第4話 これが君の越えるべき壁だ

 ファウストはベルゾレフに手を引かれてベルゾレフの家の裏手から森へ来ていた。


「さぁ、着いたよ!ここはガチムチアイランドでも浅い所は比較的魔物が弱い初心者向けの魔物生息域【スマートフォレスト】だよ!」


 眼前に広がるスマートフォレストは木々の合間から木漏れ日が差し込む清廉なる聖域のような雰囲気と同時に、それとは正反対の魔女がいるような、瘴気漂う常闇の森に匹敵する程の不気味さをある意味醸し出していた。

  土は日焼け肌のような小麦色。森を構成する樹木は何故か筋張った細マッチョ体型の樹木ばかりでその尽くがポーズを決めているかのような育ち方をしている。チラッと見えたこの森に住んでいるリスのような小動物までも全身の筋肉が隆起し、ボディービルダーばりの体型をしていた。顔が可愛らしいリスまんまなだけあって余計に不気味である。

 動植物が筋肉に溢れているせいか、森の空気までも少し汗臭く感じるが果たしてこれは気のせいなのだろうか……。

  ファウストは唯一無事な太陽(厳密には違うが)が爛々と輝く青空をハイライトが消えた死んだ魚のような目で見上げていた。


(森がこの有様でベルゾレフも筋肉隆々の大男。恐らく他の村人もガチムチなんだろうなぁ…)


 死んだ魚のような目で青空を見上げながらガチムチアイランドの所以を悟ったファウストであった。


(…...はぁ、気を取り直していこう。外の世界なら十分生きて行けるってベルゾレフは言ってたし、外の世界はこんな酷い有様じゃなくて美しい世界が広がっているに違いない!そうでなくては困る!)


  酷く失礼なことを考えていたファウストは外の世界に希望を持つことでハイライトを取り戻し、気を取り直して厳しい現実に向き直った。


「ガチムチアイランドでも比較的弱い所を選ぶってことはそれだけこの島の魔物は強いということですか」


「そだよ!さっきチラッと見えたマッチョリスもああ見えて外の世界ではCランクに食いこむ強さだしね!

あ、そういえば魔物の強さのランク付けなんだけど、基本F〜Sまであって冒険者のランクに準えてるんだ。Fランク魔物ならFランク冒険者一人分の強さって感じでね。詳しくはまた今度ちゃんと説明するよ」


(あのキモイリスそんなに強かったのか)


「ささ、こんなとこで立ち話もなんだし早速森へ入ろう!」


「そうですね」


  そう言って二人はスマートフォレストへと入っていった。





  青々と繁った葉と葉の間から木漏れ日が差し込む麗らかな森、これだけ聞けば殆どの人が聖域の如く澄んだ森を想像するだろうが、ここスマートフォレストにその常套的な連想は通用しない。

  周囲のムチっとした引き締まった筋肉を惜しみなく披露する細マッチョ体型の木々、少し汗臭い空気、チョロチョロ見えるこの森に生息する筋肉質過ぎる小動物や虫、今は周囲にはないが汗臭く、何故か微妙に塩辛い汽水が流れる川、この森にある尽くが本来人を気持ちよくさせる清廉なる風景を全力でぶち壊していた。

  ファウストはそんな森の中をゲンナリとした心情で斜め前を歩くベルゾレフの後ろについて歩いていた。


(中に入ると改めて感じるが、よくここまで風情をぶち壊せるよなぁ。せめて木が普通で空気が綺麗なら多少動物が不気味でも許容できたけど……)


