16

修道院の墓地 夜中

アーサーは墓地の前でひざまずいている。


アーサー「ああ……お許しください。私のせいでマリアまでもが帰らぬ人となってしまった。私はなんと無力で臆病者なのか。司祭様の悪事を知りながら見て見ぬふりをしてきました。私は……私はなんと罪深い人間なのだ」


アネット修道女の亡霊、クロエ修道女の亡霊、マリー修道女の亡霊登場。


アネットの亡霊「アーサー、顔を上げなさい」

アーサー「そんな! アネット! クロエにマリーも! なぜだ、君たちは死んだはずでは……そうか、私を呪い殺しに来たのだな。それも仕方あるまい。司祭様の悪事を黙認したのだから……さあ、早く呪い殺してくれ。この苦痛から解放してくれ」

クロエの亡霊「呪い殺すために現れたのではありません、アーサー」

マリーの亡霊「マリアのことであなたの前に現れたのです。彼女も私たちとおなじ司祭の被害者。マリアを助けるのです」

アーサー「しかし、マリアが失踪してから七年の月日が流れました。噂もとうに途絶え、もう死んでしまったに違いありません」

アネットの亡霊「いいえ、マリアは生きています」

アーサー「本当ですか! でも、なぜ生きていると言い切れるのですか」

クロエの亡霊「マリアの魂はまだこちらへ来てはいません。まだ生きているのです」

マリーの亡霊「マリアは南にそびえる山々を超えた町にいます」

アネットの亡霊「マリアの心身は限界を超えています。このままでは長くはもたないでしょう。アーサー、あなたの力が必要なのです」

アーサー「……私には……できません。無力な私にできることなどないのです」

クロエの亡霊「アーサー、あなたは必ずや成し遂げます。自分を信じて。あなたはひとりではない。力を貸してくれる人々が現れるのです。これはあなたの試練であり運命なのです」

マリーの亡霊「マリアは勇気を振り絞り声を上げました。小さな小さな声を。私たちにはできなかったことを命して行ったのです。しかし、その声を司祭はもみ消した。しかし希望のともしびは今もまだ消えてはいません。小さくも力強く燃えています。マリアを助け再び声を上げるのです」

アネットの亡霊「そして、司祭の罪を白日の下にさらし、正当な裁きを下すのです。マリアを救い、私たちの魂に安らかな眠りを。未来のために頼みますよ、アーサー」

クロエの亡霊「まずは南へ進みなさい。朽ちた教会であなたを待っています」


アネット修道女の亡霊、クロエ修道女の亡霊、マリー修道女の亡霊退場。


アーサー「待ってくれ!」


アーサーは悩む。


アーサー「マリア……私は今までずっと逃げていました。でも、もう逃げません。決心がつきました。私は戦います」

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