終章 かいぞく姫

結婚式直前

「お似合にあいです、ひめ

「……! フィリップ! ジャンたちはどこ!」

 結婚式けっこんしき準備じゅんびでにぎやかな部屋へやにフィリップがはいってきた。

 かれもとはしり、まくしたてる。

牢屋ろうやれてあります。どもたちはさすがに解放かいほうしましたが」

「どうして!」

「どうしてなんてわれましても……ひめ誘拐ゆうかいしたからにまっているではありませんか。さらにはティアラまでぬすんだ。これはおもつみになります」

「そんなことない! かれわたしたすけてくれた! 最初さいしょこそちょっと乱暴らんぼうだったけど、でもやさしいひとだったわ! それにティアラだって、無理矢理むりやりうばろうとかもかんがえていなかったし、むしろわたしかえしてくれようとしてたの!」

「……」

「だからおねがい。かれらをゆるしてあげて。なんにもわることなんてしてないのよ」

ひめ

「ただ冒険ぼうけんをしてて、そこにわたしがまぎれこんじゃっただけ。でもかれらはあたたかくむかえてくれた、うみこうをせてあげるってってくれたの」

「それでもひめかれらはずっとティアラをぬすもうと侵入しんにゅうかえしていたんですよ? あいつらがひめ利用りようしてぬすもうとしたとかんがえたほう自然しぜんだとはおもいませんか」

「そんなこと……」

「ではきますが、あいつがふねもどるふりしてひめうみとしていたらどうするつもりだったんですか」

かれ絶対ぜったいにそんなことしない」

子分こぶん二人ふたりをけしかけてくるかも」

「しないったらしない!」

れますか? 仲良なかよしの情報屋じょうほうや裏切うらぎったというのに?」

「……!」

 きゅうにおなかいたくなった。あのときのことが脳裏のうりよみがえってくる。


『おまえだけはみち間違まちがえるな。自分じぶんみちしんつづけろ』


 その言葉ことば意味いみはまだまだからないままだし、なによりとてもショックだった。だからこのことをいにされるときゅうにだめになる。

かれは『クライシス王国おうこくのスパイ』だった。あんなにやさしくあかるい一般人いっぱんじんでさえそうやって裏切うらぎったのに、どうして海賊かいぞく裏切うらぎらないとおもったんですか」

「……」

「それにひめはもういたでしょう、かれ過去かこを。おとうと裏切うらぎ自分じぶんだけげだした……さぞおとうとさんはせつなかったことでしょう」

「でも、でも」

「だからひめ。もういいかげんかれことはおわすれなさい。これからはやさしい王子様おうじさま手元てもとしあわせな人生じんせいおくることができる、危険きけんなにもないあたたかなおしろなかわらってらすことができる。これ以上いじょうしあわせがありますか」

 あかみどりのオッドアイをのぞくと、そのひとみやさしく、かつ心配しんぱいそうにうるんでいた。きっとわたしのことをかんがえてそうおもっている、だからこんなになるんだとおもう。

 まわりをちらりとるとドレスの着付きつけをしてくれている侍女じじょやリンダの心配しんぱいそうなかおならんでいるのもえた。一人ひとりはおろおろしているし、一人ひとりすこなみだぐんでいるし、とても居心地いごこちわるい。

 でも、でも……。


『そういうときだいたい大人おとなは「まりだから」とか「それがおまえしあわせだから」とかテキトーうけどさ、そんなのじつだれめてないんだぜ!? 自分じぶんしあわせをけてるだけ』


