9話/探索編⑤:ダンジョンギミックはボスバトルのあとで
○狂PLの屠殺場
GM:剥ぎ取りの時間です。
エッシェン:ダイスの女神に愛されてる人ー?
カイル:運命に愛されてる人ー。
GM:今日はもう運命変転使っちゃったね。
ヴェロニカ:こんなところで……。
イーリス:ここは平等にジャンケンで決めよう。勝った人が剥ぎ取り。
一同:ジャイケンショイ!
エッシェン:ゴブリン担当(ころころ)9。30ガメルか。……うぇ〜手がゴブリン臭いでち。
ヴェロニカ:ボルグ担当(ころころ)9。
GM:ボルグは7以上で最大のやつですね。150ガメル相当の意匠を凝らした武器がドロップしました。
カイル:良いじゃないですか。
エッシェン:やるでちねヴェロニカ!
ヴェロニカ:きったないのを捌いた甲斐がありましたわ。
エッシェン:ボルグ臭いでちよ〜!
PL達の剥ぎ取りイメージが、血に塗れながら鹿とか猪とかを解体する猟師スタイルになっている。
人型系の蛮族を剥ぎ取る場合、衣服など探って金目の物を漁るイメージでいたGMだったが、このPL達は想像以上に蛮族脳だったようだ。
蛮族ダイアリーに副題を変更すべきだろうか。
GM:ちなみにボルグですが、星型の鍵を持っています。どうやら先程皆が開けられなかった魔法の鍵の扉のようですね。
GM、もう頭がふにゃふにゃで扉と鍵を言い間違える。そしてここにいるPLはそんな隙を見せたら放っておかない。
ヴェロニカ:……ん? 鍵を開けるための扉ですの?
エッシェン:よーし皆、鍵を開けるために扉持って来いよー!(レンタルルームの扉を外しに行こうとする)
GM:ユルシテ。
一同:(笑)
○星を掴む迷宮
GM:蛮族を倒したことで、改めてこの部屋を探索出来ます。部屋の形状は皆さんの想像通り、二階も一階と同じく星型になっています。
GMは残りのタイルを配置する。
カイル:星の迷宮だ。
GM:中央の床には魔法陣がある。直径5~10mほどの白く色褪せた魔法陣が描かれている。……公差ガバガバやな。
イーリス:この世界はドラゴンがいるくらいだから、大物建築の公差範囲も大きいんだろうね。
GM:そんな魔法陣以外には、南から西にかけて突き当りに三つの壁があり、その手前にそれぞれ1枚ずつの石板が立っている。
ヴェロニカ:早速見に行きますわ。
スヴェン:手分けして調べよう。
カイル:わかりました。
GM:石板の文字は南、南西、西の三方にそれぞれ、以下のように書いてある。
南 ときに離れ
南西 ときに思い
西 ときに帰る
PL達、必死にメモを取る。
エッシェン:何のことでちかね。
スヴェン:フム……とりあえず魔法陣を見てみます。
GM:星をモチーフにした柄だ。上に乗って呪文を唱えると起動するタイプだろうが、その呪文が分からない。
エッシェン:さぁ宝探しでち。
イーリス:真ん中の魔法陣、例の本に書いてあったものだな。
スヴェン:この魔法陣の中にお宝が?
エッシェン:高いところでち。皆覚えてないでちか? そう言ってカイルの肩に登ります。
GM:お! ならばエッシェン……でもいいし、別の誰か探索判定(観察)をやってみましょうか。
カイル:肩にエッシェンが乗っているので僕がやります。(ころころ)8!
GM:ではカイル君。魔法陣の頭上の天井を見上げると、「交易共通語」で「そこはどこ?」と書いてあることに気付きます。
エッシェン:知らん。
GM:魔法陣の呪文……つまりはキーワードを推測する流れですね。
スヴェン:じゃあ人の顔に戻るわ。
イーリス:本の内容をもう一度読み返してみよう。
・神々が戦っていた時代、その激しさに天の星たちは逃げ惑い、そのうちのひとつがこの地に落ち、砕けた。星の砂からは特殊な力を持つ人族が生まれた。星々と交信し、運勢を占うことのできる一族、それが我々だ。
・星の一族は太古からこの遺跡周辺に住んでいたが、200年ほど前に蛮族の襲来を受けた。星詠みの力により、村人の半数は生き延び、森へ移住できた。
・最後はこう締めくくられている。「しかし我々の子孫は200年ののちに、またこの地に戻ってくることになるだろう。未来の世界を担う、新世代の冒険者の手によって。その時のために、我々の魂の起源にして秘宝である“それ”を、魔法陣によって隠すことにする――」
それ以上は染みや破れで読めない。
イーリス:あとメモも見返してみよう。
エッシェン:さあみんな考えるでち。
読者諸君も考えてみよう!
