第3話

3.神奈川電算陸上部


 翌日、大野は神奈川電算陸上部総監督の吉田健二よしだけんじにアポイントを取って、神奈川電算本社を訪れた。吉田は東西大学陸上部の先輩で、駅伝やマラソンの大会では挨拶を交わすし、飲みに行ったこともある。裏表のない性格で選手やコーチにも慕われていた。しかし、大野を自分のチームに欲しいといった話はこれまで聞いたことがなく、この話は松崎が吉田に頼み込んだものだろうと想像していた。とはいえ、大野もこのまま日本自動車を首になっても、急な働き口があるわけでもなく、贅沢を言える身分でもない。


 神奈川電算の会社の中にある小さな応接室で、大野は吉田と顔を合わせた。

「ご無沙汰しています。大野です」

「今日はわざわざすまなかったね」

旧知の仲であるが、連絡先の事もあるので、とりあえず名刺交換をして、本題に入る。

「松崎さんから紹介されてきました。私を御社の陸上部コーチに招きたいと・・・」

吉田は少し間を置いて、にこやかに話した。

「私の気持ちを正直に言うと、うちとしては、願ったり叶ったりということです。松崎さんから話を聞いたときは、『本気ですか』と聞きましたよ。本当に大野君を手放すつもりですか?とね。ニューイヤー駅伝での好成績は、君の手腕が大きいと僕は思っている。日本自動車の個々の選手も着実に力をつけていると思うんだが、何を血迷って君を手放すのかねー。それにうちの陸上部ではちょうどヘッドコーチが辞めることになり、後釜をさがしていたので、渡りに舟って感じかな。現在のうちは、日本自動車ほど層は厚くないし、駅伝での成績もぱっとしない。だが、磨けば光りそうな選手はいると思う。どうか考えてもらえないだろうか」

「ぼくが日本自動車を辞めさせられた理由は知っているんですか」

「だいたいは松崎に聞いたよ。実はあいつも残念がっていた。申し訳ないことになったと」

松崎の言葉は社交辞令ではなかったのか・・・

その話を聞いて、大野は胸のつかえが少しとれた。いやいやで、押しつけられたみたいに飛ばされるのと、相手から是非にと望まれて行くのであれば、モチベーションがまるで違う。どんな仕事でも、必要とされていると思えるのは、働くうえで大事なことだ。

「給料など処遇については、後ほど話をさせてもらうつもりだ。うちは日本自動車ほど大企業ではないが、できるだけのことはさせてもらうよ」

もとより、こちらとしては、選択肢は多くなさそうだ。

「ありがとうございます。前向きに検討して返事させていただきます」

そう言って、大野は神奈川電算を後にした。

「とりあえず失業だけはしないですみそうだ」

自宅への帰り道、大野はほっとしてそうつぶやいた


 その日の夜に大野は妻の美由紀と娘のひかりとともに食卓を囲んでいた。娘のひかりは現在埼玉教育文化大学3年で、教員を目指している。3年になって就職活動もそろそろ始まり、実習なども増えているようなので忙しい様子だ。しかし、大学と実家が近いので、ちょくちょく実家に帰ってくる。まあ、食費の節約という意味もあるようだが。夕食を食べだして、間もなく大野は切り出した。

「今度、神奈川電算の陸上部に行くことになりそうだよ」

「えっ、あなた日本自動車は首になったの」

美由紀の言い方はストレートだ。ちょっとカチンときそうになったが、大野はビールをぐいっと飲んで事の顛末を話す。成績不良で首になったわけではないことは強調しておいた。

「まあ、なんていうか、結局選手の一部がぼくのやり方についていけないと言うんだよ。こっちは選手のためにいろいろ研究して、基礎トレーニングに時間をかけてやっているんだけど、今の若い子は地味な練習は嫌う傾向にあるんだよな。新人類っていうのか?特に大学のスター選手だったやつなんか、こっちの言うことに耳を傾けやしないんだよ。海外の選手、特にアフリカ勢と渡り合うには、今のままでは太刀打ちできないのが分からないのかな」