  ファウストは改めて周囲を見渡し、小声で愚痴った。


「……やっぱこれは無理だわ」


  ファウストは喉元まで迫った溜息を飲み込み、意識を切り替えた。


「ところで、具体的に何をするのですか?」


  ファウストは細マッチョな木々に囲まれた獣道を歩きながらそう尋ねた。


「そだね、取り敢えず今日はファウストくんがどれぐらいできるか見るためにちょうどいい倒しやすさの魔物と闘ってもらうとするよ。

後は森の歩き方や野宿の仕方とかを教えるつもりだったんだけど……なんだか知ってるっぽいね」


  ベルゾレフは地面が凸凹とし、根っこが地表に現れて転びやすくなっている獣道を慣れた感じで歩くファウストを一瞥して言った。


(まぁ元殺し屋であらゆる分野の知識を一通り網羅してる上に制圧部隊でもそれを活用していたから鈍るようなこともなかったしな)


「ええ、記憶には無いのですが身体が知っているみたいで自然と…」

「なら今日のメニューは適度な魔物との実践と運悪く強いのが出てきたら見学だね!

おっ!早速あそこの茂みの向こうに魔物がいるよ!」


  そう言ってベルゾレフは二時の方向を指差した。そこを見てもあるのは背の高い茂みだけで特に魔物の姿は無かったが、茂みを超えた、少し離れた所に気配があった。しかも少し距離が空いてるのにも関わらず臨戦態勢に入ってるらしいことからだいぶ警戒心と縄張り意識が強く気性の荒い部類なのだろう。


「練習相手としては少し強いがまぁ大丈夫だろう!

あっ、武器使うかい?一応一通り持ってるけど」


  ベルゾレフはそういうがどうにも武器を持ってるようには見えない。タンクトップに長ズボンに腰につけたウエストバッグと、服装の中にも武器を隠せる所はあまり無さそうに見えるが……。


「なんでも良いですよ。ですが一体どこに武器が?

一通りと言いますが持ってても暗器ぐらいしか持ってなさそうですけど」


「HAHAHA!確かに手には持ってないけど私にはこのアイテムバッグがあるからね。

これは空属性魔法【アイテムボックス】が付与された魔道具で、見た目以上の収納スペースがあるんだ!

因みに魔道具ってのは魔石を動力源として魔導を発動する道具のことを言って、それが武器なら『魔装』と呼ぶよ。これに名前が似た『霊装』というのがあるけどこれは魔術的な意味を与えた物品のことで簡単に言えば魔術を発動する触媒だね」


  ベルゾレフはそう言いながら腰に付けていたアイテムバッグと呼称していたウエストバッグを漁って刃渡り七十センチメートル程の無骨な造りのショートソードを取り出してファウストに渡した。


「取り敢えずはこれでいいかい?」


「はい。これ、壊れても構いませんか?」


  ファウストは鈍く光るショートソードを眺めながら聞いた。


「?構わないよ」


  ベルゾレフは頭にクエスチョンマークを浮かべながら取り敢えず昔ダンジョンの浅い層の宝箱から出た中級品だからと許可を出した。

 ファウストは「ありがとうございます」と一言礼を言ってから片手で軽く素振りをして、剣の感覚を確かめた。


(身体が幼くなったせいでだいぶ違和感があるな)


  ベルゾレフは「それじゃあ私は少し離れたところで見物してるよ。危なそうだったらちゃんと護るから安心して戦うといい」と言ってファウストの元を離れ、少し遠くの木の幹に背を預けてもたれかかった。


(さて、お手並み拝見だ)


  ファウストはある程度剣と幼い身体の感覚に慣れたのか、素振りをやめて剣を構えた。視線は茂みの向こうの気配を鋭く捉えている。


(戦闘態勢に入ってる割になかなか来ないな。ベルゾレフは結構強そうだし、俺の近くにいたから警戒してるのか?まぁいい、今はベルゾレフと離れてるし挑発すれば出てくるだろう)


 ファウストは足元に落ちていた石を広い、茂みを越えた先にいる魔物に向かって勢い良く投げた。

石は茂みに穴を開けて茂みの向こうの魔物の頭に当たった。


  頭に石を当てられて怒った魔物は大気を震わす甲高い憤怒の叫びをあげながら猛烈な速度で茂みを踏み越えファウストに襲いかかった。ファウストはそれを足元を無詠唱の風属性魔法で爆発させることで魔物の脇をすり抜けていなし、がら空きの背中に斬撃を放った。


煌鷹こうおう流総闘術【一文字】」


キィィィイイイン!


