8話/探索編④:YAH-YAH-YAH

○ゴールデンな毛のアイツ

GM:眼前に立ち塞がるのは、青い肌を持つ筋骨隆々で大柄の蛮族だった。全体的に白い体毛に覆われていたが、胸毛の一部が金色に染まっている。迫力のある個体だ。きっと親玉に違いないだろう。


 GMは魔物カードを提示する。


カイル:イラストでは白い毛だけなんだ。


GM:ということは……?


エッシェン:特殊個体でち。


ヴェロニカ:そのうち全身の毛が金色になってビーム撃ってくる!?


イーリス:角折らな。


スヴェン:後ろに来られたらヤバそう。


GM:ちなみにその蛮族は何事かを叫んでいますが……おっと、このメンバーだと誰も理解出来ない言語でした。


エッシェン:交易共通語で言ってくれでち。


ヴェロニカ:訳の分からない言葉を話す者バルバロイ


 今回使わなかったPCが対応する言語の会話を持っていたのだが、ランダムにシャッフルした際に選外となっていた。気になった君は、是非スタートセットを購入して、自分の目で確かめてくれ!


 さて、こうなっては、もはや言葉は不要。肉体言語で語り合うのみだ。


GM:さて、他に出てくる蛮族は……オトモゴブリンが1体ですね。少ないから増やしとこ。(強い視線を受け)あ、ダメ? はい。じゃあ強そうなオーラを放っている金毛ゴリラ風の蛮族にマモチキして下さい。


ヴェロニカ:マモチキ? 揚げ物?


イーリス:魔物知識判定のことだな。


エッシェン:僕が知らないわけないでち。(ころころ)あ、知らんわ。8。


GM:……知名度は抜けました! 魔物カードの裏面を見ていいですよ。


エッシェン:あの魔物はボルグというでち。……やばいでちね。こいつ痛恨撃とか持ってるでちよ。打撃点が出目10以上なら4点追加でダメージが乗るでち。気を付けるでちよ皆。


スヴェン:初期配置どうする?


エッシェン:皆最初は後衛にいてくれでち。ちょっとやりたいことがあるでち。


カイル:珍しくエッシェンがやる気を出した。


エッシェン:スパークをぶちかましたいでち。これは射程2、対象1エリアで対象5体までの範囲攻撃だから、皆が前にいると巻き込んでしまうでち。


GM:なるほど、今しか撃てないですね。では魔法が発動出来たか魔法行使判定を。


エッシェン:MP6消費して……(ころころ)15!


GM:魔法は発動しました。ではボルグとゴブリンが魔法に抵抗出来たかを判定します。といってもゴブリンは固定値なので抵抗失敗。ボルグは……(ころころ)出目がカス! 通ります。


ヴェロニカ:もし抵抗していたら?


GM:その場合、呪文によってはダメージが半減されたり、効果が消滅したりします。


ヴェロニカ:生意気ですわ!


GM:ではエッシェン、威力表を一括で振ってください。


 ここでいう一括振りというのは、複数を対象とする魔法攻撃などで、全てのダメージを一回で決めるというものだ。

 これも時短テクニックの一つなので、卓によって採用したりしなかったりする。詳しくはその時のGMに聞いてみると良いだろう。


エッシェン:(ころころ)惜しい、クリティカルしなかった。なので8点ダメージでちね。あとゴブリンは弱点を見抜いているので魔法ダメージが+2点されて10点でち!


GM:おおー、初手からエグいダメージ出すなあ。ゴブリンなんて既に半分以上削れたぞ。


 戦闘が始まってしばらくの間、GMはゴブリンをもう少し多めに出しておけば良かったと思っていた。だが、どちらにせよこのスパークでこんがり焼き上げられていただろう。


エッシェン:さ、後は皆好きなようにやるでち(一仕事終えた顔)。


GM:ただねえ、このボルグはボスなのでちょっと強いんですよ。ちょっとシナリオブックのページを確認しますね。


エッシェン:剣の欠片持ちでちね。


ヴェロニカ:なにそれ?


エッシェン:それがあるとHPとかが強化されるでち。後付けでボスっぽいデータに出来る仕組みでちね。


GM:……と思ったらこのボルグ、欠片入ってない……かな。


イーリス:初心者用のセットだから簡単難易度なんだな。


 ここで剣の欠片を生やしても良かったのだが、後から言うとフェアじゃないので今回はナシという判断に。

 そもそも今回の戦闘では、寝ていたゴブリンをスルーしたり見逃したりしていると、ここに合流している手筈になっていた。その展開だった場合、適性なバランスだっただろう。


イーリス:なら次行かせてもらおうかな。まだ皆後衛にいるし、エネルギーボルトを撃とうかと。


GM:よっしゃ来い!