「新人類」はその大野が学生の時に流行した言葉だと思われるが、年月が過ぎ、立場が変わってもそのような人類は次から次へと生まれてくるようだ。その話に娘のひかりが割って入る。

「お父さん、若い子って言ったって、もう社会人でしょう。中学生だって、きちんと話せば自分に必要なことはわかるのよ。お父さんは選手の1人、1人になぜその基礎トレーニングが必要か、とことん説明したの」

ひかりは、選手と同世代でもあるので、そっちのほうにつくのか。

「いや、スポーツで基礎が重要なのはみんな一緒だろう。そんなことは常識・・」

「お父さんにとっては常識かもしれないけど、改めて説明するっていうのが大事なのよ。その子も、実は分かり切ったことと思っているかもしれない。でも自分の身に降りかかってくることなんだから、面倒でも言ってあげなきゃ。教え子に、目標や予想される結果まで説明しないと、今時の子はついて来ないわよ。最近の子は巷に情報があふれているので、ネットなんかでそれを取ってくるのは簡単なの。でも情報がありすぎて、何を信じていいのか分からないことも多いの。何が大事で、何が間違っているか、「分かってくれない」じゃあなくて、それを導くのがコーチじゃない」

大学でコーチングも習っている娘に指摘され、悔しいがぐうの音もでないほど正論だと思った。なるほど、今時、教える方も、ただ技術を押しつけるだけじゃあだめなんだ。こりゃあ陸上の以外でもいろいろ勉強していく必要があるな。それにしても、ひかりのやつめ、知らない間に成長してやがるな。大野は娘にやられても、今回はうれしい気持ちのほうが強かった。


 翌日、大野は、神奈川電算の吉田に電話を入れた。

「吉田さん、昨日の話ですが、謹んでお受けしたいと思います。本当に僕なんかを拾っていただいてありがとうございます。ただ、勝手なお願いなのですが、実際にコーチをするのは1ヶ月だけ待ってもらえませんか。僕の方も、選手とうまくいかなかったことは事実で、自分が未熟だった点も多かったと思うんです。1ヶ月間それを反省して、しっかり勉強してからお世話になりたいんです。お願いします」

吉田の答えは「わかった。待っているよ」という短いものであった。


 それから大野は、まずコーチングについていくつかの本を買って読みあさった。都内では1日セミナーも開かれているので、それにも参加した。また、陸上の技術だけでなく、人体の骨格、筋肉、血管など医学的な解剖学、人間だけでなく動物の走り方なども勉強しようと思った。まあすべてやるには1ヶ月では足りないであろうが、神奈川電産に行ってからも勉強すればよい。選手が成長するには、コーチの自分も成長し続けなければならないと思っていた。


 コーチングは、スポーツだけでなく、先生と生徒、会社の上司と部下など社会のあらゆる場面で役に立つ技術である。コーチングの“コーチ”の語源は、「馬車」の事であり、客を目的地まで送り届ける物を意味する。有名なところでは、アメリカのバッグなどの革製品のブランドにも馬車のロゴが入れられている。以前は、コーチといえば、ほとんどがスポーツ関連の指導者の意味であったが、最近はコーチングの技術がビジネスでも役立つことが提唱され、幅広く使われるようになった。いわゆる上司や先生が、生徒やスポーツ選手、あるいは会社の部下を目標とするところに指導し、連れて行くのがコーチングであり、その方法は問われないと言われている。また、最近は定義も様々に解釈されるようになってきた。すなわち、これまでコーチングは、幅広い意味でとらえられてきたが、教えるという意味をコーチングとティーチングに分けて扱おうとする考え方である。ティーチングは、学校や部活動で、先生や顧問が大勢の生徒に対して、自分の知識、技術などを相手に直接的に教えるものである。教師を英語でティーチャーというが、学校の授業のように30人、40人の生徒に勉強などを教えるのがティーチングである。ティーチングは効率的に多人数に教えることができるが、上から下へ、一方向的な情報の流れになり、教えられる方は受け身になりやすく、自分で考えることをやめて、モチベーションも下がりがちになる。これに対してコーチングは、直接的には教えず、相手に考えてもらって、答えを引き出そうというものである。コーチの役割は主に問題提起と見守りであり、手本を示すこともない。その代わり生徒や部下は、自分で導き出した答えなので、自分の成長にもなるし、やる気もでるのがメリットである。コーチは答えが分かっていても直接指導をしないので、コーチングには時間がかかり、大人数には教えられず、最悪答えにたどり着けない場合だってある。学校を卒業し、社会人になると、教科書に載っていない問題に直面することが多い。出した答えが正解なのか、誰にも分からないことだってある。そういう問題はティーチングでは教えられないことである。そのような正解がすぐには分からない問題を解決していく能力は、人が成長していくうえで重要なことである。