 ジャンの言葉ことばをふとおもかえし、こぶしにぎりしめた。

 まえいて勇気ゆうきす。

「わ、わたしには……」

なんですか?」

 くびをかしげたフィリップにちょっとくちごもったけど、つたえるべきはちゃんとつたえなくちゃいけないんだとおもう。

 だってわたしは“自分じぶんだけの時間じかん”をきなくてはならないはずだから。

「あのね、フィリップ」

「はい」


「そんなのは、わたしには不幸ふこうよ」


ひめ

「おねがい、いてフィリップ。わたしこいなら自分じぶんえらびたいし、むすばれるなら大切たいせつひととがい。かた自分じぶんえらってしあわせのかたち自分じぶんめるわ」

「それって……まさか」

「ええ。わたし結婚けっこんするなら……ジャンとがい」

 その瞬間しゅんかんまわりから歓声かんせいのようなおどろくようなこえがった。

ひめ!」

「おねがいフィリップ、リンダ! わたし、この二日間ふつかかんでよくかったわ。きるってどういうことなのか、わたしもとめるしあわせはなんなのか。そしてこいとはなにか。――おねがい、みんな手伝てつだって。かれらを牢屋ろうやからして、それからお父様とうさまとお母様かあさまにおねがいをするわ。大丈夫だいじょうぶ、お父様とうさまもお母様かあさまもきっとかってくれる。だってわたしのこと、きっとあいしてくれているはずだから!」

「でも姫様ひめさま

「リンダ、おねがしんじて。本気ほんきなの! あんなひと結婚けっこんさせられるぐらいならこんなくにていくわ。それこそまえおなじようにまどからして!」

「そんなあんまりです!」

ひめ、わがままはいけません!」

「わがままなのはどっちよ! 全部ぜんぶそっちのいなりじゃない! 全部ぜんぶ全部ぜんぶうこといてきた。さからったこともなかった。でももうウンザリ、我慢がまんなんかもうできない。わたしのおねがいなんかいつだっていてくれなかった!」

「でも、でも姫様ひめさま――」

 リンダがそうってすがりつこうとしたときだった。


「ソフィア! そのおしゃべりなくちをおじなさい!」


 空気くうきふるわせるびりりとしたするどこえ部屋へやそとからこえてきたとおもった瞬間しゅんかん、そのひとはいってた。

「お母様かあさま……?」


 あれ。いていたイメージとなにかがちががする。

 またおなかいたくなってきた。


 わたしあいしてくれているんだよ、ね?


 * * *


「ソフィアや! よくかえっててくれた!」

 シュッとってムスッとしているお母様かあさまうしろからちいさなおじいちゃんみたいなひとしてくる。わたしのお父様とうさま

「あなた! 使用人しようにんまえでみっともない。およしなさい!」

 きつこうとした瞬間しゅんかん母様かあさまにぴしゃんとおこられた。それにかたふるわせ、しずしずとあとずさる。

 え、そんなにこわいの……。

 やがてわるようにお母様かあさままえてきた。

「ソフィア。おかえりなさい」

「た、ただいま……もどりました」

いていました。海賊共かいぞくども牢屋ろうやからしたいだとか、結婚けっこんしたいだとか、ヴェレーノさまとの結婚けっこんはいやだとか」

「あ、はなしいてくださってたのね、ならかった。あの、お母様かあさまなんとかたのめないかしら。かれらはわたしいのちおん――」

 そこまでいかけたその瞬間しゅんかん見開みひらいた。


「いいえ。牢屋ろうやけません、海賊共かいぞくどもしきわり次第しだい処刑しょけいします」


 そんなことわれるとはおもわなくて。


「え……」

命令めいれい絶対ぜったいです、以上いじょう。お前達まえたち業務ぎょうむもどりなさい。しき時間じかんどおりにとりおこないます、そうヴェレーノさまにおつたえして」

「はい、女王様じょおうさま

って、どうしてお母様かあさま! そんなのひどすぎる!」

「ここでをゆるめればすべての悪人あくにんがつけこんであなたをさらいにるわ。それが人間にんげんというものよ、みんな自分勝手じぶんかって。だからルールというものがあり、そのとおりにきびしくばっしていかなければならないの」

「でもそんなのおどしだし、そうやって支配しはいされたらたまったものじゃない! なによりまず相手あいて本質ほんしつえてないじゃない。もしもそうやってころしたひとかしこ素晴すばらしいひとだったらどうするの? だまされて牢屋ろうやれられたひとだったら! そんなのあんまりよ!」

