~第四章・美味しいお茶の作り方。~

「有くぅ~ん! ヤッポ~!

久しぶりに会いに来まちたよ〜!」


陽気な酔っ払いの声が玄関から聞こえてくる。


「須藤さん…!とりあえず、掛け布団の中へ…!

僕の足元に隠れて…!」


「…本当に何でも

私の言う事、一つ聞いてくれるんですよね…?」


「聞くよ!あとで聞くから!

だから早く…!!」


そして 僕は須藤さんの腕を強引に引っ張り、ベッドへと引きずり込んだ。


「コホッ…コホッ…

あ、軽子ちゃん…やっほー…

コホッ…コホッ…

は、は…ハクシュン…!」


僕はベッドの上で、掛布団から上半身だけを覗かせ

嘘の咳とクシャミをしながら彼女を出迎えた。


「はれぇ〜?有くん

どうちたのぉ…?

もちかして、風邪ぇ…?」


「うん、実は そうなんだ…

コホッ…コホッ…

なんだか熱も あるっぽくて…」


我ながら迫真の演技。

小学生の頃、真冬の早朝マラソン大会をサボりたいが為に

磨きに磨き上げた この仮病スキルが今になって また役に立つ日が来るとは…


軽子ちゃんはアルコールにより赤ちゃん言葉になりながらも、僕の事を心配してくれた。


「たいへんだ〜!有くん大丈夫でちゅか…!?

今、軽子お姉さんが氷枕を作ってきてあげゆから、ちょっと待っててぇ〜!」


そう言って彼女は酒とタバコの匂いをプンプンさせながら

ベッドから死角になっているキッチンへと千鳥足で向かった。


僕はその隙に掛布団を少し めくり上げ

僕の股間の上に ひょっこりと顔を覗かせた須藤 華彩に、小声で作戦を伝える。


「須藤さんはこのまま、布団の中に隠れてジッとしてて…!

俺が何とか彼女を外に誘導するから、その隙に逃げるんだ…!」


すると彼女は

発熱によるものか

僕の股下数センチにいられる事に喜びを感じているから かは分からないが

頬を赤らめながらも、いつになく素直にコクッと頷いた。


よし、とりあえず今は 軽子ちゃんにバレないように

須藤 華彩を部屋から追い出す方法を考えないと…


柔らかい容器に冷凍庫の氷をギュウギュウに詰め込んだ軽子ちゃんが こちらへと戻ってくる。

僕はまず、そんな優しい彼女に自分から部屋を出て行ってもらおうと声をかけた。


「氷枕ありがと…!

あ、あのさ…!せっかく来てもらえて凄く嬉しいんだけど…

軽子ちゃんに風邪うつしちゃ悪いから、今日のところは とりあえず帰ってもらえないかな…?」


「え~?せっかく来たんだから付きっきりで看病するよぉ~

だってアタチは有くんの“彼女”なんらからさ~♪」


軽子ちゃんの“彼女”発言に腹を立てたのか

布団の中の須藤 華彩は僕の股関節周辺で暴れ出す。


ちょっ、動くなって言ったのに…!

あ…そんなとこ触られたら…

うぅ…////


や、やめてくれ…変な声出したら軽子ちゃんにバレてしまう…

ってか、なんなんだ このエロ過ぎるシチュエーションは。

実の彼女に見えないところで別の女が股下に…

なんか こういうのAVで見たことあるぞ…!


「有くん?どうちたの…?

なんか顔 恐いよ?」


「ヒャエ…!?

べ、別に?!

な、何でもないよ!?」


「そ~お…?

ならいいけど…


…ていうか、さっきから気になってたんらけどぉ~

有くぅ~ん、なんか下半身が異常にモッコリしてませんかぁ~?」


や、ヤバい…!さすがにバレてた…!

まぁ、そりゃそうか…僕の股間は今、須藤 華彩の後頭部により約20センチほど

違和感バリバリに隆起している。

とりあえず、怪しまれないように何か言い訳を…


「い、いやぁ…久しぶりに軽子ちゃんに会えてさ~?

俺の息子も興奮しちゃって

ボルテージMAX~!みたいな?