イーリス:まずは補助動作で[異貌]を使います。それから主動作でエネルギーボルトを。(ころ)(ころころ)ボルグに13!


GM:ではボルグが抵抗を(ころころ)10でしたので、抵抗抜かれましたね。威力決定デース。


イーリス:MP5減らして……(ころころ)クリティカルだ! (ころころ)ファンブル……。


 ダイスの出目の乱高下が激しいイーリス。威力決定でクリティカルしてからファンブルした場合、追加ダメージ分だけ帳消しとなる。


GM:はい、ファンブルチップを進呈します。


イーリス:チップには「失敗ではない、上手く行かない方法を学んだのだ」って書いてました。ダメージは5点です。


GM:残り10ですね。


カイル:楽勝ですね


エッシェン:もう胡坐かいてるから。


GM:ボルグに手番回したらボコボコにしてやる……!


エッシェン:さあサクサク行動するでち。


ヴェロニカ:殺る殺る殺る殺る!(挙手)


カイル:何をする? 素直に殴ってもいいんじゃない?


エッシェン:神聖魔法は?


ヴェロニカ:レベル2まで使えますわ。うーん……(魔法カードと睨めっこして考えている)微妙。


GM:これから前線に出るであろう前衛のために、フィールド・プロテクションを唱えておくのもいいですよ。受けるダメージを-1するので。


イーリス:確かに、前にカイルが出た時点でこちらもエネルギー・ボルトを誤射する可能性が出てくるから、次からは前衛になる。なので貰えると助かる。


ヴェロニカ:あー、そうね。


GM:二人は殴りに行く人だね。


ヴェロニカ:今から一緒に♪


エッシェン:これから一緒に♪


 突然チャゲアスの歌をデュエットし始めるヴェロニカとエッシェン。――ノリノリだな貴様ら! ちなみにあの曲、25年くらい前に出たという事実にちょっと愕然とする。


ヴェロニカ:しかもフィールド・プロテクションは対象5体までだから味方全員にかかる。(ころころ)9で成功。良かった~。


スヴェン:じゃあ次射るわ。どっち先殺したい?


イーリス:痛恨撃が脅威だし、ボルグでいいんじゃないか?


スヴェン:ではボルグに向けて(ころころ)14。


GM:ボルグの回避は(ころころ)10。当たる! 威力を。


スヴェン:(ころころ)9!


GM:ボルグの防護点は3点あるので6点通ります。


エッシェン:おっ、虫の息。


カイル:こ・れ・で! 主人公が一発殴って終わりですよ! 前に出て攻撃します! 戦闘特技は使わず素殴りで。(ころころ)クリティカル!


GM:この場合絶対命中します。威力どうぞー。


カイル:行きまーす! 一本振り打法で……せいっ(ころころ)13点!


イーリス:オーバーキル!


GM:HPが-6でボルグはどうと倒れました。脇でそれを見ていたゴブリンが「はわわわ」となっています。


一同:(笑)


GM:さて、ゴブリンの番ですが、前にいるのはカイル君のみですんで、カイル君に破れかぶれの攻撃です。こいつは命乞いしてもダメだろうなと薄々感じ取っているのでしょう。命中は10ですので回避をお願いします。


カイル:10以上を出せばいいんだね。(ころころ)9! 1タリナイ……。


GM:ゴブリンのダメージは(ころころ)5点。弱い。


エッシェン:もう士気がメタメタやから。


イーリス:「ふぇぇぇ……」ってふにゃふにゃになってるよ。


カイル:1点通った。イテッ!


ヴェロニカ:ショボッ。


GM:今度は皆さんの番でーす。


カイル:好きなだけ殴っていいの?


イーリス:そのままカイルが追撃したらいいんじゃない?


カイル:どうせ前線にいるしね。あとちょっと痛かったし……。


スヴェン:ムカついてる(笑)。


カイル:(ころころ)命中10。


GM:ン!? 同値回避ですね。


カイル:……ここで運命変転を使います。


 運命変転とは! それは人間だけが持つ特殊な能力だ。1日に1回だけ、ダイスの出目を上下ひっくり返すことができるというものだ。つまり元の出目が低いほど、裏側にある数値は大きくなる……という逆転要素なのだ。


ヴェロニカ:こんなショボイところで!?


エッシェン:「避けやがったなコイツ……?」みたいな。


カイル:なので命中は12!


GM:威力決定をお願いしまーす。


カイル:(ころころ)14のダメージを与えます。


GM:そんなに!? ではゴブリンもHP-6ですねー。


エッシェン:よほどイラついたんでちね。


 運命を切り開き、ゴブリンを倒したカイル。その表情は、どこか満足気だったという……。

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