第2話 日本語文法(2):基本構文は用言文と体言文

第2話 日本語文法(2):基本構文は用言文と体言文


 日本語の文には大きく分けて用言文と体言文があります。 

 この考え方は私のオリジナルですが、英語に親しんでいる方が日本語を勉強するときには、概念としてでも憶えておくとよいですね。

 とくに体言文は、文章表現が用言文だらけになったときの清涼剤としても使えますので、そういうものがあるんだ、くらいには感じていただけたらと存じます。





基本構文1:用言文

用言

 「走れ」「跳べ」など命令形で用いることが多いのですが、単に「走る」「飛ぶ」と終止形でも用います。


体言+助詞+用言

 「汗が滴る」は体言「汗」に助詞「が」を加えて修飾語(助詞「が」は主語を表すと言われることが多いです)「汗が」として用言「滴る」の対象を特定します。

 「子どもを預ける」は体言「子ども」に助詞「を」を加えて修飾語「子どもを」として用言「預ける」の対象を特定します。





基本構文2:体言文

体言

 「高橋」「山本」など名前を呼ぶときに用いることが多いですが、感嘆詞・感動詞・間投詞たとえば「ああ」とか「うむ」とかだけでも用いられます。

 人間が初めて発する言葉は「ママ」とか「パパ」とかが多いですが、それも体言文といえます。


用言+体言

 「滴る汗」は体言「汗」に用言「滴る」を付けて体言の様子を説明します。

 体言止めとしてよく用いられる形です。構文次第で倒置法のような使い方もします。

 小説を書いていると、長文でこの形を使うことがよくあります。

 「大空を飛ぶ鳥はトビだろうか」は「大空を飛ぶ」という「体言+助詞+用言」ですが、「飛ぶ鳥」は「用言+体言」です。これはまず用言「飛ぶ」の対象を「大空を」で特定します。そして体言「鳥」に用言「飛ぶ」を付けて体言「鳥」の様子を説明します。さらに「鳥はトビだろうか」は「体言+助詞+用言」です。

 このように「体言+助詞+用言」と「用言+体言」の形をいくつも交えてひとつの文は出来あがります。





体言に付く助詞「の」

 基本的に助詞は用言に付きます。しかし助詞「の」は例外的に体言に付くのです。(他にあるかもしれませんが、今の段階では助詞「の」だけでかまいません)。

★助詞「の」:主に所属・所有・含有を表す助詞です。

 「夜の東京」は体言「東京」を、体言「夜」に限定します。

 「夜の賑わい」は用言「賑わう」の名詞系「賑わい」を体言「夜」に限定します。

 「走るのが好きだ」は用言「走る」を体言化する助詞「の」の力を借りて助詞「が」に接続し、「好きだ」の範囲を限定します。


 このような用言を体言化するために使う「こと」「もの」「とき」「ところ」などの形式名詞があります。「走ることが好きだ」「使うものは頭脳だけだ」「考えるときに腕を組む」「泳ぐところがない」のように使います。

 このうち主に「こと」「もの」の代わりとして助詞「の」は使えます。「走るのが好きだ」「使うのは頭脳だけだ」ですね。これを形式名詞「の」と分類します。


 ちなみに「のが」は助詞「の」と助詞「が」の組み合わさったものですが、助詞「が」の重複とは見ません。あくまでもひとつの助詞「のが」として判断します。

 「足の速い彼女が走るのが当たり前だ」のような文でも助詞は「の」「が」「のが」はすべて別の助詞としてカウントするのです。

 これは用言の体言化機能を持つ助詞「の」の機能を有効に用いるためには必要な考え方です。



 また、助詞「の」はふたつまで連続して使用できます。三連続以上は文意が伝わりづらくなりますので、基本的には用いないようにしてください。

 「夜の東京の真の王者の決定戦」という文があったとします。これ、一読して何のことかわかりづらいですよね。助詞「の」が四連続しています。これを「夜の東京を支配する真の王者の決定戦」とすれば途端に意味がわかるようになります。

 「銀河系の太陽系の第三惑星の地球の日本列島の東京の都庁」と書いてもぱっと見てわかりません。書いてあること自体は事実ですが、それがイコールわかりやすさにはつながっていないのです。

 「裏の畑のポチ」ならわかりやすいですが、「裏の畑の犬のポチ」とするだけでわかりづらくなります。

 この「わかりやすさ」をもたらすものこそ助詞「の」の連続なのです。

 一読してわかるのは二連続までです。三連続以上は一読しただけでは意味を捉えづらくなります。





日本語学習で憶えたいポイント

(1)日本語には用言文と体言文がある。

(2)用言文と体言文は互いを内包できる。

(3)助詞の多くは用言に付くが、助詞「の」は体言に付く。

(4)助詞「の」は用言を体言化する「形式名詞」でもある。

(5)助詞「の」は二連続まで。三連続以上は意味が取りづらくなる。

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