はははははは…(苦笑)」


僕は一か八か、最低かつバレバレな嘘でごまかそうとした。


「え~?本当に~?

もぅ~有くんったらエッチなんだから…


ふふ…♪じゃ、 風邪が治ったら

またいっぱいシようね…♪」


そう言って軽子ちゃんは僕のチ〇コ(須藤 華彩)を優しくナデナデし始めた。 


あれ…?

もしかして誤魔化せてます??

こんな適当な嘘で???


マジか…!酔っ払いってマジでチョロいな…

軽子ちゃんが飲み会帰り じゃなかったら、これ120%バレてたぞ…


それから僕は咳とクシャミを繰り返しながら、彼女の前で病気を演じ続ける。

すると彼女は部屋に落ちていた体温計を持ってきて、僕の脇へと挟み込んできた。


「…あれ?有くん

全~然、熱ないお…?」


「え…!?

あ、いや、その、さっきまでは高かったんだけどな…!

あれ?おかしいな…?

コホッ…コホッ…

軽子ちゃんの顔見たら一気に下がったのかも!?

あははははは…(苦笑)」


「そうかなぁ?でも咳辛そうでちゅよ?

この体温計、もしかちて 壊れてるんじゃ…


…そうだ、有くん オデコ出ちてぇ?」


「ふぇ…!?」


すると彼女は自分のオデコを

僕のオデコにコッツンコさせてきた。


ち、近い…!

そして、破壊的に可愛い…!!

軽子ちゃんはやはり近くで見ると女神のように美しい…!

あ、もちろん遠くから見ても 十分に美しいのですが…!


そして軽子ちゃんは僕の熱が無い事を一昔前のラブコメのような方法で確認した後

急に赤ちゃん言葉をやめ、僕にしがみついてきた。


「有くん…私、飲み過ぎかなぁ…?

なんだか身体が熱くなってきちゃった…」


「え…?」


「なんかね、自分でも よく分かんないんだけど

すっごく胸がドキドキしちゃっててね…だから、その…




…チューしたい。////」




うひょお゛おお゛お゛おお゛おお゛おお゛おお!


なに今の…!

めっちゃ可愛いんですけど…!

ちょっとボイスレコーダーに録音して 後日何度も聴き直したいので もう一度言ってもらえませんかね…!?


付き合って早一年半。僕は未だに彼女の可愛さに慣れることが出来ていない。

絶体絶命のピンチであることも忘れ、僕は彼女の願いを秒で受け入れ 舌を絡め始める。

興奮を通り越し、もう頭の中が思わず真っ白になってしまいそうな長く濃厚な気持ちの良い接吻…










…その直後、彼女は尋常じゃない量のゲ○を吐きました。


うわあ゛ああ゛ああ!?


Oh…!デジャブ…!

前にもこんな事があったような…!?


飲み過ぎたからですよね…?

キスのせいじゃないですよね…!?


「うぅ…気持ち悪い…

絶対飲みすぎたぁ…

うっっ…!!

まだ出そう…!」


そして軽子ちゃんは部屋の中央に嘔吐物を残したまま、トイレへと駆け込んでいった。


…い、今だ!


僕は布団を めくり須藤 華彩の姿を露わにする。

しかし彼女は

なんと僕の股下で丸くなりながら、子猫のように可愛らしい寝顔でスヤスヤと眠っていた。


マジか…よくあんな緊迫した場面で眠りにつけたな…


耳元で声をかけても、肩をさすっても全く起きる気配が無い。

僕は仕方なく、彼女を再び お姫様抱っこしながら ゲ〇をピョンッと飛び越え、204号室へと送り届けた。





窓の外で 自己主張の強そうなカラフルな鳥が チュンチュンチュンチュンうるさく鳴いている。

凄まじい危機から一夜明け、目が覚めると 時間は既に朝の十時を回っていて

僕の横には ベッドにもたれ掛かりながらスヤスヤと眠っている軽子ちゃんの姿があった。


軽子ちゃん…僕の事を心配して

結局あの後も朝まで いてくれてたんだ…


仮病なのに…うぅ、申し訳ない…

クソ…それもこれも全部、あのド変態女のせいだ…!


