第1話 日本語文法 (1):体言と用言

第1話 日本語文法(1):体言と用言


 正しい日本語を使うためには、体言と用言という概念を理解しなければなりません。

 




体言

 体言とは「自立語の中で概念を表し主語となりうるもの、活用がない語。名詞・代名詞・数詞の類。用言と並んで各品詞よりも上位の概念とされる。」のことを指します。

 たとえば犬、太陽、橋などの一般名詞、富士山、浅草寺、日光東照宮などの固有名詞、あれ、こちらなどの代名詞、そして一番、十人、百様などの数詞が体言とされます。

 これだけでなく用言の体言化も行なえます。

 走るなら「走りは素晴らしい」、泳ぐなら「泳ぎなら誰にも負けない」、美しいなら「傾国の美しさに惹かれる」のように活用で体言化できます。

 また「走り方が」「泳ぐことが」「美しいものが」などのように補助的な形式名詞を使っての体言化もあります。





用言

 用言とは「自立語のうち、活用する語。動詞・形容詞・形容動詞の類。」

 走るなら「走らない・走ります・走る・走る時・走れば・走れ」、

 可愛いなら「可愛くない・可愛く笑う・可愛い・可愛い人・可愛ければ」、

 静かななら「静かでない・静かに走る・静かだ・静かな部屋・静かになれば」

 の活用をします。

 




日本語文法の基本は「体言+用言」

 皆様が自己紹介するとします。

 「私は義統忍」

 この文だけで見れば「私」「義統忍」はともに体言ですので、体言だけで文が成立しているように見えます。

 しかしこの文は本来、

 「私は義統忍です」のように用言の助動詞「だ」「である」「です」が体言「義統忍」に付いていて活用します。

 つまり「名詞文」と呼ばれるものも、助動詞で活用するので用言化しているのです。

 歴史を見ても『枕草子』は「春はあけぼの」と書いていますが「春はあけぼのが素晴らしい」のように動詞が付いているはずなのです。

 純粋な「名詞文」は存在しないのですが、助動詞をとらなければ体言で文章を閉じることもできます。俗に言う「体言止め」ですね。

 「体言止め」のテクニックについては後日述べます。

 ここでは、体言止めであっても実際には用言を省いているだけで、文の機能としては用言を必要とすることだけに言及します。





修飾語

 修飾語とは「文の中で「どんな」「何を」「どのように」「どこで」などいろいろなことを表し、ほかの部分の内容をくわしく説明する部分のことです」  主語でも述語でもない部分が修飾語です。


 体言は助詞で用言に係り受けし、用言は用言がニュアンスを付与するのです

 たとえば、

 「今日は一時間(も)歩いた」

 という文の場合、体言に助詞を加えた「今日は」「一時間も」は、用言「歩いた」に係り受けします。「今日は」は「歩いた」の範囲を限定しますし、「一時間も」も歩いた時間を限定しています。つまり「体言+助詞」は文意を定めるために使用されるので。

 「静かに走る」

 は形容動詞「静かな」が用言である動詞「走る」の動作の様子にニュアンスを付与しています。





日本語学習で憶えたいポイント

(1)「概念を表し活用しない」のが体言であり、「動きによって活用する」のが用言です。

(2)日本語の文は「体言+用言」で出来ている。

 名詞文も実際には助動詞が暗に求められている。俗にいう主語がなくても日本語の文は成立します。その場合でもたいていは隠れているだけで、存在自体はしてます。

(3)英語の翻訳では「私が」が主語として扱われますが、体言のひとつが主語と呼べるかもしれませんが、厳密に言うと日本語には主語はありません。数ある修飾語のひとつに該当するものがある、というだけです。



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