6話/探索編②:はじめてのせんとう

〇戦のジカンダ!

GM:戦闘に入る際にまずやること。戦闘準備です。剣を抜くなど、簡単な準備をします。たいまつを持っている人は、それを近場に落とし、武器に持ち替え可能です。落としたたいまつは、本セットでは同じ部屋にいる限り光源として利用出来まーす。


カイル・イーリス・エッシェン:ぽいっ。


GM:次、魔物知識判定。今回は既に見抜いているのでスキップします。


GM:その次、先制判定。先攻後攻を決定するために先制判定を行います。技能として用いるのはスカウトの運動です。ではいつもの二人、ダイスを振ってみましょう。


カイル:(もごもご)カイルは今アイスを食べている。


GM:余裕だなあ。


エッシェン:エッシェンもパクパク食ってるから。


ヴェロニカ:かわいいな二人とも。


 デザートに各々パフェやアイスなどを注文していた。TRPGは熱中するとあっという間に時間が過ぎてしまうので、思考を鈍らせないためにも適度な糖分摂取が重要だ。

 なおGMは腹が膨れるとすぐ眠くなるため、セッション中は極力食事を抜くタイプ。そのため後半になるにつれて糖分が足りなくなってポカが多くなる。

 セッション時間が12時間を超えた辺りで謎の存在を登場させ、あとで正体をネタバラシして恐怖に陥れるシーンを予定していたはずが、つい誤って「そこにゾンビがいますね」と登場させた失態は今でも忘れ難い。


カイル:(ころころ)10です。


スヴェン:(ころころ)14!


GM:スヴェンが先攻をもぎ取りました。


GM:先攻後攻が決まったので、戦力の初期配置を行います。ここに戦場があります。真ん中が「前線エリア」。皆さんの側が「自軍後方エリア」。「前線エリア」を挟んで反対側が「敵軍後方エリア」です。


GM:先攻が取れた場合は、「前線エリア」もしくは「自軍後方エリア」の好きな方に自分のキャラクターを配置出来ます。


一同:ふんふん。


エッシェン:僕はエンチャントウェポンっていう攻撃バフ呪文を持っているでち。でも相手はたかがゴブリン1体でち。それにまだ入り口の大きな足跡の蛮族が控えているでち。つまりここでは僕の出る出番ないでち。――後方エリアに待機します。


スヴェン:俺は弓があるから後方エリアだな。≪ターゲッティング≫があるから味方に誤射もしない。


イーリス:それなら私は最初から前線に行っちゃおうかな。


カイル:僕も前線ですね。前に行かないと何も出来ないので。


ヴェロニカ:弓にしろ魔法にしろ、いずれにしても後方ですわ。蛮族を弱らせる呪文もあるけど……温存ですわ。


GM:配置が決まったら、次はキャラクターごとに行動に入ります。この行動順は毎回自由に決めて大丈夫です。誰かから強化呪文を貰ってから攻撃するなど、仲間と打ち合わせして決めて下さい。まあ、今回は素殴りとは思いますが。


イーリス:じゃあ早速斬る。


GM:では攻撃対象を宣言……といってもゴブリン1体なので自動的に決まりますが。命中判定を行って、イーリスの攻撃がゴブリンに当たるかを決めましょう。2dに命中力として設定された数値を加算します。


イーリス:(ころころ)10ですね。


GM:命中判定がファンブル以外の場合、今度はゴブリンが回避することが出来たかを判定します。ただし、今回はボス以外のダイスは振らず、固定値で判定します。


 エネミーにも、様々な数値が設定されている。命中力や回避力といった様々なステータスに、2d振った値を加算することでエネミーの達成値とする。だが、これを全ての戦闘でやっていくと非常に時間がかかる。そのため、2dの期待値である7を各数値に加算した固定値というものがあらかじめ設定されているのだ。


GM:ゴブリンの回避固定値は10です。その数値をイーリスの命中の達成値10と比べます。この場合、同値回避と言って、受動側……つまりゴブリンが勝ちます。


イーリス:外したかっ。


GM:イーリスの手番はこれで終了となります。次の方。


カイル:はい! ≪牽制攻撃Ⅰ≫は出来るんですか?


