12

森の中。

マリアが登場。


兵士1(男)「あっちに人影が見えたぞ!」

兵士2(男)「急げ、見失う前に捕まえろ!」


マリアは身を隠す。

兵士(男)ふたりが登場。


兵士2(男)「どこに行った。見当たらない」

兵士1(男)「探せ! そう遠くへは行っていないはずだ。どこかに隠れているかもな」

兵士2(男)「はあ、もう疲れた。少し休もう。今朝から歩きっぱなしだ」

兵士1(男)「そうだな。他の奴らにばれないよう、少し休むとするか」


兵士(男)ふたりは地面に座り込む。


兵士2(男)「全く、なんで俺たちが司祭の野郎のために働かなければならないんだ。あいつの噂はお前も知っているだろ」

兵士1(男)「所詮、噂だろ」

兵士2(男)「お前は世間知らずだな。あの司祭は好みの孤児を引き取って世話して犯すんだ。たっぷりと恩を着せて抵抗できないように仕向ける。とんだ糞野郎だ。反吐が出る」

兵士1(男)「お前はそんな根も葉もないことを信じているのか馬鹿馬鹿しい。世間知らずはお前の方だろう。百歩譲って司祭がそんな下劣な野郎だったとしたら、孤児たちは修道院から逃げ出すはずだ。だが、誰もそんなことはしていない。つまり噂はでたらめだ。そんなことがあるはずがない」

兵士2(男)「じゃあ、あの女はどうなるんだ。修道院から逃げ出し、牢屋からも逃げ出した。司祭に強姦されたと言ったんだ。それが何よりの証拠だ。噂は本当だ」

兵士1(男)「あの女は気が触れている。だから裁判で有罪が決まった。それが全てだ。司祭は無実、これが現実だ」

兵士2(男)「いいや、司祭と裁判官は腐れ縁だ。裏で繋がっているはずさ。裁判官が司祭の不祥事をもみ消しているんだ。あの女はめられたんだよ」

兵士3(男)「おーい! こっちで物音がしたぞ!」(声のみ)

兵士1「休憩は終わりだ。行くぞ」

兵士2(男)「はいはい」


兵士(男)ふたりは立ち上がって退場。

マリアが姿を現す。マリアは声を押し殺して泣き崩れる。

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