第33話 第五の事件! VSウェーバー兄妹!

◾隆臣


 Bの鉄骨骨組み



「テメー! 卑怯だぞッ!」



「卑怯だァ〜? 勝てばいいんだよ勝てば。勝利すれば過程なんてどうでもいい。日本にも『終わり良ければ全て良し』ってことわざがあるだろ? ドイツ語では『Ende gut, alles gut』英語では『All is well that ends well』。まさにそれだ」



 エミールは俺の言葉を真っ向から否定し、



「ジャック、さっさと終わらせるぞ」


「Ja(ヤー)」



 すぐに戦闘態勢に入った。

 ジャックと呼ばれたガイストの女の子はかわいい顔をしているが恐ろしいガイスト能力の持ち主だ。死ぬ気で挑まないとガチで死ぬぞ。

 エースは第九感を発動しジャックの衝撃波攻撃に備える。

 しかしエミールとジャックは超薄型パワードスーツの力で一気に鉄骨骨組みの3段目に飛び乗った。ちくしょうこの機動力は厄介だな。



「みんな行くぞ」



 俺に続いてエース、凛、ジョーカー、ナディアの4人は骨組みの中に入り足場の階段を上がってエミールとジャックを追いかける。

 ジョーカーは足場の足元に放置された3、4本のナットを万有引力を操作してエミールとジャックに向けて次々に発射。

 ジャックは金色の長髪を風に靡かせながら指を鳴らして衝撃波でナットを吹き飛ばす。

 そのとき俺は先ほど入ってきた入口付近に巨大なジュラルミンケースを2つ持った不審な男を目撃した。

 戦闘中で深く考えることもできず俺は工事関係者だろうと推測し気にするのをやめた。

 全員が足場の最上段まで階段で駆け上がったのを見て、



「ジャック、やれ」


「ヤー!」



 エミールはそう言って指を鳴らしジャックは俺たちの足場の足元に衝撃波を放った。

 衝撃波の衝突により足場は下の方から崩壊し始める。



「計算済みだぜ!」



 俺はそう言って大きく跳躍し鉄骨に乗り移り凛の腕を掴む。

 エースは鉄骨の上に分身体を形成してナディアを引き上げる。

 ガイストであるエースとジョーカーは浮遊能力があるためそれを利用して足場の崩壊から抜け出し鉄骨の上に降り立った。



「ちっとはおもしれーじゃねーか」



 エミールはニヤリと笑う。そのツラ二度と笑えなくなるまでボコボコにしてやろうか?

 瞬間、クイーンの能力で辺り一帯の電気が消えた。



「だが……俺もこの程度は予測していたぞッ!」



 エミールは突然振り返り後ろから迫っていた俺の分身体の拳を受け止めた。

 俺らが入って来た方とは逆の入口から潜入させていた分身だ。

 忍び足で接近させていたがエミールは微かな足音や鉄骨に伝わる微かな振動で後ろから迫る分身の存在に気づいていたようだ。



「仕方ない。ジャックそいつらはお前に任せたぞ」



「Ja(ヤー)」



◾ 尚子


 Aの鉄骨骨組み



 ダイヤはつららを放つがクイーンは巧みに拳や蹴り、雷撃でそれらを撃ち落としていく。

 そしてその隙にエミリーが高速移動でダイヤの真後ろへ回り込んだ。

 ダイヤが気づいたときにはすでにエミリーは攻撃の体勢に入っていた。こいつらめちゃくちゃ速い!

 氷の障壁でガードを試みたがエミリーはそれを打ち破りダイヤの側頭部に回し蹴りを入れる。

 ダイヤは吹き飛ばされ地面に仰向けに倒れた。スピードだけじゃない。パワーも強い。



「ダイヤ! 大丈夫か!?」



 クリスが叫ぶ。



「……ぅ」



 ダイヤは立ち上がるが口元には血が伝っていた。

 そのとき、



「あれは……ドローンか?」



 私の声でハート、クリス、ダイヤも空を見上げる。

 そこには十数機のドローンが飛行していた。監視カメラドローンとは大きさも形も全く違う。

 エミリーとクイーンはそれらを見て同時にほほえんだ。



「来たわね。クイーンとりあえずダイヤにトドメをさしちゃって」



 クイーンは電撃を放つために再び周りから電気を奪い始める。

 ドローンはクイーンの能力には干渉されないようでそのまま飛行を続けている。

 一瞬で充分な電力を蓄えたクイーンはダイヤに近づく。



「ッ!」



 だがそのときクイーンの表情が引きつった。



「あ、足が……凍らされて……」



 戸惑うクイーンにクリスは、



「上ばっか見てて足元がお留守だったなァ」



 と。

 クイーンの周りにいくつものつららが形成されていき、



「……くらえ!」



 ダイヤは水のように透き通った瞳でクイーンを睨みつけそれらを発射した。



 ――バリバリバリン



 つららはすべて撃ち砕かれた。いくつかのドローンがクイーンの元にやって来てクイーンの周りのつららを機体下部に取り付けられた銃火器による銃撃で破壊したのだ。



◾隆臣


 Bの鉄骨骨組み



 ジャックは金の髪の毛を風で膨らませ爛々とした金色の瞳で俺たち5人を見下ろしていた。

 俺はナディアと凛を両脇に抱え、



「エースとジョーカーもしっかり捕まってろよ」



 そう言って極限まで強化された身体能力で鉄骨を思い切り蹴り6段目のジャックのいる対辺に向かって跳ぶ。

 その光景にジャックは目を丸くしたがすぐに指を鳴らして衝撃波を放ってきた。

 ナディアはロザリオを翳す。

 ロザリオは衝撃波から放出される莫大な残滓粒子に反応して魔術的障壁を形成。

 俺は反動で体勢を崩し後ろにもつれてしまうがジョーカーの万有引力操作により無事にヤツらと同じ階層の鉄骨に降り立つことができた。



「落ちないように気をつけろよ」



 俺は凛とナディアを鉄骨の上に下ろしてあげた。

 それを見てジャックは複数の衝撃波を放ってくる。



「前方から衝撃波! 全部で3つ!」



 第九感を発動させたエースがそう言うとナディアはロザリオを首から外し頷いてジョーカーに渡した。

 ジョーカーは3つの衝撃波をロザリオの効果で打ち消し万有引力操作を応用して鉄骨の横側面を走ってジャックに近づく。

 ジャックは自身の周囲に衝撃波の結界を形成。それにより鉄骨全体が揺れ俺たちは体勢を崩してしまう。

 凛は鉄骨から足を滑らせ落ちてしまうがすぐにエースは浮遊能力を使って空中で凛を抱きとどめた。

 するとジョーカーは、



「ジャック。そんな結界は無駄だわ!」



 と言ってジャックに突進した。



 ――キーンッ!



 奇妙な甲高い音が響く。



「な、なんで……!」



 ジャックは驚愕の表情を浮かべたがすぐに足に力を込めて上の段の鉄骨に飛び移る。



「こうなったらわたしも! エース! お願い!」


「わかった!」



 エースはジョーカーの身体能力を強化する。

 ジョーカーは両足で鉄骨を蹴って上に向かいジャックを追う。

 ジャックが一番上まで到達したのを見てジョーカーは万有引力を利用して鉄骨に張り付いて様子をうかがう。



「追い詰めたわよ! ジャック!」



 To be continued!⇒

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