  モロに入った横一文字の斬撃。


 しかして斬撃は魔物の背中に一文字の傷をつけたものの傷は浅く、有効打にすらなっていない。それはファウストも分かっていたことだが……


「あれで折れるのか(予想以上に硬い……浅いところの魔物でこれなら確かにめちゃんこつおいな)」


 【一文字】を放ったショートソードは甲高い金属音を打ち鳴らし、根本からポッキリと折れてしまっていた。


  その光景を見たベルゾレフは「Oh,no!」と言い額に手を当てた。


(あちゃー、何か凄い流派を修めてるみたいだけど武器がそれに耐えられなかったみたいだね)


「他の武器いる?」


「いや、いいです」


  ファウストはベルゾレフがアイテムバッグから新しい剣を取り出して尋ねて来たけれど消費量が軽く十は超えそうな上、相手が待ってくれそうにないので断り、根本から刀身が折れたショートソードだったものを放り捨てて無手で倒すことにした。


「にしても、どんな奴かと思えば大猿かよ」


  襲いかかってきた魔物は大猿の魔物だった。この魔物はマッチョエイプといい、体長三メートルはある巨体はガチムチな鋼鉄の筋肉に覆われ、その強靭で柔軟な筋肉に包まれた身体を駆使して動物を襲う肉食の凶暴な魔物だった。その鋼鉄の筋肉は刃を通さず、打撃も効きにくい。これに武器と引き換えと言っても大きな切り傷を与えたファウストの初手は大したものだ。


  背中を大きく横一閃に切り裂かれ、さらに怒ったマッチョエイプはダメージを感じさせない俊敏な動きで飛び上がって一時離脱し、周囲の木々を踏みつけて、猛々しい大音声を挙げながら不規則かつ俊敏な動きで再度襲いかかってきた。


  ファウストは木の幹を力強く踏みつけて爆発的な速度で殴りかかって来たマッチョエイプの腕を懐に入り込みながら紙一重で避け、相手の勢いそのままに対面の木へ投げ飛ばし、そのまま木に叩きつけられたマッチョエイプを木の幹と挟むようにして両手で掌底を喰らわした。


「煌鷹流総闘術【鎧通し】」


  体内に螺旋回転するドリル状の氣の衝撃を通し内蔵を攻撃する体術、【鎧通し】によりマッチョエイプは吐血しながら背に挟まれていた木をへし折って大きく吹き飛ばされた。しかし、マッチョエイプは内臓へのダメージで少しよろけながらも立ち上がり、咆哮を挙げたかと思うと、脇と背の一部がボコボコと盛り上がって隆起していき、合計4本の腕を生やした。マッチョエイプはファウストを睨みつけ、三度みたび襲いかかってきた。


「煌鷹流総闘術【風読み】」


  マッチョエイプは六本の強靭な筋肉の塊の腕を巧みに用いた密度の濃い攻撃をするがその攻撃はファウストの先読みしてるかのような回避によりかすりもしなかった。


(【風読み】。相手の攻撃の予備動作により起こる僅かな風を読み、次の手を予測する煌鷹流総闘術の基本の一つ。【一文字】【鎧通し】と、強いといえどこのレベルの敵なら本来一撃で倒せるはずの技がイマイチはまらなかったからこの体でできるか不安だったが問題なさそうだな。

しかし、どうするか。

低威力となっていても数を打てば倒せるがこの体でそれをやると身体の方が先に壊れるかもしれない。

……そうだ、さっき回避に使った魔法は上手くいったんだ。これを使ってみるか)


  マッチョエイプの高速ラッシュをゆらゆらと風に舞う木の葉のように流動的に躱しながら考え、結論が出たファウストは攻勢に出た。


  風読みでマッチョエイプの衰えることのない高速ラッシュを躱しながら右手を銃の形にして、身体中を毛細血管のように巡る魔力回路を流れる魔力を意識し、それを水属性と地属性の魔力に変換、混合した混合魔力で魔法を描いた。


(喰らえ【ウォータカッター】!)