スヴェン:(思いっきり考え込んでいる)
イーリス:ふむふむ……最初の入り口にあった「■の落ちた地」、これは「星の落ちた地」ってことか。
エッシェン:そうでちよ。ちなみにこのキーワード、僕にはさっぱりでち。リアルなぞなぞはやめるでち。
カイル:隠れているのは秘宝か。
エッシェン:金の匂いがするでち。
ヴェロニカ:するわね。
イーリス:天井には「そこはどこ?」って書いてあるんよな。
ヴェロニカ:「そこはどこ?」 知らんがな!(半ギレ)
GM:ついでに石板の文字、「ときに離れ」「ときに思い」「ときに帰る」も組み合わせて考えると良いでしょう。
イーリス:「ときに思い」がわからーん。
ヴェロニカ:帰りたいなぁ……ってこと?
イーリス:『故郷』?
GM:その瞬間。天井の一部分がゴゴゴ……とシャッターのようにスライドして、天井に円形の穴が開く。どうやら正解を引いたようだ!
ヴェロニカ:トンデモギミックですわ!
GM:現在は日が落ちて夜の頃合いだ。満点の星空が美しい――と思ったとたん、遺跡を構成していた砂たちが、まるで星空を写したかのように美しく輝き出す!
言うなり、GMは2階のダンジョンタイルの表裏をひっくり返す!
イーリス:は?
エッシェン:おおー!
ヴェロニカ:カッコイー!! めっちゃカッコイイー!
スヴェン:“映え”ですやん。
カイル:良く出来てるなあ。
そこにあるのは、魔法陣を中心とした小さな銀河だ。漆黒の水面に浮かぶのは、幾つもの輝く星々。
これまでPL達にマップの裏面が見えないように手早く配置していたお陰で、この演出は完全に彼らの虚を突くことが出来た。
オフラインセッションだからこそ出来る、小物を活かしたギミック。こればかりは実際に体験してみると病みつきになってしまう。
GM:このギミックをやりたいがために俺は皆をこのTRPGに誘ったね!
ヴェロニカ:美しい銀河ですわ……。
GM:さて、この遺跡を構成している砂ですが、宝物鑑定判定(観察か知識)で調べていいですよ。
エッシェン:(ころころ)13でち。
GM:この光を君は知っている。はるか昔、神々が戦争をしていた時代には、その絶大な力を恐れた星たちが逃げまどい、地上に落ちたという。今もどこかの土地には、その星の砂が混入しており、夜な夜な、天の星明かりを受けると共鳴するように輝くという。
一同:おおー……!
GM:なお、この〈星の砂〉はひとすくいで100ガメルほどになる、貴重なものだ。
スヴェン:やったぜ!
感動だけではなく、実利もある。それは冒険者にとっては大変有り難いことだ。
エッシェン:もっ――と寄越せでち! スコップ一杯だけとかケチなことするでちね!
こいつを除いては。
エッシェン:何回も往復すればいいでちか!?
GM:この魔法アイテムのスコップは賢いからねえ、「お前ら一回取ったやろ」って判断して無効になる。
エッシェン:要するに下で取れた砂の由来がわかるってことでちね。……ゴブリン共の装備の方が価値高いでちね……。ま、綺麗だからいいんじゃないでちかぁ?
イーリス:文句言ってるのはお前だけだ!(笑)
ヴェロニカ:文句言ってるのお前だけ!!
スヴェン:全て一人で言ってる(笑)。
GM:というわけで、ダンジョンギミックも全て解き明かしたので、後は荷物を拾い拾い村に帰るだけですね。島に帰ろう……。
カイル:君は知るだろう……。
ギルドに報告するまでが冒険だということを。
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