僕は苛立ちを抑えながら 彼女を起こさないよう

そ~っとベッドから立ち上がる。


キッチンのガスコンロには小さな土鍋が置いてあり、中には

きっと彼女が作っておいてくれたであろう美味しそうな お粥があった。


僕はそれをリビングの机へと運び

彼女の天使の様な寝顔をオカズに、濡れた白米を かきこんだ。


「ふぁ~…


…あ、有くん!起きてたの!?

大丈夫?体調は?」


「あ…う、うん…!お陰様でスッカリ良くなったみたい!

軽子ちゃん、看病ありがとう!」


同棲生活を やめて以来、彼女が家に来てくれたのは初めての事だった。


今日は土曜日、学校も お休み。

つまり彼女と二人で のんびり過ごせる貴重な休日。

僕はこの日の為に準備しておいた とっておきの物を棚から取り出した。


「じゃーん!見て!これ、軽子ちゃんが見たがってたホラー映画のDVD!

この前、偶然 レンタルショップで見つけたから借りておいたんだよね!」


「あ…!

それ新作なのに よく借りれたね!

わ~い!見た~い!」


…まぁ、実を言うと偶然などではなく、僕は彼女の喜ぶ顔 見たさに

レンタル開始日 当日、開店の三十分も前から店に並んでいたのだけど…


「よし!じゃあ二人で見よう!」


僕はⅮⅤⅮプレイヤーにディスクを入れる。

そしてリモコンの再生ボタンを押そうとしたその時、突然 彼女のスマホが激しく揺れ始めた。


「あ…タイガ先輩からだ…ゴメン、ちょっと出るね?


…はい!もしもし!


…え?同好会のみんなでバーベキュー?


しかも今からですか!?」


おや? もしかして軽子ちゃん

またあのタイガとかいうチャラ男に遊びに誘われている…?


…でも、さすがに今日は俺が先約だし…!

彼女もきっと断るだろう!

それにこのⅮVD、返却期限今日までだから、今見ちゃわないと延滞料k…




「分かりました!今すぐ行きます!」



がーーーーーーーーーーん。



け、軽子ちゃん…!?嘘だよね…?!

今日は二人で のんびりオウチ時間コースじゃないの…!?


「ごめ~ん!有くん!

同好会の集まりで行かなくちゃいけなくなっちゃった…」


「そ、そっかぁ…残念だなぁ…」


「なんか女の子が少なくて華が無いから

どうしても来て欲しいって しつこく頼まれちゃって…

本当ゴメン! 今度またゆっくり遊びに来るね…!」


そう言って彼女は慌ただしく家を出て行ってしまった。


はぁ、なんだかなぁ…

彼女の事は大好きだけど、やっぱり“ここ”だけは好きになれない…


僕は何だか悲しい気持ちになりながら

久々に、自分の親指を 無意識のうちに食べ始めてしまっていた。


そして僕は一人、特にやることもなく床に大の字になって寝転ぶ。

すると伸ばした腕の先に、昨日 僕が204号室から奪還したパンツが目に入った。


…あ!そういえば!

肝心な事が解決していない…!!


そう、昨日は色々な事がいっぺんに起こり過ぎて つい忘れてしまっていたが

須藤 華彩が僕のパンツを盗んだ下着泥棒であったという

この動かぬ証拠を彼女に突きつけなければ…!


…てか あの変態、風邪 大丈夫なのか…?


僕はパンツを握り締め

怒りと心配が入り混じった起伏の激しい謎の感情のまま、204号室へと殴り込んだ。


「おい!お前、コレどういうことか説明しr…」


鍵の開いていた玄関を何の躊躇も無く開け、リビングへと突入した僕の目に飛び込んできたのは

下着姿で着替え中だった須藤 華彩の姿だった。


「あ…!!

ご、ゴメン…!!

ノックくらいすればよかったよね…!」


僕は彼女が視界に入らないよう、急いで後ろを向き目を閉じたが

まぶたの裏には彼女の残像がハッキリと写し出される。


所々にピンク色の小さな模様が印刷された花柄レースの純白な下着…

そんな女の子っぽくて可愛らしい下着から はみ出る溢れんばかりの大きく豊満で“H”な胸…


で、デカッ…!

少なくとも軽子ちゃんの倍は あるんじゃないか…!?