 

 知識や、技術を伝えるのは実は簡単ではない。伝えるための方法が難しいのである。何でも素直に言うことを聞く子は教えやすいが、それを応用していく力がないことが多い。人にはそれぞれ自我があり、親子であっても自分の気持ちを伝えるのは難しいし、そもそも自分の話を聞いてもらえるかどうかから始まるのである。時間がかかっても人が成長するまで待てるのであれば、それでかまわない。しかし陸上などのスポーツでは、単に選手の自立任せでトップレベルを目指すのは難しい。高い目標を目指すには時間も限られており、何もかも自分で答えを見つけろというのは無理があると思われた。そこで、大野は押しつけにならないように主体性を保ちながら、足りないところを教えていくことが最善であると判断した。


「今日は落ち込んで帰ってくるだろうな。」

天津さやかは、夕食の支度をしながらそう考えていた。別府大分毎日マラソンは家のテレビで見ていた。颯太にとっては不本意な結果であったに違いない。陸上競技に限らないかもしれないが、トップレベルの大会で毎回勝つのはほぼ不可能だ。レベルが上がれば上がるほど、しのぎをけずるライバルは多くなり、化け物のような選手も出てくる。颯太だって、これまで大きな競技会で優勝したことはない。優勝できなかったと落ち込んでいては、スポーツをやり続けることは不可能だ。しかし、さやかは、今度の大会は違うだろうと思った。何しろ、このところの一番の目標にしていたオリンピック出場という夢が、その予選の段階で断たれたのだ。この大会では、最低でもMGC出場権利獲得は手に入れたかったのだろう。


 颯太とさやかは同じ大学の同級生で、学部は違うが、さやかが駅伝ファンであったこともあり、それからつきあって2年前に結婚した。さやかは食品会社で働いており、お互い忙しいので、仕事や競技のことは、できるだけ家庭に持ち込まないことが暗黙の了解のようになっていた。颯太は競技のことを家庭で話したりすることはあるが、ほとんどはよかった事の話で、練習などの愚痴を言ったりしたことはほとんどなかった。颯太はやさしい。手を上げるどころか怒鳴ったりしたことも記憶にないくらいだ。しかし今日は大丈夫かなと思いながら、いつも通りに対応するしかないなと、さやかは思った。

「ただいま」と言って、颯太が帰ってきた。

「お帰り」といつものように返事をして、食事を並べる。今日は国会前でまたデモがあったとか、北海道では吹雪で大変だとか、今日のニュースを話題にしながら、2人で食事をする。さやかの話にしばらく付き合っていた颯太だったが、やはり、元気がない様子であった。やがて颯太が、つぶやくように話した。