  銃の形にした右手の人差し指から生えた鋭い木が高速で成長しマッチョエイプの眼球を刺し貫いた。


(は!?確かに俺はあの大猿の目を狙って鋭く射出するよう念じたがなんで木なんだ!?

まさか、土という研磨材が混じった高圧水流と明確に想像せず勝手に水と地なんだから鋭く射出するよう描けばウォータカッターになると思ってたがそうじゃないのか!

ということは、明確な想像をせず混合魔力で魔法を発動した場合はその混合魔力の属性となって、それが水と地の場合は木だったから鋭い木が射出されたって訳か。いや、原因は想像の不明確さが原因ではなく、混合したことにあるのか?。混合せずそれぞれ独立した形での同時発動でないとああいう技は使えないということなのか。

……まあいいこのまま木を成長させて止めだ)


  ファウストはマッチョエイプに木を折られる前に刺さった木のマッチョエイプの体内にある部分を成長させ、幾本にも枝分かれした鋭い枝で体内を刺し貫いた。


 ファウストが木の人差し指との結合を解くとマッチョエイプは倒れ、少しの間ピクピクと痙攣けいれんしたあと事切れた。


  一部始終を固唾を呑んで見守っていたベルゾレフは内心で驚愕していた。


(マッチョエイプぐらいなら倒せるかな〜って思ってたけどまさかここまで圧倒するとは……ファウストくんの戦闘センスは桁外れだね。

それだけじゃなく彼が使っている煌鷹流総闘術っていうのも凄まじく強く応用力の高い流派だ。

彼自身、まだ身体が出来上がってないからその威力を十全に引き出せていないだけで技自体は何故か熟練しているしね。

それに魔法の使い方については口頭で説明したものの一発であそこまで魔法を使いこなすなんて驚きだよ。複合属性魔法まで使ってたし。


天才……って言葉で表現するにはちょっと無理があるね。ホント、謎が多い子だ。)


  ベルゾレフは預けていた木から身を起こし、ファウストの方へ寄っていった。


「凄いね、強いとは思ってたけどまさかここまでとは正直思ってなかったよ」


「ありがとうございます。

ですがまだまだですよ」


「そうだね。でもこれで今のファウストくんに足りないものが分かったよ」


「体作りですか」


  ファウストは即座に先の戦いで痛感した問題点を挙げるがベルゾレフは「そうじゃない」と否定した。


「確かにそれが最たるものだけどそこはゆっくりでいい。いや、ゆっくりじゃないとダメなんだ。

あんまり事を急くと逆に成長に異常をきたしちゃうしね。

それよりも必要なのは魔物についての知識だよ。

さっきのマッチョエイプって魔物。ホントは首の後ろは柔らかいからそこを初手の技【一文字】で切り裂いていれば瞬殺できたからね。

後は魔力や魔法について勉強と練習を重ねればこの島でも十分通用するようになって島から出られるようになるよ」


「そうだったのですか。

分かりました。これからからもよろしくおねがいします」



 ズズンッ


  突如、物理的力を伴った威圧感が辺りを埋め尽くした。その力は辺りの木を軋ませ、ファウストもその謎の圧力により地面に押さえつけられ、立っているのがやっとの状態になった。


(なん……だこれは…...!!

この感じは魔力?何か大きな気配もする。

もしかしてこれは魔物が威圧するために発している魔力なのか!?

ただ威圧するだけで辺りを制圧しちまうってのかよ!)


