春遠からじ

太陽に脂油のように光り

時が来ると一斉にしぼんでしまう


ネモフィラの空色は天上の窓

映り込んだ蒼穹は深く

覗く隊列を敬虔な信徒にしてしまう


人が禍のさなかにいようが

かれらはかれらのサイクルで咲く

哀れみは似つかわしくないだろう


そこにあるのは感情だ

いのちの盛りに立ち会えぬという

自己憐憫があるのみだ


今年は再会できるのだろうか


思い返せば鮮やかに降る

露光補正の強めな景色は

飛ぶこともなく蘇ってくる


まろい空気と陽差しの許で

カメラを片手に散歩したいな

年に一度の季節だから


頑張れ人よ

春は来る

我々だって咲こうじゃないか





20210131

ココア共和国3月号用

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