「なあ、俺って、このあたりが限界なのかなー」

否定して欲しいのか、慰めて欲しいのか。颯太がこんな弱音を吐くのは珍しい。それほど今回の敗戦はショックだったのかもしれない。

「今日は残念だったね」

ありきたりな慰めの言葉を言って、しばらく考えた後、さやかは口を開いた。

「颯太にどれくらいの才能があるのか、限界はどこなのか、陸上の専門でない私には分からないわ。たしかに、追いかけていた夢の1つが消えていくのは誰にとってもつらいことね。颯太は、この大会に向けて頑張っていたから・・・私、思うんだけど、人は小さいころからいろいろ夢を持っているじゃない。小学校に入るか入らないかの子供の多くはプロ野球の選手になりたい、Jリーガーになりたいなどの夢を持っているわ。でも中学生になると、多くの子は、そんな夢はあきらめる。高校生になると、そんな夢をまだ持っている人はさらにぐんと少なくなってしまう。多くの人はプロの選手になるレベルの圧倒的高さを思い知らされ、自ら夢をあきらめるのよ。あなただって、「箱根駅伝を走りたい」という目標のためだけで大学に入学して、一生懸命練習したのに、結局かなわなかった人を何人も見てきたでしょう。そういう意味では、あなたは、これまであきらめてきた多くの人たちを超えてここまで来ているのよ。もちろんトップレベルで戦うには、私たちが想像もできないくらい厳しい練習をしていると思うけど、そういうことができることを含めて、それは私たちのように平凡な人から見れば、ほんの一握りの者にしかできない“すごいこと”なの。そこまで夢を追いかけて来たのなら、私なんかに才能だのを聞いて、競技をやめるのは許されない。あなたができることをすべてやって、必死でもがいて、それでもだめだったら、自分で判断するしかない。あなたは、本当は「まだやれる、まだやりたい」と思っているんでしょう。あなたがそう思っていれば、絶対あきらめるべきではないと思う」

さやかは必死で話した。涙が出た。颯太は黙っていたが分かってくれたようだった。

「ありがとう。君が嫁さんでよかったよ」しばらくして颯太はそう言った。


 颯太とさやかが出会ったのは、お互い大学3年生の時だった。颯太は陸上部の寮にいて、勉強と陸上の練習でなかなか自由時間がとれない。世間ずれしそうな所を少しでも取り戻そうと、自分の大学の学祭に仲間と出かけていった。大学祭ではいろんなサークルが模擬店などをやっている。颯太達は体重の管理もしているので、好きなだけ食べるわけにはいかないが、見ているだけでも楽しかった。そこで目に付いたのが、さやか達のグループがやっている「アスリートが勝つための食事」という研究発表だった。模擬店では砂糖を使わない低カロリーのパウンドケーキを売っていた。看板に興味を引かれたので入ってみることにした。展示ではスポーツの種類によって多く取るべき栄養素、献立などが紹介されていた。例えば、ラグビーでは、スクラムを組んだり、相手と当たったりするため、筋肉量のアップが求められ、タンパク質、ビタミンB1、ビタミンCなどを多くとることが必要である。さらにフォワードなどは体を作るため体重を意図的に増やさねばならず、そのために脂質を取ったりすることも重要である。自分のところの陸上の長距離はどうかというと、長時間体を動かすための糖質の摂取と、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1が必要とあった。加えて汗でミネラルが消費されやすいので、骨を丈夫にするカルシウムとともにミネラルも補給することとあった。さらに長距離ランナーは貧血になりやすく、鉄分、タンパク質、ビタミンB12、葉酸などを摂取すると良いとしていた。そのためのメニューなどもみていると、さやかが話しかけてきた。

「天津颯太君でしょ、うちの大学の有名人が来てくれてうれしいわ。私、駅伝が好きなのでテレビでも見ているのよ」

「そんな、有名人だなんてやめてくれよ。それより、競技生活をしている関係で、食事は大事だから興味があるんだ。今は寮で食べているけど、卒業したらそうはいかないだろう。これから少しずつ勉強しようと思ってさ。例えば、この陸上長距離用のメニューだけど、普段の練習中とレース前のものは、違うんだろうね」

