述べるムードは「対事的ムード」と呼ばれます。

 コトの内容を相手に働きかけるムードは「対人的ムード」と呼ばれます。

 複数のムードをくっつける場合は、「対事的ムード」+「対人的ムード」の順に重ねます。





対事的ムード

 「今夜、台風が上陸するそうだ。」

 という文の「コト」は「今夜、台風が上陸する」です。客観的ですよね。

 そしてその「コト」に対する語り手の考えを述べるのが伝聞の「そうだ」です。

 このように、コトに対する語り手の考えを述べるものを「対事的ムード」と呼びます


 対事的ムードの体表例

「彼が犯人だ(。)」(断定)言い切ると断定になるパターン

「私はアメリカに留学する(。)」(意志)一人称で言い切ると意志を表すパターン

「燃料価格が上がる(らしい。)」(推量)

「父はもうすぐ来る(はずだ。)」(確信)

「これは、こういうふうにやる(のです。)」(説明。元は「のだ。」)

「彼女が犯人だ(と思う。)」(非断定)

「今年の夏は猛暑になる(かもしれない。)」(可能性)

「新車を買う(つもりだ。)」 (意志)

「一流大学に入学し(たい。)」(話者の願望)





対人的ムード

 「私の車で家へ送りましょうか。」

 という文の「コト」は「私の車で家へ送り」です。

 そしてその「コト」を他人に促している・働きかけているのが勧誘の「ましょうか」です。

 このように、コトの内容を聞き手に働きかけるものを「対人的ムード」と呼びます。


 対人的ムードの代表例

「そろそろお昼にし(ましょう。)」 (勧誘)

「授業中は携帯電話を切っ(てください。)」(依頼)

「もっと早く来(なさい。)」(命令)

「ここでタバコを吸っ(てもいいです。)」(許可)

「そこから先は入っ(てはいけない。)」(禁止)

「もうご飯を食べました(か。)」(質問)

「向こうにフェリーが見える(だろう。)」(確認)

「今日は本当に暑い(ね。)」(同意と確認)





副詞の中にもムードがある

 これまでムードはコトの後ろにある述語へ付けていましたが、述語(用言)を修飾する副詞もムードを含むことがあります。

 たとえば「せめて」「あいにく」「わざわざ」などの副詞には気持ちがこもっていますよね。

 また文末のムードと呼応する副詞もあります。

 たとえば「たぶん〜だろう。」「絶対に〜(だ)。」「おそらく〜に違いない。」「きっと〜はずだ。」「まるで〜ようだ。」「どうして〜か。」のように副詞と文末がひとつのムードを醸しています。





日本語学習で憶えたいポイント

(1)「ムード」には「対事的ムード」と「対人的ムード」がある

(2)重ねるときは「対事的ムード」+「対人的ムード」の順

(3)副詞の中にも「ムード」を加えるものがある




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