第4話 日本語文法(4):主語と述語と習ったけれど

 日本人は小学生の頃、学校文法で「文には主語と述語があります」と習います。

 しかし外国人が学ぶ日本語文法では「日本語は述語を装飾することば」と教わります。





そもそも主語ってなに?

「日本語には主語と述語がある」

 この概念は小学生で早いうちから習います。

 しかし主語とはそもそもなんなのでしょうか。

 「述語」で示されたものを表す「文の要」として「主語」を置いています。

 つまり「述語」が成立するのはこの「主語」である、ということです。

 「父が自転車で子どもを幼稚園に預ける。」という文があったとします。

 このとき主語は「父が」、述語は「預ける」と教わるのです。


 では「預ける」という述語は「誰が」がわかれば成立する文なのかといえば違います。

 「なに(誰)を」預けるのか、「どこ(誰)に」預けるのかも「誰が」とともに必須の情報です。

 である以上、助詞「が」が「主語」つまり動作主を表しているとして、それが即特別というわけでもありません。





述語に係り受けする助詞はすべて重要

 それぞれの文節と述語の関係を示すために「文節に付く助詞」があります。これをとくに「格助詞」といいます。

 そもそも「格」とはなにか。文として成立するために、それぞれの文節と述語との関係のことを「格」といいます。「文節」と「述語」の関係を「格関係」といい、格関係を示すのが「格助詞」なのです。

 先ほどの例文「父が自転車で子どもを幼稚園に預ける。」では「が」「で」「を」「に」はすべて格助詞です。


 格助詞は全部で9つあります。

「が」主語

「を」目的語

「に」場所や時や到達点

「で」場所や手段・方法や原因・理由

「と」相手

「へ」方向

「から」起点

「より」起点や比較

「まで」到達点

 などを示します。

 この9つの格助詞は憶えていなくてもよいのですが、憶えたい場合は「鬼までが夜からデート」という語呂合わせが有名です。「を/に/まで/が/より/から/で/へ/と」ですね。

 主題を表す助詞「は」は格助詞とはみなされません。それは一文における述語に縛られず、複数の文章の述語に対して影響を与える助詞だからです。





格助詞「が」は三つすべての文型で用いる

 主語を表す格助詞「が」は、動詞文でも形容詞文でも名詞文でも必要になります。これが格助詞「が」が主語を表し、述語に対して欠くべからざる要素と思われている一因です。

動詞文「雨が降る」「LEDが光る」「花が咲く」「洗濯物が乾く」

形容詞文「昔が懐かしい」「答えが正しい」「文字が美しい」

形容詞文「町が賑やかだ」「夜は静かだ」「色が鮮やかだ」

名詞文「私が弁護士だ」「彼が犯人だ」「子どもは中学生だ」

 このように格助詞「が」は述語の範囲を絞る役目があります。

 「雪が降る」は「降る」のは「雪」だけです。雨や雹は降りません。

 「文字が美しい」は「美しい」のは「文字」だけです。顔や体は美しいとはかぎりません。

 「夜が静かだ」は「静か」なのは「夜」だけです。朝や昼や夕は静かとはかぎりません。

 「彼が犯人だ」は「犯人」なのは「彼」だけです。彼女や父は犯人とはかぎりません。

 ここで見たように、格助詞「が」は述語の範囲を絞る役目なのです。


 だからこそ格助詞「が」が主語として規定されるに至りました。





日本語学習で憶えたいポイント

(1)日本語には主語の概念はあるが、格助詞「が」は他の格助詞と同列であり、省ける

(2)格助詞「が」は三つの基本文型すべてで使われる

(3)格助詞は「鬼までが夜からデート(を/に/まで/が/より/から/で/へ/と)」の語呂合わせで覚える



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