GM:そうですね! どんな効果か皆に説明してあげて下さい。


カイル:自分の手番中、攻撃を始める前に使用を「宣言」するだけで使える。宣言直後の攻撃1回だけに効果がある。命中力が「+1」され、代わりに威力表を振ってダメージを決める際、通常より1点高い出目でなければ、クリティカルしなくなってしまう。


GM:クリティカルは出にくくなるけど、その代わりにより確実に攻撃を当てられるようになる戦闘特技ですね。さあ達成値は?


カイル:(ころころ)13!


GM:これは当たりますね。では、次はダメ―ジ判定です。威力表というものを使います。武器ごとに2から12までの項目と、それに対応する数値が書いていますね? それは2dした出目に対応する数値がダメージになるんです。


 ここが少し直感的ではないので、一瞬戸惑うプレイヤーが多い。

 2dの出目がそのままダメージになるのではないが、基本的に出目が大きければ大きいほどダメージが高くなる点はどの武器も共通している。

 では違いは何かというと、武器が強いほど、同じ出目でもダメージが高くなるのだ。

 たとえば出目が7のとき、威力表10の武器ならダメージは3点だが、威力表50の武器だった場合は10点のダメージを叩き出せる。


 どうしてこのように二段階でダメージを算出するのかというと、威力表を用いた方がダメージの振れ幅を抑えられ、武器の強弱を細かに表現出来るのだ。運の要素は小さくなるが、その代償としてプレイヤーはある程度与えるダメージを想定した戦略性のある戦いが可能になってくる。


 プレイヤーはこれらの数値を念頭に置いて、己の好みに合致した武器や戦闘特技を選んでいくことになる。今回は作り置きのキャラクターで遊んでいるのでプレイヤーの好みは反映されていないが、自分で作っていくと如実に好みが現れる。


 それもあって、このTRPGのキャラクタービルドは非常に面白い。自分以外の人が作ったキャラクターを見ても、その人の持つ美学や癖が感じられる。取得する戦闘特技や技能、それら無限の組み合わせの数だけ、プレイヤーの「理想」がある。


 公式リプレイのキャラクターデータ欄を眺めるだけでも楽しいので、まだ手を伸ばしていない方は是非とも飛び込んでみて欲しい。シリーズごとにデータレイアウトも違うので、デザイン一つにキャッキャ出来るタイプの人はタマラナイと思われる。


GM:さてカイル、ダメージロールしてみましょうか。


カイル:ファルシオンを両手で構えて斬りかかって……(ころころ)11点!


GM:ぎゃあ! 11点のダメージが放たれました。ただ、敵にも防護点というものがあったりなかったりします。ゴブリンは2点です。よって9点のダメージが通ります。


エッシェン:一撃でもう死にそう。


GM:ゴブリンの残りHPは7かな。


エッシェン:あ、思ったより結構ある。


GM:ゴブリンだからってナメんなよー?


スヴェン:次行きますわー。≪ターゲッティング≫は宣言?


GM:それは常時適用されているので宣言は要らない便利な戦闘特技だよ。


スヴェン:命中は(ころころ)12!


GM:当たる。


スヴェン:ダメージが……(計算中)。


エッシェン:死んだでちね。


ヴェロニカ:えっ? 私出番なし?


スヴェン:12点!


ヴェロニカ:オーバーキル!


GM:2点防いでも10点通るので……ゴブリンは矢で貫かれ死にました。HPは-3です。


ヴェロニカ:マイナスとかある?


GM:このゲーム実はマイナスある。


ヴェロニカ:マイナスになるとどうなる?


GM:マイナスの値が大きいほど、生死判定の難易度が上がっちゃう。この判定に失敗すると完全に死亡するよ。


一同:へー。


 どこかの公式リプレイでは、HP-279点になってモザイクかかったルーンフォークとか、いましたね。

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