「おだまりソフィア! くに政治せいじなにかっていないくせに!」

 こえがのどのおくんだ。お母様かあさま怒鳴どなごえあたまにはりついてこえせない。

いこと、ソフィア。政治せいじというものはとてもむずかしいの。それについてのお勉強べんきょうもろくにしないあなたがえらそうにわないでちょうだい。『相手あいて本質ほんしつえてない』? なに格好かっこうつけて……そんなの全員ぜんいんかっているわよ。でもそうするしかないときだってあるの」

「で、でも、でも、そんなのって……やっぱりおかしい。だってそれだとなん解決かいけつにもなってないでしょう? だって、げんわたしたすけてくれたジャンたち処刑しょけいされそうに――」

「ああ、いちいちごちゃごちゃくちごたえしないで! とにかくだめなものはだめだし、そこからなにわりはしない、特別とくべつルールとかもないから!」

「……!」

 ――え。

 なにかガツンとこころなぐられたみたいな感覚かんかくが。

「ねえソフィア、もっとお姫様ひめさまらしく大人おとなしくなったらどうなの。いちいちくちごたえしておてんばでおしゃべりでわがままなおんななんて一度いちどいたことありません。そんなだれきになりませんよ、もっとお上品じょうひんあるいてもっとおしとやかになさい。そしてみんなうことをいてだまってしたがっていればいの」

「……」

「『わたし』なんていちいち使つかって意見いけんうのもきらわれる原因げんいんになるわ。わらときくちてておしとやかに。あとははしまわるのも禁止きんし、いたずらも禁止きんし。ルールに全部ぜんぶしたがうの」

「でも……」

「その『でも』がいけないの! はぁ、いいこと? わたしはあなたのためをおもってっているの。わたしはあなたがしあわせになれるように色々いろいろをつくしているし、みんなはあなたをまもるために頑張がんばっているの。おねがいだからその努力どりょくどろをぬらないでちょうだい。みんなうことをだまっていて。かったらもう脱走だっそうなんて馬鹿ばかなまねしないでちゃんとしきるんですよ!」

「……」


返事へんじは!」


 ……。


「お返事へんじなさい!」


 ……、……。


「ソフィア!!」


 ……、……、……。


「……ない」


なに?」

返事へんじしない」

なんですって!」

返事へんじなんかしないってってるの! なによ、おおウソつき! わたしのことあいしてくれてるなんてウソじゃない! 自分勝手じぶんかってなことばっかりおしつけて! ……もうだれうことも信用しんようできない! お母様かあさまなんて大嫌だいきらい!」

「……! なんことうのソフィア!!」

いから! てって。みんなてって! 一人ひとりのこらずてって!! 一人ひとりにして、だれにもいたくない!」

「ソフィア!!」

てって!!」

 気持きもちがぐるぐるしてあたましろで、そしてむねおくには物凄ものすごちから感情かんじょうがうずまいていた。全員ぜんいん部屋へやそといきおいだけでしやってとびら無理矢理むりやりめる。

 そしてかぎをかけた。


「う……ううう……」


 なみだがこぼれてこぼれてまらない。めようとしてもどうしてもまらない。

 あんなにわなくたっていいじゃないの!!

「わあああああ!!」

 まるでひとりぼっちになったみたい。

 わたしなにしんじれば、なにしんじればいの!


 そのまま十数分間じゅうすうふんかんはベッドにしたままなにもできずに、ただただいていた。


 * * *


 ほんの数時間前すうじかんまえまでのたのしい記憶きおくがよみがえる。

 みんなでおまつりをまわって、おいしいものをたくさんべた。たくさんおどって、輪投わなげとかもいっぱいやった。きっと賞品しょうひんがまだふねのこっている。

 ドンクがビーズセットにかがやかせてるのをてジャンにおねがいした。ディーディーの作戦さくせんはとっても格好かっこうかった。みんなでパンべて、動物どうぶつたちにられていかけて、遺跡いせきにもはいった。ティアラを自分達じぶんたちしたその瞬間しゅんかん本当ほんとうにわくわくしたし、そのあとのピンチは本当ほんとうにドキドキした。

