第7話 計画遂行



 正規のイベントもこなさずに、ラスボスと契約関係を結んでしまったが、細かい事はすぐにどうでもよくなった。もともとそういう事を考えるの苦手だし。


 ラスボスは、一応私のお願いを聞いてくれるようだ。 


「ではさっそく、あの女に肝を冷やしてもらおう」


 夕方。


 ラスボスは、学校で居残りをしていた悪役令嬢(意外と真面目)の前に幽霊の幻影を見せた。


『おぉぉぉお、うらめしぃ』


 その場に出現したもの、ボロボロになったガイコツを見た悪役令嬢は、案の定「きゃぁぁぁぁ!」という悲鳴をあげて駆け出してしまった。


 そのまま、通りすがった男子生徒に突進する勢いで抱き着いて、泣きじゃくっている。


 あっ、攻略対象だ。しかも元婚約者。


 攻略対象は、普段ツンとすましている悪役令嬢が、そんな顔を見せた事にぐっときてしまったらしい。


 デレデレしている。


 私は苦情を言った。


「あの「言うな。場所が悪い」」


 いや、唇をかみしめているラスボスが可愛かったので、本文言わせてもらえなかった。






 終わった事にいつまでもこだわってはいられない。

 次だ。


 というわけで、逆襲計画第二弾。


 悪役令嬢を体育倉庫に閉じ込めよう。


 本来はヒロインが悪役令嬢にやられるんだけど。


 細かい事は気にしない。


 体育の道具を運んでいた悪役令嬢(真面目だ)を、魔法の力で倉庫に閉じ込めた。


「えっ、出られませんわ!」


 しかもラスボスの魔力で、室内を真っ暗にしてあるので、恐怖倍増だ。


「だっ、誰かたすけてくださいまし! 神様、○○様!」


 閉じ込められた悪役令嬢はだんだん涙声に。

 ちょっと不憫になってきたかも。


 そろそろ良いかな、と思った所で、悪役令嬢が名前を叫んでいた人、つまり元婚約者が駆け付けた。


「大丈夫か!」

「来てくださいましたのね!」


 あれ、また仲が深まってる。


 騒ぎが大きくなってはいけないので、悪役令嬢を解放してやると、二人は抱きしめ合って二人の世界に。


 イチャイチャしながら、その場を去っていった。


 失敗だ。


「あの「言うな。場所が悪い」」


 場所が悪いって、いやいやそんな事ないと思いますけど?


 だって、途中までは完ぺきだったし。


 攻略対象の動きを見張っておくべきだったかな。


 でも、屈辱でぷるぷる肩を震わせているラスボスが可愛かったので、不問にした。






 こうなったら、次だ。


 空間をねじれさせて、迷子にしよう。


 修学旅行イベントで、訪れた観光地、生け垣でつくった巨大迷路に悪役令嬢を誘い込む!


 ラスボスもばっちり準備して、魔法を発動。


 今度は、あの元婚約者を近づかせないために、用事を押し付けておいた。


 きっと大丈夫!


 私達は前回より成長している!


「どっ、どうして出口が見つからないんですのっ!」


 迷子になってしまった、悪役令嬢は半泣きだ。


 しかし、


 数秒後に完璧な作戦は瓦解。


「嫌な予感がしたので来てみたら。迷子になっているなんてドジだな」

「まあ、私のピンチにかけつけてくださるなんて、王子様みたいですわ!」


 またお前か!


 簡単には終わらない用事(迷子の子供のお世話)を押し付けたというのに。


 もしかして愛の力で危機を察した?


 計画は、ことごとく失敗だった。


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