第5話 悪役令嬢も転生者



 私は泣きたい心境のまま、諸々の出来事をぶちまけた。

 乙女ゲーム云々はのぞいて。


「かくかくしかじかなんです」

「なぜそれを言った、俺に」

「私と貴方の仲じゃないですか」

「俺とお前の仲は何も始まっていないし、あったとしても、監禁した側と監禁された側だけだろう」


 そうともいう。


 そんな風にラスボスに愚痴っている間。


 ある可能性が頭の中に芽生えてきた。


 それは、原作改変が起こるのは私のほかに転生者がいる場合、だという事だ。


 きっとそうだ。その可能性が高い。


 知っているストーリーから外れるのは、何かしら理由がある。


 だから変わった事があった場合、本来とは違う行動をする誰かがいなければならないのだ。


 一体だれが、転生者なのだろう。


 そんな事を考えていたら、近くを通った女子生徒から「あら降られたばかりなのに殿方と仲良くして。ゲームのヒロインだからって愛される事が当たり前と思わないでほしいですわね」と言われた。


 犯人分かった。


 悪役令嬢だ。


 早かったね、ネタバレ。


「なるほど、先ほどの女が貴様にちょっかいを出していた人間か」


 このラスボス、耳が良かったらしい。


 悪役令嬢の呟きがばっちり聞こえていたようだ。


「はい。そういうわけなので、協力していただけませんか?」

「断る」

「ありがとうございます」


 あっ、冗談なのに、そんなに睨まないで。


「お前の耳は悪いようだな、引きちぎってとりかえてやろうか」


 これ以上、機嫌を悪くしたら、本当に引き裂かれる事もあるかも。

 私はそそくさと、その場を離れる。


 まあ、やったとしてもこの人本当は優しいから、ちょっとひっぱるだけで許してくれそうな気もするけど。


「ふん、俺の正体を知ったうえでまた馴れ馴れしく話しかけてくるとは、本当に物好きな奴だ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る