月長石

 ☆STEP 1


 ウィルキー・コリンズの1868年の作品。もう一度、書きます。1868年の作品です。ミステリの歴史を学ぶガイドブックのたぐいを紐解くと、必ずといっていいほど登場する歴史的に意味のある大作。

 白状しますが、これ、筆者は読んでおりません。いつか読もういつか読もうと思っているうちに時間はどんどん過ぎる。

 では、英訳作業に入りましょう。

 うーん。作品を読んでいないので内容からのヒントもなし。タイトルを構成している三つの漢字自体はシンプルで英語も思い浮かびます。

 やってみましょう。「月」は【moon】、「長(い)」は【long】、「石」は【stone】。




 ☆STEP 2


 と、いうわけで……


 “The Long Moon Stone”


 ……で、どうでしょうか?




 ☆STEP 3


 正解は……・


 “The Moonstone”


 ……でした。


 ちょっと待て、「長」はどこ行ったんだ、「長」は。

 いろいろ調べてみて、英語以外の点でも不勉強を恥じることになります。

 そもそも、「月長石」という宝石があるのですね。そして、『月長石』のあらすじにもきちんと登場します。「インド寺院の宝〈月長石〉は数奇な運命の果て」と、創元推理文庫のあらすじにちゃんとある。

 読んでいない作品だとこういうことがあるからなぁ、と。

 ちなみに手元の英和辞書で【moonstone】をひくと、ちゃんと掲載されています。「月長石お守りとして使用」とあります。

 うん、いろいろと勉強しよう。反省。


 

 ☆おまけ


 手元の参考文献に《『月長石』(68)》という表記があり、感慨深い気持ちに。今は2021年なので、ただの(68)だと1968だと勘違いするのが普通でしょう。

 ミステリは百年生きて、次の百年を生きているのだと思うと、ちょっとウルウルしそうになります。

 古典の再評価とかガイドのアップグレードとかしていかないといけない部分もあるはず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る