第31話 この報われぬ『神威』にキャスティングのやり直しの要求を!
ラプラスの世界―――『幻界』。
その世界の一部がこの度、魔界側のこの世界を攻略する為の橋頭堡と成ってしまいました。
そしてここから―――乾いた
「いや―――“
「ニルヴァーナ達ね……では私達はどうしたらいいの。」
「そこの処は私が一任されておりますので、ご心配なくぅ~☆」(ムヒ)
またしても―――の、「二大軍師体制」を執り。
一つは『緋鮮の覇王』率いる者達には魔王軍総参謀長であるベサリウスが就き、シェラザード達がいる集団には『黒キ魔女』であるササラが就く事になったのです。
{*ただ、この砦の攻略に関してベサリウスが関与したのは、この砦の接収を以て3つもの魔界側の軍勢が多方面に亘って侵攻を開始するのだとしたら?}
……と、まあここまでは順調だった―――の、でしたが。
「あんのぉ~~お二人して
「ふ~む……ダメでしゅねッ★」(ムヒw)
「いや―――てか私、一国の女王サマなんだヨ? それをさ、ナニコノアツカイ!! ちょ~~と怒鳴っただけでさ、檻ン中に入れられる~だなんてさ、ちょー考えらんない、ちょー信じらんないンですけどぉ~!」
「いや、シェラ……あなた『ちょっと怒鳴っただけ』じゃないでしょうに―――」
「そうだぞ、あのあと所かまわず蹴飛ばすなどして―――修繕する私の身にもなれ!」
なんとぉ?ここで―――『スゥイルヴァン女王シェラザード』まさかの収監!!?
一体何が原因で檻に入れられてしまったか―――と言うと、「あの不適切発言」直後、腹いせ紛いに砦のあちこちを蹴飛ばしてしまったようで。
その修繕に『“地”の熾天使』が駆り出される事になってしまおうとは……つまり、この砦がこれ以上崩壊されないよう已むを得ず(?)、取り沙汰された手段だったようで……。
{*例の、ベサリウスが『ウリエルさんやら我が主を投入ときゃ陥落』という
「ねえ~~悪かったわよう~~出してよ出して! 私狭いとこ苦手なのぉ~~ついで暗いとこも!! 私もう孤独にされんのイヤなの!されちゃったら情緒不安定なっちゃうの゛!!」
スゥイルヴァン女王シェラザードの唯一の弱点……それがいわゆるところの『閉所暗所恐怖症』のようで、だからこそ檻から出してくれるよう訴えかけたのですが。
出したら出したでどう言った報復行動に出るものか判ったものではなかったので、その要求は聞き入れ―――られ……な……い?
あっ、ちょっと――――
「出せやぁ~~~ゴル゛ァ゛!! 出せや出せや出せや出せや出せや出せや出せや出せや出せや出せや出せやああああ!!」
「あの~~エルフ―――って、こんなに凶暴な生物でしたっけ?」
まさしくの情緒不安定―――先程は処遇への不満を漏らし、次には涙を流し(鼻水も垂らし)ながら醜く懇願し、最終的には檻の鉄格子を“ガタガタ”と激しく揺らしながら顔を真っ赤にし、暴れ出す始末。
そうした様々な表情を見るにつけ、『幻界』出身のクローディアも、『幻界』にもいるエルフと言う種属と比較して困惑気味だったようです。
* * * * * * * * * *
その一方、
一般的に拠点と拠点とを結ぶ線を「兵站線」と言い、この経路を通じて兵や物資等の補給を充実させていくのです。
では、この線が断たれたなら……孤立した拠点はどうなるのか、それは言わずもがな、備蓄していた物資が尽きればいくら精強な兵とて弱くなる。
ではなぜこの拠点がそうした状況に陥っているのか。
今、ある拠点から出発した輸送隊が昼夜を徹して物資を運び、あと少しで目的の拠点に……とした処、どうしても通らなければならない林道に差し掛かった辺りで―――
フフフ……
ククク……
ヒヒヒ……
ヒャヒャヒャ……
カカカカカ……
「お―――おい、な、何なんだ?」
「薄気味悪い……」
「あ…あ、あ―――あの噂は本当だったんだ!」
「は?何だ、『あの噂』って!」
その「噂」とは、ここ一週間でラプラスの間に広まったものでした。
その最初は、この輸送隊も物資を運んでいる目的の拠点に物資を運ぶ―――そうした時に、やはり同じ地点……例え日中でも薄仄の暗い林の中で行方を眩ませてしまった。
故にこそ必要な物資は行き渡ることはなく、その後の再三・再四に亘って補給を要請するものの、その悉くがその拠点に届く事はなかったのです。
そうした事にラプラスも原因を突き止める為にと囮部隊を編制して解明しようとするものの、逆に軽くあしらわれる始末。
『逆に軽くあしらわれる始末』……?!
