私がかみさまになったわけ 2

 変化は突然だった。私が私でなくなって、しばらくたってからのこと。

 その頃は、時々差別的な目を向けられながらも、私は比較的放任されながらぶらぶらと自由に過ごしていた。


『もう駄目だ』『司教があんな制度を作ったせいだ』『しかし仮にも神を他の者と同じように対処するのも如何なものかと』『しかもそろそろ、警察にも目をつけられ始めている。神が保護されれば、研究ができなくなってしまうぞ!』『だが、事が露見すればまずいぞ。世話をしている者の中には、息がかかっていない者もいる』『だが、神がいなくなれば信者共は不審に思うだろう。どうする?』『代役を立てればいいんじゃないか?』『……あの娘か』『確かに、青い瞳に金髪だ。しばらくの間なら、信者たちを騙せるだろう』『だが、混じりものだぞ』『まあ、そこは司教を説得するしかない。こういうときのための、弱みってやつさ』『そうだな。では、そうするか』


『全ては、青い花のために』


 私は再び調教室に連れて行かれ、綺麗な服を着せられ、さらには分厚いマントまで被らされた。そして、教会の中の豪奢な部屋に閉じ込められた。

 いくら叩いてもドアは開かなかった。けれど、定期的に食事が運ばれ、また入浴させられたり、着替えさせられたりしたので、私をいたぶるつもりはないであろうことはわかった。

 そして、そのドアがついに開けられ、外の世界に出ると、世界は一変していた。


『神よ』


 皆が黒いフードを被った私を見て、歓声を上げていた。司教、と呼ばれていた男に引っ張られて、呆然と教会の中心に進んでゆく。ステンドグラスから差し込む陽の光を浴びて、私はやっと理解した。

 私が、神様になったのだと。

 そしてこれが、本当の地獄の始まりだった。

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