第23話
ボランティア研修は無事に終えた。僕と右京だけじゃなく熊谷に氷室まで参加していて右京と図書委員繋がりで参加してくれたらしい。いい機会だったので4人で連絡先交換もした。
研修では大学からボランティアできていたカップルのイチャつきに右京が邪気を振り撒いたり熊谷が料理苦手だったり、具体的には玉葱をらっきょうみたいに皮を剥き続けたり氷室は普段ものすごい奥手で大人しいのに意外にもFPSの有名配信者で他にも顔を隠してダンス配信してキレッキレで有名だとか。
ちなみに僕はあまりにも暑かったので暇ができた時間に近くにあった川で仰向けになり服も濡らしたくはなかったので頭だけ川につけていたのだがたまたま僕を呼びにきた氷室がその光景を遠目にみて事件か何かと勘違いしたようでひと騒ぎ起きたが(川の流れがゆったりで髪がほぼ放射状に広がっていて身じろぎひとつしなかったからかも)特に問題はなかった。
そして研修から帰ってきて2日目の今日、僕は僕の家で幼い女の子達とクッキー作りをしている。
_幼女、ゲットだぜ!
……このセリフは危険だな。色んな意味で誤解を招きそうだ。
事の発端は昨日の夜である。香澄ちゃんから電話が掛かってきたのだ。鈴宮が風呂に入っている間にこっそりとかけてきたようで内緒話なので翌日公園に来て欲しいと呼び出しを受けた。
そんな訳で公園に向かったのだが香澄ちゃんの他にもう1人いたのだがこちらは
肝心な要件だがTVで日頃お世話になってる人や家族などに何か贈るというものを見て日頃のお礼にお姉ちゃんに何か贈りたい、というもだった。
協議の結果クッキーを作る事になり場所は必然的に僕の家となり現在に至る。
僕が監修の下行っているが形はちょっと歪になっているがそういう頑張りが見える形が今回はいいだろう。キッチンはだいぶ汚れてしまったが掃除は嫌いじゃない寧ろ好きなので気にしない。
クッキー作りは無事に終わり
「「お兄ちゃんありがとうー!!」」
2人はスタミナ無限かと思わせる程の元気さでお礼を言って走りさっていった。ああいう活発さなどは姉にそっくりだなぁ。
…せっかくだし僕も鈴宮に何か作るかな。日頃から世話にもご馳走にもなってるし。
…プリンでも作るか。別に僕が食べたいからでもちょうど材料があるからでもないゾ。
キツいな。
どうせだから特大のを作るか。
完成したので鈴宮家に向かっているのだがこれは大丈夫だろうか。もう作った後なので後の祭りなのだがプリンがただのプリンじゃなくてバケツプリンにしてしまったんだよねぇ。
とりあえず一度出して形崩れしないようにラップでくるんでもう一度バケツに閉まって運んでいる。ちなみにバケツはいちど新品を購入して煮沸してあるので衛生面も万全である。
怒られないだろうか…心配だ…。
「おっす。鈴宮」
「いらっしゃい辰巳。あがって」
「お邪魔します」
リビングに行きお茶をいただく。
「香澄ちゃんはどうだった?」
「クッキー美味しかったわよ。すごく照れちゃってすぐに『友達の所にいってくるー!』って飛び出していっちゃった。…あの子の事手伝ってくれてありがとうね辰巳」
妹想いのお姉ちゃんとお姉ちゃん想いの妹、いい姉妹だな。
「別に対した事はしてないよ。それと僕からも色々お世話になってるし鈴宮はすごく頑張ってるからこれどうぞ」
そう言って僕はバケツを差し出したのだがバケツを見た途端少し照れていた鈴宮の顔が真顔になった。
「…これ、なに?」
ヤバいな。もう
「その、なんだ、プリンだ」
「そう。プリン。どれぐらい?」
このバケツの内どれぐらいかという事だろう。
「…全部」
「全部!?このサイズのバケツいっぱいに作ったの!?」
はい。当然の反応ですよね。高さ35センチに直径が38もあるんだもんなぁ。作ってるときはノリノリだったけどいざ出来ると我ながら驚いた物だ。
「その、テンションあがっちゃって…」
「いろんな意味で私の中で驚きと恐怖が並走してる…。はぁ、流石にこんなには食べきれないから辰巳も食べていってね」
女の子にこんなカロリーの化け物を贈る僕自身に恐怖です。
「うぃ…」
自分で作ったけどどのくらいいけるかなぁ。
今日はいろんな意味でドキドキさせられる。
香澄から『いつもありがとうお姉ちゃん!』ってクッキーもらって形が歪んでだけどそこに香澄の頑張りが見えて感動しちゃったし辰巳からも同じようにプリンもらっちゃったし。ちょっとデカすぎるけど。
今辰巳は茶碗サイズにしたプリンに挑戦している。そんな辰巳を眺めながら私もプリンを食べる。甘い。
見ていないようで結構見ていたりさりげなく頑張ってるからだなんて何でもないように労ってくれる。
辰巳は普段結構めんどくさがりなのにわざわざプリンも作って家に来てくれた。夏休みに入って来てくれたのはまだ一回目なのにこんなにも気持ちが昂る。
「うぷ。…ギブ」
辰巳がそんな事を宣った。
「ちょっとまだ一杯と少ししか食べてないじゃない!」
「勘弁してください。香澄ちゃんとそのお友達も呼んで一緒に頑張ってください」
「あんたも来なさい!」
「…はい」
まったくもう。小さい子達を巻き込んで逃げようとするとは。
勢いで明日も来てくれる事になったけどその後からも来てくれるだろうか。
ふぅ。風呂も済ませ後は寝るだけだがプリンがかなり効いている。未だに腹が苦しい。
もう水を飲んで寝よう。
そう思い冷蔵庫を開けたら真ん中にプディングが鎮座していた。完全に忘れていた、後で食べようと思って残ってたホワイトクリームとかいろいろ盛りつけた高級風プディングである。
正直食べ過ぎてしばらくは見たくもないのだがどうしたものか。
僕は少しの思考の果てに電話をかける。
「もしもし鈴宮?あのさ、高級風プディングもらう?美味しいよ?」
『…ブッ飛ばすわよ?呼び方変えてるだけで結局プリンでしょ。美味しかったけどしばらくは充分よ』
ですよね。どうしようか。
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