花葬

心臓を置いてきた。

空色の丘に。

陽光の照り返す地表にではなく、

地中深くに沈めて沈めて、

来年の春、開花をするまで。


迎えに行くまでガランドウなの?

きみはぼくの胸を指さした。

外付けハードディスクだよ。

たましいで繋がれるんだとぼくは答えた。


爪の先ほどもない種の繰り出す法則は、

マトリョーシカよりぼくたちそのもの。

フラクタルの伝達物質が、

染色体の記号を紐解く。


刻み込まれたエコーを拾い、

震える血管はマントルへとひた走る。

同時に反作用のベクトルにより、

頭は宙を目指していく。


風に触れられてざわつく肌に、

擦れあう葉を感じて思いを馳せた。

ぼくたちは視認できる花をつけられないから、

かれらよりも不自由なんだ。


心臓を置いてきた。

生き直すため。

ぼくを再起動させるため、

空色の丘に埋めてきた。





210227

ココア共和国4月号 佳作II

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る