僕は不覚にも自分のストーカー兼 下着泥棒である彼女の身体に

少しドキドキしてしまっていた。


「あ、有ちゃん!

来てくれたんですね!」


そう言って彼女は下着姿のまま

後ろから僕に勢いよく抱き着いてきて、身体のアチコチを指で なぞり始めた。


「ひ、ヒィッ…!

ちょっ、おい!やめろ…!

と、とりあえず服!

服着て…!」


僕は足元に畳まれていたTシャツを適当に一枚取り、彼女に後ろ向きで手渡した。


数秒後、振り返ると

そこには 僕の顔が大きく印刷された気持ちの悪いTシャツを着た彼女が嬉しそうにニコニコしながら立っていた。


「ど、ドコで作ったんだよ そんなの!!!」


「へへへ…♪

ある業者さんに頼むと意外と簡単にやってくれるんですよ…?

どうですか?このTシャツに印刷された有ちゃんの笑顔…

はぁ…可愛い…////


…あ、欲しくても あげませんからね?」


「いらんわ!!

今すぐ捨てろ!!!」


そして僕は ようやく本題へと入る為、彼女に例の証拠品を突きつけた。


こんな危ない奴が近所にいたらマジで危険だ…自供させて今度こそ警察に突き出してやる…!


「おい、これ。昨日この部屋で見つけたんだけど…

俺がベランダに干してたパンツだよな…?

お前、取ったろ…?」


「あ…!

私の“茶こし”…!

ちょっと、返してくださいよ…!」


彼女は僕からパンツを奪おうと、小さな身長で必死にピョンピョン飛び跳ねた。


「か、返しても何もお前のじゃねぇし…!

それに、今なんつった?

ちゃ、茶こし?

え、どういう事…!?」


すると彼女は突然キッチンから

沸騰した お湯の入った急須と茶葉、そして僕の顔が印刷されたマグカップを持ってきて

突然、実演販売のようなものを始めた。


「えぇ、まず この茶葉を

有ちゃんの陰毛だと思い込みながら、沸騰した お湯の中に少しだけ入れます。


そして優しく急須を振ったら、マグカップの上に有ちゃんのパンツを被せます。


…はい、パンツ貸してください?」


僕は彼女が何をしようとしているのか全く理解が追い付かず

キョトンとした顔で つい素直にパンツを渡してしまった。


「ここで一番のポイントなのですが、マグカップの上にパンツを被せる時は

股間の部分が中央にくるように被せます。

準備が出来たら、先ほどの急須からマグカップめがけて一気にお茶を注ぎ込みましょう。


…そう、パンツを“茶こし”代わりに使用するのです。

有ちゃんのパンツの股間部分を通り抜けてきた このお茶は まさに、有ちゃんのオ〇ッコと言っても過言ではありませn…」


「はい!ストップ、ストーップ!!

途中まで我慢して聞いていましたけども、はい。もうダメで~す。完全にアウトで~す。」


僕は彼女から股間の部分が熱々になった濡れパンツとマグカップを奪い取り、彼女の手の届かない所へ置いた。


パンツに付いていた あの木くず みたいなのは茶葉だったのか…

コイツの変態っぷりには つくづく狂気的な物を感じてしまう…


「てか、この部屋。そもそもツッコミどころが多すぎるんだよ…!

何だこの壁一面の俺の写真…!」


「あ、これは日々のストーキングの中で私が盗撮したコレクション達です…!

どうですか?どの表情の有ちゃんも素敵でしょ…?」


後をつけられていた事には気づいていたが、まさか写真も撮られていたなんて…


…ていうか、一応“ストーキング”と“盗撮”をしているという自覚はあるんだな…


「あと、お前の着てる そのTシャツとか マグカップもそうだけど

この“俺グッズ”の数々は何だ…!いったい何種類あんだよ… 」


「あ、他にもありますよ?

缶バッチとかキーホルダーみたいに、いつでも身近に有ちゃんを感じられるものとか…

あ、あと こんなジョークグッズもあります!」


そう言って彼女はお風呂場から人型のシャンプーボトルのようなものを持ってきた。


「見てください!この有ちゃんの形をしたシャンプーの入れ物…!