 デートにさそってくれたとき本当ほんとううれしかった。あのときもどりたい。

 レイレイのお菓子かしやパンがおいしかった。ドンクは頑張がんば力持ちからもち、ディーディーはあたまくて、どもたちはとにかく勇敢ゆうかんだった。ジャンは……とても素敵すてきみんな自分じぶん人生じんせいをまっすぐすすんで、そのみちたいしてうたがったりだめだとかおもうことなんてかった。そのみちたのしみぬいて、やりぬいて。そうしてきている、らしている。

 そのひとひとつにたいして一度いちどもムダなことかったっておもってる。そのどれもがすべ大切たいせつ経験けいけんだったはず。いまさらお姫様ひめさまらしくなんかなれない。


 ――そうだ。

 がりながらふとおもう。

 レイレイが最後さいごのこした言葉ことば意味いみはきっとそうだ。

 まわりがどんなにほかたいらなみちけてきてもわたしわたしみちしんつづけろと、自分じぶんしんじてすすつづけろと。きっとそうってくれた。

「そしたら、とりかごのなかとりはどうすればい? 花壇かだんえられたおはなはどうするの? わたしは……おしろめられたわたしは」

 わたしはおはなじゃない。

 わたし小鳥ことりでもない。

 わたしはお人形にんぎょうにもなれないし、ましてや素晴すばらしいお姫様ひめさまえんつづけるなんて無理むり


 だとすれば、だとするならばこのおしろわたし居場所いばしょじゃない。

 わたしきる場所ばしょはここじゃない。そうこころうったえてくる。

 ならわたしはどこできる? わたしきるべき場所ばしょはどこ。

 わたしは、わたしは――。

わたしは……おばあちゃまがいつかうみこうの景色けしききたい。そう、そうよ。うみこうをくわ、それもひとりぼっちなんかじゃなくてあのメンバーと、大切たいせつ人達ひとたち一緒いっしょくわ!」

 つきひかりがサッとはいってた。背中せなかからそそぐそのやわらかなひかりわたし背中せなかしているみたいだった。

「そのためならどうなったってかまわない。どんなにケガしてもどんなにくるしくともまずしくなろうともわたしかれらと一緒いっしょくわ。それがわたしきるみち、ようやくつけたわたしかたわたし運命うんめいよ! ――わたしはなたれて、なみみちびかれて世界せかいてまでたびをするの。そうして自由じゆうもときるの! かれらをたすして、またふねって……ええそうよ、もう二度にどかえらない。かえったりするものですか! もうまよったりもしない、みちはずしたりもしない! わたしわたし人生じんせいきるの!」

 なみだ気付きづけばもうていなかった。

 完全かんぜんからだこし、がる。かがみたらまわりが。あはは、ひどいかお。ちょっとわらってまどそとうみこうをつめた。

 そうよ、自分じぶんみち自分じぶんめる。

 まずはジャンたちなんとしてでもたすそう。そしたらみなとまではしってく。もしかしたらおしろちかくまでふね移動いどうさせられてるかもしれないけれど、そしたらぎゃくにおしろ立派りっぱなやつをうばってやるわ。

 かなりかた決心けっしんができ、自信じしんもついてきた。こころなしか気持きもちもかるくなったがする。なにもしなくてもニヨニヨしちゃう。

 意気揚々いきようようと、しかしおとはあまりてないように部屋へやとびらける――と。

 ドシン!!

「わっ!」

「きゃ!」

 やばっ、だれかにぶつかった!

「あ、ご、ごめんなさい! ケガは――」

 ってすぐさまハッとした。

 ゲ。フィリップだ。

 あれ、もしかしてかれてた?

 かれてたらやばくない?

