14

ポーラの家(納屋なや

ポーラはマリアの手を引いて登場。家の中へと案内する。


ポーラ「ここが私の家。と言っても納屋なやにこっそり住んでるだけなんだけど。二階が寝室。干し草のベッド。来て」


ポーラとマリアははしごで二階に上がる。

ポーラは干し草のベッドに横になる。

マリアは干し草のベッドに腰を掛ける。


ポーラ「そういえば、まだ名前を聞いてなかった。私はポーラ。あなたは」

マリア「……マリア」

ポーラ「マリア、素敵な名前。よろしくね。さっきは本当にありがとう。命がけで助けてくれ。マリアが助けてくれなかったら、私襲われて殺されてたかも……」

マリア「……あの人は誰」

ポーラ「知り合い。たまに一緒になって盗みを働いていた仲。それだけ。まさか強姦されそうになるなんて思ってもみなかった。……ねえ、マリア、私と一緒に暮らさない。結構いいコンビになれると思うんだけど、どうかな」

マリア「……」

ポーラ「急にごめんね……マリアは……この町に用があって? ここらじゃ見かけない顔だけど」

マリア「……うん。修道女だった……だった? いえ、今も修道女のはず。なにもかも奪われてしまった」

ポーラ「ああ……あまり詮索しない方がよかったかな、ごめんね」

マリア「……私……司祭に強姦された、眠らされて。修道院から逃げて訴えたけど、逆にののしられ無実の罪を着せられて処刑されそうになった。だから、ここまで逃げてきた」

ポーラ「……ごめんね、辛いこと思い出させちゃって……今日はもう遅いし、寝よっか。おやすみ、マリア」

マリア「……おやすみなさい、ポーラ」


小一時間後。


ポーラ「マリア……起きてる」

マリア「うん。起きてる。寝付けない」

ポーラ「私も。怖くて眠れない」

マリア「まだ、心臓がどきどきしている」

ポーラ「マリア……私、この町を離れようかと思ってるの。あの男がいつか復讐してくるんじゃないかと思うと、町にいるだけで怖い。明日、発つつもり。今さっき決めた。マリアも私と一緒に来ない? ひとりじゃ心細いし寂しいし。どうかな、どこか遠くへ行ってふたりで静かに暮らす」

マリア「……うん。いいよ。ポーラについていく。追われている身だし……どこにも私の居場所なんてないし」

ポーラ「どんなところに住んでみたい」

マリア「山が見える所かな……きれいな山が見える所がいい。よく窓から眺めてた……」

ポーラ「素敵。……はあ、もう二度とこの町に戻ることはないのかな。どうして私たちが去っていかないといけないんだろう。なにも悪くないのにね」

マリア「悔しい……」


マリアは泣き始める。

ポーラは優しくマリアを抱きしめる。

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