第12話モモ子に慣れさせる

12,モモ子に慣れさせる


 こうやって心配しながらも運を天に任せて猫との生活を


近づきもせず遠ざけもせず自然体でやっていた。


猫は名前がついていようがいまいがお構いなしに来たい時にきて餌を食べ


来ない時は何軒か先の猫好きの家に寄っているようだった。


とはいえ朝のモモ子の散歩に出る時間、日中に私が帰ってくる時間、夜のモモ子の散歩の時間を知っているのか必ず、庭に顔を見せた。


猫だから、ずっと庭にいるわけではない。


どこからか駆けつけてくるのだろう。


そんなある日、猫が私が帰ってきたのを見て慌てて


数軒先から急ぎ足でやってくるのがみえた。


そこにたまたま近所の小学生の子供たちが通りかかった。


猫が通るのを見て捕まえて、抱き上げたり触ったり耳を引っ張ったりと遊び始めた。


いじめている訳ではないが猫はおとなしくされるようになっていたが迷惑そうである。


近所の大人の人たちには構ってもらいたいようで時には道端に横になって


腹を撫でてくれるように要求したりしているが


子供達のしつこさには閉口しているのか嫌がっている様子が見て取れる。


まるで「助けて」とでも言いたそうに私の顔を見て


子供たちの手をすり抜けると一目散に駆け寄ってくる。


丁度、家に入ろうとドアを開けていた

私は猫の必死な様子に思わず抱き上げてしまった。


子供達から何となく保護してあげようと思ってしまったのである。


そのまま家の中に入るとモモ子がすぐに二階から下りてきた。


喧嘩するだろうか。


私はモモ子の様子を窺った。


クンクンと私の腕の中の物の臭いを嗅いでいるがウーとうなる様子はない。


腕の中の物が何なのか臭いで確かめたいだけなのかもしれない。


これなら大丈夫そうだと私は判断した。


その日から私は少しずつモモ子と猫を馴らしていった。


最初の何日かは腕の中でご対面をさせた。


その都度にモモ子は臭いを嗅ぎ、私の顔色を見てこの猫は仲間なんだ


と認識していくように仕向けた。


犬はやきもちを妬く動物である。


あまり私が猫の方に気を取られていると


やきもちで猫に意地悪をするかもしれない。


猫を抱きモモ子に見せながらも「仲良くしてね」とモモ子を見つめながら言い、


片手でその体を愛撫することを忘れなかった。


猫をモモ子の傍にそっとおろしてから


モモ子の身体をオーバーに触ったり抱いたりした。


「猫よりもモモ子の方が可愛いのよ。でも猫はいくところがなくて可哀想だから


モモ子は我慢して一緒に部屋にいさせてね。」


とその目を見つめながら話をする。


犬に言葉が通じるかという人もいるが私は基本的に言葉は通じると思っている。


特にゴールデンリトリバーは頭が良い。


言葉の一つ一つがわからなくても言いたいことはだいたい通じる。


噛んで含めるように言って聞かせればたいがいの事は意思の疎通が出来る。


こういう事を何日か繰り返しているうちに部屋の中に猫がいてもモモ子は気にしなくなった。


もちろん桃太郎を刺激しないように猫が近づかないように気を使った。





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