「……い、てた?」

「あ、い、いや? なんでもないです」

 しかしフィリップのこたえはそんなのおかまいなしみたいなかんじで、ちょっと安心あんしん。というよりかすこ態度たいどがおかしいもする。なんになってかれのすぐそばをると液体えきたいはいったちいさなビンと何枚なんまいかのかみちていた。

「フィリップ、なにちてる」

「あ、さわるな!」

 瞬時しゅんじなに予感よかんがしてぎゃくにそれらをうばっててやった。


 それは一枚いちまいのメモ、一枚いちまい写真しゃしんなにやらくすりはいっているらしいビン。


「ねえフィリップ、この写真しゃしん……なんでレイレイがしばられてるの? どうしてこんなにおびえたかおしているの?」

「……」

「このビン、ラベルに睡眠薬すいみんやくっていてある……。なに、するだったの?」

「……、……」

「ねえ、フィリップ」

「……、……、……」

「このメモの……睡眠薬すいみんやく使つかうって、だれに、つか……」

 そこまでってかおをふとげるとそこにあったのはいつものやさしいフィリップじゃなかった。

 物凄ものすごちかくにいるこわかおのフィリップ。

「ヒッ!」

 あわててげようとしたけれどつよちからられ、つかまえられてしまった。くちぬのてられてこえせない!

 こわい!! ジャン、ジャン!!

「……なんひろったんですか、ひめ

「んんん!」

「せっかくこわくないようにって頑張がんばっていたのに」

 いながらかれ左腕ひだりうでをおおうふくそでをまくりげ――。


 そのしたかくれる「クライシス王国おうこく紋章もんしょう」をせつけてきた。


「どういうことかかりますよね? ひめ

「……!」


 そうすると……本当ほんとうのスパイは……じつは……。


 瞬間しゅんかんすべてがつながる。


王国おうこくむかしクライシス王国おうこくってくにおそわれたことがある。いまもそこのスパイがねらっているってうわさもあるわ』

『あの……からだにクライシス王家おうけ紋章もんしょうきざまれてるっていう、あの?』


『そりゃ行方不明ゆくえふめい王子様おうじさまわりとして王子様おうじさまになったのがクライシス王家おうけのとこのすえだからッスよ。大事だいじ王子おうじ結婚けっこんいわいだってことでクライシス王国おうこくえら人達ひとたちがいっぱいてるんス』


『スパイ、くに魔法まほう使つかいにあやつられてるうわさもある』


『それにおじさん、これからちょっと大事だいじ用事ようじがあるからさぁ』


『レイレイ! って、なんで! なんで!!』

『……』

うそってってよ!!』

『……』

うそだよね!! レイレイ!!』


『おまえだけはみち間違まちがえるな。自分じぶんみちしんつづけろ』


 もしかして……レイレイがああやっておそいかかってたのってクライシス王国おうこく魔法使まほうつかいに――いやちがう、スパイであるフィリップにあやつられていたから? そうやってほかひとつみをなすりつければ自分じぶんひとになれるからだれもフィリップをあやしまないんだ。それでジャンたち、いわゆる「邪魔者じゃまもの」も処分しょぶんするつもりなんだ。だ、だとしたら……いまのサルト・デ・アグワの王子おうじ元々もともとクライシス王国おうこく王子おうじなわけだけど、もしも二人ふたりうらでつながっていたのなら……そしたら……そしたら……ティアラをしたあとてきたのも、結婚けっこんせまったりするのも、全部ぜんぶ全部ぜんぶ……全部ぜんぶ……!!

 もしかして、いや、もしかしてだけどレイレイがああったのって……自分じぶんあやつられてしまったから、おまえけろってことだったなら……だとしたら、だとしたら……!! わたし……!!


「んんー!! んんん!!」

あばれるな! 大人おとなしくしなさい! ――くそ、アルファ、ベータ! 手伝てつだえ!」

 そうフィリップがわたしをおさえつけながらなにったかとおもうとすぐそこの暗闇くらやみからおおきなからだひと二人ふたりてきてこちらにばしてきた。

 やめて、やめて!

 こわい、こわい、こわい! だれたすけて!!


「このくにひめだ。クライシス王国おうこくくまでは丁重ていちょうにあつかえ」


 ジャン、おねがい、て! て!!


 たすけて!!

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