こうやって、頭の部分を押すと…

ほら!お〇ン〇ンの先から白いのが…!」


「バカヤロー!!

そんなもん作んなっ!!!」


ストーカー行為に下着泥棒、さらには部屋中に溢れかえる写真やキモいグッズの数々…

さすがにこれは度が過ぎている…


それに彼女は さっきから悪びれる様子が一切無い。

むしろ自分のやっている事に誇りを持っているかのような口ぶりだ…

こういう奴が一番ヤバい…

こんな奴が隣に住んでいたら僕の身が危ない…!


僕は彼女の腕を無理やり掴み、今すぐ警察へ突き出してやることにした…


「え…?デートですか!?

わ~い!ドコへ連れていってくれるんですか♪?」


「デートじゃねぇよバカ!

お前を警察に連れてくんだよ!」


すると彼女は ようやく焦りを見せ、僕の手を引き離そうとする。


「な、なんで私が警察に…!?

ちょっと待ってください…!

私、何か悪い事しましたか…!?」


「いや、めちゃくちゃしてるだろ…!ストーカーに泥棒に盗撮、それに この気持ち悪い部屋もそうだ!


…怖いんだよ!

ハッキリ言って迷惑だ…!!」


僕が怒鳴ると、突然 彼女はその場に膝から崩れ落ち、目を大きく開いたまま 大粒の涙を流し始めた。


「こ、怖い…?

め、迷惑…?

私が…?


…どうして…?

何がいけないんですか…?!」


「え…?」


「私は本気で有ちゃんのことを愛しているのですよ…?

愛の形は人それぞれ…それをどう表現しようがコッチの勝手じゃないですか…!

私はただ、有ちゃんを心から愛しているだけなのに…!!」


そして彼女は床に座り込んだまま、子供のように大声で泣き始めた。


僕は こんな狂気じみた愛を受け止められる器を持っていない。

それに、そもそも僕には軽子ちゃんという彼女がいる。


僕は本気で怖くなり、一刻も早く彼女を警察に突き出そうと腕を掴み直したのだが

彼女は泣きながらも僕の手を振り払い、カバンの中からスマホを取り出した。


「私を警察に突き出すのなら、この画像をSNSにバラ撒きます…!!」


そう言って彼女が見せてきたのは、昨日撮影された

“彼女のパンツに手を突っ込みながらカメラ目線になっている僕”の写真だった。


「…!?

そ、それ、昨日消すって約束しただろうが…!」


すると彼女は急に泣き止み、不敵な笑みを浮かべ始める。


「…形勢逆転ですね♪

これで有ちゃんは私に逆らうことが出来ない…

ふふふ…♪」


「き…きたねぇぞ…!」


「き、汚い…!?

え!? どこがですか…!?


ハァハァハァ…////!

もっと…!もっと罵ってください…////!」


…そうだった、コイツそういう言葉に敏感なキモい奴だった。

クソ… いったい どうしたら…


「あ…そうそう、あと

昨日の約束…ちゃんと覚えてくれていますか…?」


「約束…? な、なんのことだ…?」


「昨日、言ってたじゃないですか…

“私の言う事、何でも一つ聞いてくれる”

って…♪」


「…あ!」


そうだった、昨日の夜

僕は なんとかコイツに言う事を聞かせる為、咄嗟にそんな約束をしてしまったのだ…


「で、でも…!

“彼女にして欲しい”

とか

“軽子ちゃんと別れて欲しい”

とかはダメだぞ、いくらなんでも…!」


「分かってますよ~

私だって そこまで酷い人間じゃありません。

それに私は、有ちゃんが悲しむ顔は あまり見たくないですから…


…私、有ちゃんと話してて思ったんです。

悔しいけれど、軽子さんっていう あの“尻軽女”のことが好き、という

有ちゃんの気持ちは どうやら本物。

だったら、私が彼女以上の大きな愛情を注いで 有ちゃんを振り向かせてしまえばいいだけの話…」


そして、次に彼女の口から飛び出した僕への要求は

予想だにしていなかった とんでもない内容だった…


「今日から私、須藤 華彩は

205号室に住み始め…


有ちゃんとの同棲生活をスタートさせます…!!」

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