「もちろん、競技が近くなると、それまでの練習の疲労を抜いたりする必要があるでしょ。よく言われているのはカーボローディングで、一旦低糖質の食事にして、3日くらい前から逆に糖質を多く取って、体内のグリコーゲンを蓄える方法ね。でも極端な変更は内臓に負担がかかって良くないし、ビタミンやタンパク質をしっかりとることも必要よ」

颯太もカーボローディングという言葉は知っていたが、実際にメニューを考えてやるのは難しいと思っていた。

「なかなか難しそうだね、カロリーや炭水化物のことまで考えてメニューを考えるとなると頭が痛くなりそうだな」

「まあ、簡単にするなら、ご飯の量を変更するだけでもいいんじゃあないかしら。その分のカロリーは、タンパク質や脂質などで補えばいいんだから」

「わかった。またいろいろ相談させてくれよ」

そう言ってその日は別れた。その後も何度か会ううちに、颯太は食事以外のことも話してくれた。さやかは、颯太が陸上について、自分の考え、こだわりを話すのが好きだった。特にフォームに関しては指先までこだわり抜いていて、長距離に適した走りをしているのだという。また、大学では駅伝優先のおきてがあり、皆で一緒に走ることが多いというのだが、自分はあまり好きではないという。大学駅伝では、3000m障害や1500mが専門の選手も駅伝に駆り出されることがあるが、彼らの練習は長距離専門の颯太たちとは少し異なる。それでも10㎞、20㎞の力もあるから選ばれているのだが、本来なら本職の練習を優先すべきと思う。それに駅伝にしたって、トラック競技にしたって、結局は一人で走らねばならない。本番の大会で、皆で仲良く走ることはほぼないのだ。

「本番のレースを想定して練習しないと、強くなれないと思わないか」

颯太はそう言った。また皆が同じメニューをこなすのも納得いかないと言った。

「駅伝で勝つのは、もちろんチームの勝利であって、個人を出してはいけないのはわかっているよ。ただ、陸上は駅伝だけではないし、みんな一緒に、監督の言われるまま同じように走っていたら、自分の個性や長所は生かせないんじゃあないか。そうなると才能を持って生まれたやつが勝つことになる。自分は才能があるわけではないから、勝つためには独自の工夫をしていかないとね」

そう言って颯太は笑った。颯太は「才能がない」と言っていたが、そうやって努力で長所を伸ばす、欠点を埋めるのも才能のうちじゃあないかと、さやかは思う。しかし人と違う道を歩むこと、監督の言うことに逆らうとまではいかないにしても、ただただ迎合はしないという精神はきっと孤独でもあるんだなとも思った。


 さやかは、アーモンド型の大きな目をしていて、整った口元は笑顔がかわいい。誰が見ても“美人”の部類に入る。颯太は、さやかの美貌にも惹かれたが、何より人の話を真剣に聞いてくれて、尊重し、かつ自分の考えもしっかり持っているところが好きだった。だから、ほめるときもあれば、時には反対意見も言う。2人は大学を卒業し、社会人になっても時々会って話をしたり、さやかが食事を作ってあげたりしていた。颯太は居酒屋に行って好きなだけ飲み食いするわけにはいかないので、そういうところには行けない。しかも2人とも渋谷とか原宿とかの、おしゃれなお店にはまるで興味がなく、ファッションにもうとかったので、若者が良く行く通常のデートスポットにはほとんど行ったことがない。でも、さやかは颯太と一緒に公園で花を見たり、鳥のさえずりを聞いたりするのが1番好きだった。空の色、木々の色なども単調でなく、光の加減によっても全く違う色になり、よくみるととても美しい。犬を連れて散歩する老人、全力で駆け回って遊ぶ子供を見守る母親。たとえ絶景の景勝地ではなくても、この1瞬はかけがえのない愛と美しさに包まれている。そんなことを思って眺めていると、自分も「生きているなー」という気持ちになる。颯太もそういうところは共感していた。価値観を共有している事を認識した颯太は、さやかにプロポーズし、結婚したのである。

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