24

朽ちた教会

オルガ、同志、被害者たちが輪になって座っている。

アーサー、マリア、ポーラが登場。アーサーは教会の扉を開ける。


アーサー「どうぞ中へ」


マリア、ポーラ、アーサーが朽ちた教会へ入る。

オルガは三人に気づき駆け付ける。

同志と被害者たとは色めき立ってマリアのもとに駆け付ける。


オルガ「アーサー、無事でなによりだ。マリア! 君を待ち侘びていた。私の名はオルガだ。女性の人権を求める活動家の指導者だ。よろしく」


オルガはマリアの手を固く握った。


オルガ「こちらの方は」

ポーラ「ポーラです。マリアの親友。よろしく、オルガ」

オルガ「こちらこそ、ポーラ。心強い味方が増えた。快く君たちを迎え入れよう。さあ、奥へ」


オルガは三人を手招きして朽ちた教会の奥へと案内する。


オルガ「長旅で疲れているのは重々承知なのだが、早速本題に入りたい。こちらに腰を掛けてくれ」


マリア、ポーラ、アーサーは椅子に腰を掛ける。


オルガ「すでにアーサーから私のことは聴いていると思うが、改めて自己紹介を願う。私の名はオルガ、女性の人権を求める活動家の指導者をしている。今ここには同志たちと性暴力の被害者たちがいる。主に抗議活動と被害者たちの保護と支援を行っている。私が、マリア、君にお願いしたいことは一つ。再び法廷に立ちマリアの話を訴えてほしい。幾度となく話してきたことをまた一から話すのは辛いことだし、司祭と対峙する苦痛も計り知れないだろう。その点は最大限配慮する。私のお願いはそれだけだ」

アーサー「裁判をやり直して勝算はあるのでしょうか」

オルガ「それには、アーサー、君の助けも必要となる。マリアの証言を裏付ける証人として法廷に立ってほしい。私もマリアの弁護人として法廷に立つつもりだ」

マリア「……ところで、どうやって裁判をやり直すのですか。七年前に判決は下されてしまった。やり直しを求めても絶対に相手になんかされるはずがない」

オルガ「おっしゃる通り、単にやり直しを求めても無駄に終わることは目に見えている。だから民衆の力を利用し混乱を巻き起こす。これを見てほしい」


オルガは印刷物をマリア、ポーラ、アーサーに渡す。

マリア、ポーラ、アーサーは印刷物に目を通す。


ポーラ「これは一体どういうこと? 暴力で解決しろってこと? マリアを危険な目に会わせるわけにはいかない」

オルガ「この紙一枚だけではこの作戦の真価はない。町中に届けることで力を発揮する。たいていの男たちが持っている誤った考えを利用し、大衆を裁判のやり直しへと誘導する。ポーラの言う通り危険を伴うが、成功すれば大きなうねりとなり事態は一変するだろう。すでに手筈を整えてある。来るべき日のために多くの人々と対話を重ねてきた」

マリア「本当に思惑通りいくのでしょうか」

オルガ「実行に移し、私が民衆を扇動する」

アーサー「その役目は私が……私が民衆を扇動します! マリアのために戦うと誓ったのです。私にやらせてください。今がその時なのです」

オルガ「危険を伴う。失敗すればなにをされるかもわからん。アーサー、それでもやると言うのか」

アーサー「活動家のあなたは町中に顔が割れています。私が扇動した方が怪しまれずに済みます。覚悟もできております」

オルガ「そうか、恩に着る、アーサー」

マリア「アーサー、無理はしないでください」

アーサー「マリア、心配なさらずに。私は必ずや成し遂げてみせます」

オルガ「作戦の決行は明日の朝だ。明日のためにゆっくり休んでくれ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る