幻の女

 ★STEP 1


 今回はウィリアム・アイリッシュの名作。あれ、コーネル・ウールリッチ名義だっけ。どっちでもいいや、ということにします。


 日本語の構成的には簡単に思えます。○○の××。【の~】は【~of】、いや【~の】が【of~】といったほうがよいのでしょうか。『緋色の研究』の回で痛い目にあっていますが、前置詞は難しいです。ちょっと勉強したらonの使い方だけで頭が割れそうになりました。

 続けます。【女】はgirl、いや【lady】か。酒場で出会ったかぼちゃみたいな変わった帽子をかぶった女のことなので、お酒をたしなんでいるからには年齢的には前者はないでしょう。

 問題は【幻】。パッと思い浮かんだ。ホログラムは幻ではなく、幻みたいな映像のことっぽい気がします。ドリームじゃ夢ですし、違う。睡眠中にみる夢ではなく、「夢でも見てたんじゃないの?」「違うんだよ、夢じゃないんだよ」の夢のほうだとなんとなく意味は通りそうなものの、レディ・オブ・ドリームだとなんかしっくりこない。

 しばらく考えるも、これという英単語が出てきません。なんとかひねり出したのはミラージュ。レディ・オブ・ミラージュだとなんとなく作品の雰囲気にも合っている気がします。ミラージュの意味は蜃気楼。「蜃気楼女」とすると、なんかいきなり江戸川乱歩というか少年探偵団っぽい匂いが。

 ちょっと納得はいっていないのですが、一応、ミラージュにすることにするも綴りがあやしい。結局、こう訳しました。



 ★STEP 2


 The Lady of millage



 ★STEP 3


 正解は……


 Phantom Lady


 でした。


 ん? ファントムって怪人って意味じゃないのか? ミステリファンには『黄色い部屋の秘密』で、世間一般では『オペラ座の怪人』でおなじみのガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』に出てくる仮面の男がファントムだったはず、そうか、あいつの名前がファントムなのか。二十面相みたいに通り名だと思っていたけれど(いや、確かにそうなんだけど)、ファントムは人名ではなくちゃんと意味のある言葉なんだ、と。

 調べてみると【phantom】は幻、幻影。なるほど、オペラ座の怪人ファントムをきちんと日本語に訳すと、オペラ座の怪人幻男、あるいはオペラ座の幻影怪人ということになるのでしょうか。また江戸川乱歩の少年探偵団っぽくなりますね。

 ついでに「蜃気楼」は【mirage】。しっかりスペルを間違えています。LとRは本当に鬼門。「幻」は他に【illusion】【vision】などの語が出てきました。「ホログラム」は「レーザー写真」の意とあり、スペルは【hologram】でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る