  ファウストの推察はほぼ合っていた。正確には【威圧】というスキルで、その効果は物理的な力を伴った圧力で周囲を威圧し、跪かせるというもの。“王級”と呼ばれる魔物は大抵このスキルを所持している。


「ん?ああ、どうやら運の悪いことに森の最奥部から出てきた魔物が近づいて来てるね」


  そんな中ベルゾレフはただ一人【威圧】をものともせず平然と立っていた。


「ファウストくん、ここからは見学授業だ。

今から君が越えるべき壁を提示するよ」


 正面、森の奥から周囲の木々を【威圧】による物理的な圧力で押し潰しながら一体の魔物が悠然と歩んできた。


  ガチムチドラゴタートル。そいつは亀のような、いや、どちらかというと甲羅を背負った地龍という表現の方が適していた。体長はゆうに二十メートルを越えていた。ワニガメのような鋭く凶悪な顔。大樹の幹のような太く、筋肉が隆起した四肢。ゴツゴツとした突起状の硬質な甲羅。鋭利で頑強な岩のような尾。前世で見た怪獣映画の怪獣よりも怪獣然とした国すらも脅かす怪物。それと今ベルゾレフが正面から対峙していた。

  先に動いたのはガチムチドラゴタートルだった。


 ベルゾレフを視界に捉えたガチムチドラゴタートルは鋭く尖った嘴のような口を大きくあけて凄まじいエネルギーをほんの一瞬の間に収束、圧縮し、解き放った。

  エネルギー弾は音を、衝撃波すら置き去りにして周囲の木を綺麗にくり抜きながら数十メートル離れたベルゾレフへと迫り、






  高密度の魔力を纏ったアッパーにより上空へと弾き飛ばされた。






  後から追いついた衝撃波は 鼓膜が破れそうな爆音を伴って辺りに吹き荒れ、地表を舐め尽くし全てをふきとばした。


  その数瞬後、上空で目に見える範囲の雲を残らず吹き飛ばすほどの凄まじい爆発が起こり、それにより、さらに辺りのモノは吹き飛ばされた。


(ーーーッッッッ!!くっ、吹き飛ばされないようにするのがやっとだ)


  ファウストは自身の周囲に魔力障壁を三重展開し、無詠唱の闇属性魔法で重力を強化、さらに自身の身体から複合属性である木属性魔法により太い根を直接生やして地中奥深くまで張ることでなんとか堪えていた。


  そんな衝撃波の嵐の中ベルゾレフは目にも止まらぬ速さでガチムチドラゴタートルに接近する。


  ガチムチドラゴタートルも咄嗟に迎撃しようと牽制用のエネルギー弾を数発放つが、ベルゾレフは魔力を纏った腕でそれを弾きつつ接近する。


  牽制をものともせず一瞬にして接近してきたベルゾレフに対し、波状のエネルギー波を放出することで吹き飛ばして距離を取ろうと謀るガチムチドラゴタートルだったが、ベルゾレフは構わずそれごと顔面に超高密度の魔力をガントレットの如く纏わせた拳を打ち込み、地面に叩きつけると同時に右腕に纏わせていた魔力を全て衝撃波の杭としてガチムチドラゴタートルの顔面へ叩きつけるように解き放った。


「【BURST BREAK!】」


  その拳打は周囲の土砂を遥か上空まで舞い上げ、ガチムチドラゴタートルを一撃で仕留めた。


(これが...…俺の越えるべき壁……。

すげぇよアンタ、この俺が全く……越えられるビジョンが思い描けないなんて初めてだ。

まったく、見事なまでの壁を提示してくれたもんだ。

だが、だからこそ……)


「越えがいがある」


  粉塵立ち込める中、ファウストは微かに見える自身が越えるべき、あまりにも高い壁を眺めながら未来を思い描き、笑みを浮かべていた。



  壁を乗り越えるのは斯くも辛く困難なものだ。時には挫折し、打ちひしがれることもあるだろう。

  しかし、その先には今まで見たことの無い景色が広がっているのだ。自身が思い描いた理想の景色が広がっているのだ。

  少年は未だ自身が描く理想の景色に気づけていない。だが、彼は無意識下で確信していた。

  この壁を乗り越えた先、そこに自分の目指しているものがあると。

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