第4話

「これで、納得してもらえた?」

「うん。てか、別にそんなに気になってなかったし」


 嘘だけど。


 私達は好きなめいめい好きな夕食を食べつつ、話していた。


 というより、問い詰めていた。私が。

 なんで、あんな剣幕で蒼を拷問していたのか、私にもわからない。蒼に近寄る女の人がいたら、嫌だから?なんで嫌なの?一応夫婦だから?でも、感情伴ってないじゃん。


 頭のなかの会議はこれくらいにして。


 蒼はなかなかあの女の正体を教えてくれなかった。先輩と呼んでいたから大学か職場の後輩だろう――という目星はついていたし、実際それは図星だったんだけど。

 それ以上のことを聞き出すのは至難の技だった。

 なんとか聞き出したことを要約すると、

「職場の後輩で、好意を一方的に寄せられている人。クリスマスにお出かけしようと告白と共に誘われた」

とのことだった。


 蒼は勿論、断ったと言っていた。

 

 勿論?

 はたして、私達はそんなことを気にする必要があるのだろうか。


 感情が伴って結婚したわけじゃないから、別に、自由に恋愛してもいいんじゃない?

 

 頭のなかの私が私に問い詰める。


 紙の上の契約。たったそれだけなのに。


 私はビールの缶を覗き込んだが、空っぽでなんの返事もしてくれなかった。

 

「蒼はさ、なんでことわったの?」

「それは、、ほら、結婚してるじゃん?」

「そうだけど」

 会話が弾まない。

「菜音、なんかごめんね」

「別に。気になっただけ」

 私は蒼から目をそらし、おつまみとして出した、干したホタテをつまんだ。噛めば噛むほど旨味がにじみでる、すっかり私はこのうまさの虜になっている。


 いつか、こんな人間になれるのかなぁ。


 味のある人間。深く知れば知るほどその人の良さが味わえる人。

 

 考えた結果だけど、多分そういう人は、喜怒哀楽を感じて生きた人だと思う。人生をだらだらと生きない。白黒、はっきりつけることができて、グレーも認められる人?


 このままで私はいいのだろうか?

 こんな生活でいいのだろうか?


「蒼、私達って夫婦?」

「夫婦だよ。それがどうした?」

「感情が伴わなくても、婚姻届を出していれば夫婦?」

「もちろん」


「じゃあさ」

 

 私は思いきってきいてみることにした。


「感情が伴わない夫婦でも、その人に彼氏でも彼女でもそういう存在ができたらそれは不倫?」


 蒼の顔から表情が消えた。口が半開きになって目も虚ろだった。

 やがて驚いたような顔になって、

「何がいいたいの?」

と怒ったようにいった。


「そのまんまだよ。感情が伴った夫婦でなければ、世間の目はあるだろうけど、自由に恋愛していいんじゃない?相手を傷つけることないから、それは不倫とは呼ばないんじゃない?ってこと」

 私は平然を装って言った――が、蒼はう

「菜音、冗談だよね?」

 蒼は、早口できいてきた。

 それに、私はヘラヘラと答えることにした、

「本気だよ~、蒼、あの人かわいいじゃん?だから、あの人と蒼が恋愛してもいいよみたいにいってる…」

 

 が、言った瞬間チクリ、とどこかが痛んだ。

 蒼があの人と並んで仲良く歩く姿を考えるだけで吐き気がする。そんなの嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

 心は叫んでいるけど…私の論理はあってるはずで、それに蒼はどう思う?


「菜音、俺、間違ってたかも」

「は……?」


 蒼は机をバンッと叩き、椅子から立ち上がった。


「俺も…いや、俺は好きな人と感情の伴った結婚がしたかった」


                 4話終

   

       



        お知らせ


4.5、もしくは5.5話作成を検討中です。蒼目線&蒼へのインタビュー風のなにか……(なんだろう笑)を書こうかなぁと思ってます。ゴミ文章ですが今後ともよろしくお願いします。

 

 

 

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