第28話 藪から棒へ ②

 ノックス一行が呆然と立ち尽くす姿を見ながら、ジェイ&アールが笑った。

「いい気味だ」

「あの将軍驚いていやがる」

「これも化物を捕まえようと提案した俺らのおかげだな」

「いや、提案したのは俺だ」

 と後ろからファンが現れる。

「何、こればっかりは俺らだ」

「いや、俺が言った」

「俺らだ」

「先に言ったのは俺だ」

「じゃあいつ言ったか教えろよ!」

 三人がもみ合いを始めようとしたとき、後ろからキャチューが言った。

「オリ―がくるぞ」

 三人の動きがピタリと止まる。オリーがお肉を食べながら笑顔でやってきた。

「あれが将軍か……見ろよ、びっくりしてるぞ。魔物を捕まえてそりを引かせようと提案した俺、ほんと天才だよな」

 三人は顔を見合わす。

「さすがオリ―だ」

「全くそんな発想なかったよ」

 キャチューは頬を緩ませた。


 膝が笑って足が動かないノックスを強制的にそりに乗せ、出発の準備をする。早いに越したことはない。また、選抜した正規兵もそりに乗せ、他の兵はゆっくりと帰らせることにした。一つのそりに二つか三つの大砲を、落ちないようにしっかりと縄で括り付けた。手綱を握るのはダイクの部隊の兵士たち。魔物を操る練習を既に二週間ほど行っていた。最初は魔物の姿に戸惑っていたものの、重量級部隊もすぐに魔物を手名付けたのは流石だ。

 オリーは手綱を引っ張った。寝ていた蛇が、恨んだような目でこちらを見てきた。練習させたとはいえ、これらの化物はあくまで魔物であるので、心を許すことはない。油断すれば、あらぬ方向へそりを引っ張られて絶命してしまうだろう。

 ロチカが言った。

「予定通り、一日半ぶっとうしで走り続けるぞ。何が起きても」

「あぁ」

 頷くオリー。

 全そり準備完了、との知らせが先頭のキャチューに伝わった。キャチューは片手を上げて出発を知らせる。

「行くぞ!」

 獣たちが一斉に走りはじめた。犬もどきは、五匹で力を合わせて力強く地面を駆け始め、蛇は足で一回空中に飛んだ後、地面から一メートルくらい上を滑るように飛び始めた。オリーたちは知る由もないが、蛇そりの乗り心地はさながらランドスピーダーだ。

 将軍の威厳失墜。ノックスは情けない声で悲鳴を上げた。

 二か月かけてえっちらおっちらやってきた道のりを、一日半で終わらせる。


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