第34話 第五の事件! スカイワンダー

◾ジョーカー


 Bの鉄骨骨組み内



 苦悶の表情を浮かべるジャック。

 わたしは足場の下で見つけてベルトの間に挟めておいたボルトを取り出しジャックとの間にはたらく万有引力を強化。

 ボルトは一直線にジャックに向かって飛んでいく。

 瞬間、辺り一帯の灯りが消えた。クイーンが周囲から電力を吸収しているのね。



「見えな――うぐっ!」



 ボルトはジャックの肩を貫通。肩からは血が吹き出した。



「ふふふ、命中っ!」



 わたしは愉快に笑うわ。しかし、



 ――フィィィィィン



 わたしだけでなく下にいる隆臣、凛、エース、ナディアもその音源に目をやる。そこには大量のドローンが彷徨ほうこうしていた。



 ――ババババババ



 そしてドローンは機体下部の銃火器で銃弾を乱射。

 わたしのガイスト能力では銃弾のすべてを防ぎきることはできないわ。

 ならどうするか……逃げる!

 自由落下で銃弾を回避しつつみんなの元に戻った。



「あのドローンは一体?」


「きっとやつらの部下が用意したんだ。さっき男が入口の近くでドデカいジュラルミンケースを置いていったのを目撃した。その中にこのドローンが入っていたんだと思う」



 と、隆臣が答えてくれた。

 入口の方に目を向けるとたしかに開かれたジュラルミンケースが2つ置いてあった。



◾隆臣の分身


 Bの鉄骨骨組み下



 俺は地面に飛び降りる。続いてエミールも地面に降りてきた。



「本体じゃなくて悪かったな。だが安心しろ。本体も分身体もほぼ同じ性能だ」


「そうか。それなら十分に楽しませてくれよッ!」



 エミールは懐から拳銃を取り出し俺の額を狙って引き金を引いた。

 至近距離で放たれた銃弾だったが軌道から頭をずらして被弾を回避する。



「貴様……弾が見えているのか?」



 エミールは眉間にシワを寄せて尋ねてくる。



「見えている……と言ったら?」


「ちッ!」



 エミールは舌打ちをしてもう1丁の拳銃を懐から抜く。そして2丁の拳銃を次々と発砲。

 無駄だ。エースの分割高速演算と最大強化の身体能力さえあればマシンガンでも避けられる。



「そうかそうか……ハハハハハハハハハハ! そうなのか」



 エミールは声高らかに笑い始めた。何がおかしいんだ?



「正直お前とエースを侮っていた」


「エースのガイスト能力は分身を作ったり身体能力を向上させること。そしてエースの第九感は例えるならスーパーコンピューター。他人がエースの頭脳にアクセスして五感から入る情報を超高速で処理解析し最適な行動を割り出すこともできる」


「なるほど。エースの第九感は非常に便利なものだな。だがまあそんなことはもうどうでもいい。お前の残りの寿命を宣告しよう。1分30秒だ」


戯言ざれごとはよせ。ガキじゃあるまい」


「いいや本気だ。俺はあと90秒耐久するだけでお前に勝てる。裏を返せばお前が俺に勝てるのはあと90秒というわけだ。こうしてしゃべっているうちにあと80秒くらいになったかな」


「ほう。面白いことを言うな」


「かかってきな」



 俺は地面を蹴ってエミールに肉薄し拳で殴りかかる。

 エミールは首を傾けてそれをかわし続く2発目もバックステップで避けられた。

 ハイキックは体を反らし、足払いはそのままバク転をして回避されてしまう。

 パワードスーツの筋肉補助だけではこれほどの動きはできないだろう。エミールは元々身体能力がかなり高いらしい。

 俺は地面の砂を蹴り上げて巻き上げエミールの視界を奪った。



「くッ!」



 そしてその隙に顔面に拳を叩き込む。



「グハッ! 今のは効いた。……だがあと50秒だ」


「お前を倒すのに50秒もかからないぜ」



 再び俺はエミールに殴りかかる。エミールはただ避けて俺から距離を取るのみだ。回避一辺倒。



「残り40秒!」



 エミールは懐から拳銃を取り出し再び乱射してくる。しかし先ほど同様俺には命中しない。



「何度やったって結果は変わらない。エースの計算能力を持ってすれば朝飯前とはまさにこのことだ」


「いいんだそれで。俺は時間を待つだけで」



 ―― フィィィィィン



 なんだこの音は……。俺は周りを見渡した。

 ドローン? 監視カメラドローンか? いや大きさも形も違う。

 この工事現場の上空には複数の謎のドローンが徘徊している。



「これはアメリカ陸軍が正式採用している軍用マルチコプター――ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ社製のMQ―39スカイ・ワンダー。高い索敵能力と連携力、攻撃力を併せ持つ。こういうときのために用意していたのだ」



 スカイ・ワンダーが俺の姿を察知すると機体下部の銃火器から大量の銃弾が発射された。

 俺は逸早くその場から移動しスカイ・ワンダーの銃撃を避ける。俺を追ってさらに銃撃が続く。



「クッ!」



 エースの第九感による情報処理は間に合ってはいるがいくら身体能力が強化されているとはいえ被弾しないだけで精一杯だ。

 するとスカイ・ワンダーは俺を取り囲んで今度は銃弾ではなく銃火器の隣に取り付けられた小型ミサイルが発射された。

 俺は高速移動でミサイルの隙間を縫って弾幕から逃れるがミサイルには追尾性能があるようだ。

 俺はこの局面を切り抜ける得策をエースの分割高速演算思考から得た。

 地面に落ちていた石ころを拾ってそれを1番近いミサイル目がけて投擲。

 ミサイルは周囲のミサイルを巻き込んで爆発し、誘爆。誘爆が誘爆を引き起こして全てのミサイルを爆発させた。



「なかなか……やるじゃねーか」



 俺は息を切らして言い地面の石ころを思い切り蹴り飛ばした。石はエミールを左肩を貫通する。



「き、貴様……ッ! だが、一手遅かったな」



 俺はようやく気づいた。



「これは……!」



 俺の体には知らぬ間に透明の糸が何本も巻きついていた。その逆端は上空に浮かぶいくつかのスカイ・ワンダーにある。

 俺はスカイ・ワンダーを引っ張って落とそうする。しかしその糸を伝って小型のミサイルが発射された。



 ――ドーンッ!



「終わったな」



 エミールはそう言い残してBの鉄骨骨組みに戻って行った。



 To be continued!⇒

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る