ブラッドムーン

雲隠れをした光を追って

そこにあるはずと目を見張っても

画面越しでは一過性の情報ばかりで

あなたがいるかは判らなかった


欠けてゆくのが理ならば

誰もがなくなる事象を理解できそう

満ちては欠けていくものなのだと

いのちの行方を信じたかった


あなたは筆を残していった

ストーリイはブラッドムーンに囚われた

わたしはレコード盤を削る針となり

指で延延ページをなぞる


日がゆけば何事もなかったように

どうしようもないニュースの濁流が来て

移り気な世間を汚し続ける

あなたの居場所をさらい続ける


月蝕より日蝕のほうが話題になるのは

よりセンセーショナルで判りやすいから

センシティブ路線は隠すのがよい

ミスティックであればなおさいわい


旅はティル・ナ・ヌォグの奥へと霞んで

今や見守ることさえできなくなった

ただただ雲の影で祈るほかには

空を仰ぐしかなかった





210529

ココア共和国7月号(ボツ)

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