第11話猫の妊娠の心配


11,猫の妊娠の心配


ひと月もしないうちに猫を手放すのが惜しくなっている。


このおっとりとしたお嬢様猫は私の心の中では既に「うちの子」になりつつあった。


でも、名前を付ける事にはまだ抵抗があった。


名前を付けて呼ぶようになったら本当に「うちの子」になってしまう。


それは責任を伴うものであるから・・・


毎日の餌は良いとしてケガや病気の時のケア、


最も心配なのは避妊手術をしないと子供がどんどん増えていく結果になる。


野良でいる限り早くに手術をしないと妊娠を避けられない。


そう考えると急に心配になって来る。


今、こうしてなついている限りもし妊娠したらきっと私の家の縁の下あたりで生むだろう。


そうなったら困るのは目に見えている。


かといって今、家の中にはモモ子と桃太郎がいる。


モモ子の方はゴールデンリトリバーの割には猟犬の素質がないので


時間をかければ仲良くなれるかもしれない。


でも桃太郎は鳥である。


猫の本能が二匹を仲良くはさせないだろう。


今の私には長年にわたって私の心を癒してくれた桃太郎の方が大事である。


オカメインコの寿命は十年位と聞いていたのに桃太郎は足掛け十五年は生きている。


今年になって急に老いが目立ってきてはいたがまだまだ、充分に元気である。


 動物病院数件に猫の避妊手術の費用や日数のことで相談してみると


どこも大体二、三万は最低かかるらしい。


現実の私は商売を始めたばかりで数万のお金を出す余裕がない。


モモ子が病気になったり、怪我をした場合は何とか工面するがが


まだ家にいついて数日の野良猫とは愛情のかけ方もお金のかけ方も比較にならない。


冷たいといわれそうだが私にも生活がある。


で、結局どうなるかといえば私は毎日ハラハラとしながらも


猫が妊娠しないように願っているだけなのである。


一つの救いはこのお嬢様猫、結構強い。


私の前では虫も殺さないような可愛い顔をして弱弱しく振舞ってはいるが

結構気位が高い。


近所の雄猫が言い寄っても気に入らないらしく威嚇して追いやっているのを目撃した。


その調子、その調子と私は心の中で応援した。


近所の奥さんの話では何匹か格闘してけがをさせられた猫がいるとのこと。


私の知る限りではこの雌猫が怪我をしているのを見た事はない。


お嬢様はネコをかぶっているだけで実際は強いらしい。


良い事である。


女は強くてしなやかなのが良い。




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