その林の中に原因となっているものがなければ、「あしらわれる」と言う事もないはず―――だから「ある噂」が立ってしまったのです。
『姿の見えない何者かが物資を奪っている』……。
しかもその土地柄は、
そして今、輸送隊の耳に聞こえていたのは、まさしくの恨みがましい怨念の籠ったモノ―――
ではなくて、“シン”と静まり返った薄暗い空間の中で、上に下に右に左に響き渡る―――≪忍法:木霊≫……???
人は皆―――精神的に不安定になると、普段では何でもないようなモノが、見えてはならないモノに見えたり聞こえたりすると言う……
おいてけえ~―――
おいてけえ~~~―――
お前達が持っている食い物……
全部おいてけえぇぇ~~~―――……
よく視てみれば、青白い炎が宙を舞い、仄かに照らされた女の―――幽…………霊??!
その女の幽霊が不気味に嗤い、手招きをしている―――
噂が「噂」ではなくなった瞬間、思いの様肝を潰した輸送隊は腰も砕け砕けになり、まさに
* * * * * * * * * *
その後―――?
「(ム~~~)あの―――ひとつ言いたい事があるのですが……」
「何ですかい、『神威』。」
「配役のやり直しを要求しますっ!」
「(配役……)いやホホヅキ雰囲気ありますし―――」
「あのっ、雰囲気と言われても幽霊役はあんまりだと思いませんか?!」
「(あ゛~~)まあ……婦女子にやらせる役じゃないよねぇ。」
「でしょう?でしょう?ホラぁ~~~」
「いや、だから私が≪忍法:朧霞≫を併用させて『やってもいいですよ』と言ったのに、リリアから『お前は可愛すぎるからダメだ』とか言う訳の分からない事を言われてしまって……。」
「『座敷童』なら適役なんだけれどね~~w」
「ホホヅキがイヤだと言うのなら、次からは私が代わりをしても構わんぞ?」
「「「「いや、逆にあんたはリアル過ぎるからダメ。」」」」
そう、この林にて補給の阻害・阻止をしていた存在こそヴァーミリオン一行だったのです。
つまりはノエルの≪忍法≫―――周囲に音声を反響させる『木霊』や、薄暗い環境の中で更に不安に陥れさせる『朧霞』、そして極めつけは幽霊に扮したホホヅキの演技―――
{*と言うより、ホホヅキのは最早「演技」ではなく、寧ろ「地」。 薄暗い場所で青白い炎に“ボウ”と照らされ浮かび上がった、烏の濡れ羽色の長髪をした
しかしながら年頃の女性にやらせるような役柄ではない―――とはしたものの、ホホヅキのそうした心情に同情してしまったヴァーミリオンが、『ならば私が』と手を挙げはするのでしたが……。
実はヴァーミリオンこそは正真正銘の幽霊なので、そこは逆にリアルに怖すぎるからと
{*ちなみに、そのショックのあまりに、このあと4日は立ち直れなかったと言う。 そうした面では乙女な一面を見せるニルさんなのでした。}
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